『シルバさん、まもなく目的地です。』
「知ってるよ、もう見えてるから。」
『……シルバさん、一つお伺いしてもよろしいでしょうか。』
「なんだ、ナビ。」
『私は、この旅には明確なゴールがあると認識しています。……あなたの祖国へ帰ること、ですよね?』
「そうだ。」
『約束しましたよね?私とも彼女とも。』
「いつ帰るかは約束してないからなー。」
『彼女に申し訳無いと思わないのですか?』
「……それでも俺はまだ旅を続けたい。何が何でもだ。」
『……理由を聞いても?』
「ただあの息苦しい国に帰りたくないだけだ。」
『旅が楽しいから、とかではないのですね……』
それ以降、国に着くまで一人と一台が会話を交わすことは無く、ただ静音化された排気音が木々の間に吸い込まれていった。寂しそうだった。