テスカトリポカの衝撃
死んだ後の人間の体に、生きている頃の人間が出す以上の価値が付くというのが衝撃的で未だに忘れられない。資本主義の行き着く先はここまで過酷なのかと驚いた。普通の人間にはコシモのようなやり方で悪に対抗する力は無いので、作者の佐藤さんが言うように、麻薬をやらないとか、そういう基本的なところで対抗していくしか無いと思った。
一方で、バルミロの強靭さに、土方の凶暴さに、末永の怜悧さに憧れ、惹かれてしまう自分もいる。正直、この作品をなんども読み返すだろうと思ったのは、バルミロが日本で自分のファミリアを作る、いわば、悪の機構を作る際の手際の良さに興奮したからだった。一体、私の中には悪に惹かれているものがあるというのか。
悪の魅力を描きつつも、悪は悪として自滅の結果に終わらせる本作は秀逸だと思う。単純な勧善懲悪ではないが、ダークヒーローであるコシモの存在感も際立っていて、多分私は珍しくあと3回は読み直しながら認識を新たにしていくだろうと思う。
最近、少し経済状況が落ち着いたら、自分だけのミニ図書館を自宅に作りたいと夢見るのだが、円城塔さんの作品と同じように、佐藤究さんの作品も本棚に置くと思う。
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