陽炎は苦しい程熱い日にしか立ち昇らない。森野 亜耶(もりの あや)にとってその日会った幼馴染にして元恋人、水島 翔(みずしま しょう)は陽炎のような男だった。 その日、夫と息子を喫茶店で待つ買い物帰りの亜耶の元にぐうぜん今をときめく俳優となった翔が現れる。はじめて入ったその喫茶店は昔2人でよく通った喫茶店に似ており、亜耶は、昔夢を目指して自分を置いて行った翔が「昔を思い出してこの喫茶店を選んだのでは?」と期待してしまう程まだ彼に焦がれている自分を自覚し自己嫌悪する。 そして翔もまた「亜耶しか好きになれない」と悲しそうに呟くが、それはもう彼女には夫がいて今更自分とはどうこうならないという何もかも遅かったという諦観からの言葉だった。 夫も息子も愛している亜耶は、翔との1時間の奇跡を胸に大切に閉じ込めて彼との別離を選び家族と共に帰路に着いたのだった。
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