絵画修復士が修復しきれない絵画の内部世界へ入り、絵画を癒すという不思議な『修復癒師』の物語。

◎物語全体のあらすじ


 絵画修復士が修復しきれない絵画の内部(絵の中の)世界へ入って修復し癒すという特異な『修復癒師』。葉山翠雨はやま すいうはその能力をもち、美術界で密やかに重宝されている。


 実は翠雨自身も絵画から飛び出て来た異界人。しかし、来界時は記憶喪失で、自身が元居た『翠雨の絵画』も今では所在不明に。画商花園家の庇護を受けつつ、マネジャー兼友人の花園央はなぞの なかばと『翠雨の絵画』を探しているが、情報は乏しいままとうとう来界100年目となってしまった。


 ある日、翠雨は依頼された絵画内の世界でレオという男と出逢う。出自のせいで懸賞金をかけられ逃げる日々を送るレオは自身の世界に辟易していた。そんな彼は異国人のなりをした翠雨に興味をもつ。そして、境遇を話した際、打算なく理解しようとしてくれた彼に信頼を寄せ同行したいと言い出す。翠雨も何かの縁だと了承。


 だが、その最中事件発生、二人は追われる立場となる。レオは翠雨を庇い囚われ、翠雨も寸でで水面を媒介し現代へ戻る。絵画修復は中途半端な状態で、翠雨はレオを助けるべく再度絵の中へ入る。無事彼を牢獄から救出し逃げる途中、足を滑らせて海中に落ち翠雨は現代へ。後ろから聞こえた声に振り向くと、レオも来界してしまっていた。


 翠雨は戸惑いながらレオと同居をはじめる。レオは自分のことを話したがらない翠雨が気になり、央に彼のことを聞く。そこではじめて翠雨が同じ境遇の来界者だと知る。そして、央から永遠に翠雨のそばにいてほしいとお願いされる。


 翠雨はレオを連れ立って絵画修復に携わるようになり、次第に彼へ心を開いていく。そして、ついに『翠雨の絵画』が現存していることを知る。すぐにでも絵画の中に戻りたいと願う翠雨だが全員大反対。味方がいない翠雨はショックを受け心を閉ざす。


 央をはじめ皆『翠雨の絵画』内が良くない世界だと気づいていた。同じく『レオの絵画』に戻れば処刑される運命にあるレオは、花園家の面々にも頼まれ翠雨を説得する。結果、レオは翠雨と記憶を取り戻すため絵画へ入ることになる。


 案の定、翠雨も絵画内で追われている立場だった。傷つきながらも様々な人と会い本名と記憶を取り戻す。実世界に留まるか否か。レオに「どちらを選んでも、俺は一生おまえのそばにいる」と言われた翠雨は、苦渋の選択に悩みながらも回答する。