僕は昔から、あらゆる人が心に抱く〈願い事〉の声を聞くことができた。その特別な力は、僕が〝神さま〟の末裔である証。そして僕にはもう一つ、特別な力がある。「あなたは生涯に一度だけ、だれか一人の〈願い事〉を一つ叶えることができます――」ある日、夢の中でそう穏やかに語った閃光が、今も僕の記憶に強く焼き付いている。けれど僕は、自分がこの力を使うことはないだろうと思い、冷めた目で世の中を見つめていた。日々、耳に飛び込んでくる醜い〈願い事〉が、いつしか僕にそう決意させていた。そんなある日、イヤホンを忘れたまま歩くある雨の道で、僕は一人の女の子と出会う。〈願い事〉を持たない彼女の存在が、僕の運命を大きく変えていく――青春恋愛ファンタジー。