美術高校の受験に失敗したショックから絵が描けなくなった、柚木いつか。
進学した先の美術部で自分に対しての心無い言葉を聞き、さらに父親には宝物にしていたお気に入りの画集を捨てられかける。
画集を抱えていつかは生まれ育った町を飛び出し、持っていた限りの現金で買った切符を使い、夜行バスで海辺の町に辿り着いた。
その海で出会ったのは、雪野叶。
海に身投げをした叶を助けた縁で、いつかは彼の家に家政婦として雇われることになる。
叶には叔父に車で轢かれ右手を使えなくされた過去があった。その叔父は叶の絵を盗作していた。
叶は、いつかの憧れの画家だったのだ。
絵を描けなくなった叶は、いつかに絵を描くことを乞う。
一夏をかけて描いたのは、いつか自身の自画像。
いつかは描きあげた自画像を残して、生まれ育った町に、そして家に帰るバスに乗った。
再会を約束した二人は、いつか夢が叶う場所でもう一度出会う。