憑依体質に侵されている齢十七の岬は、たった一つの居場所であった母を失い、あの世へ逝くことを望んでいた。
「阿呆、勝手に逝くな」
しかし、突如現れた怪しげな男はそれを許さない。見目麗しいその男は、母と育てていた鈴蘭の化身・厘。“妖花“ という名のあやかしだった。
厘の使命は、憑依によって削られていく精気を「キス」で注ぎ、岬の命を繋ぐこと。
「もう、失いたくない」
ぶっきら棒で庇護欲溢れるあやかしと暮らすうち、岬は生きる意味を取り戻していく。
しかし、憑依に係るトラブルは次第に厄介なものへと変化していき——。
憑依の謎に迫りながら繰り広げる、絆と愛の物語。