趣味は哲学
こんにちは。
少し前まで私は時々「どうしたら写真が上手くなりますか?」と聞かれることが多い位置に居まして……
私が写真が上手いわけではないですよ。
ただ、写真が上手くなりたい人が周りに集まっていたというだけの話。
ただ、見る目は肥えているとは思います。
そういう環境だったから。
けっこうお年を召した方がカメラを始められるケースは多くて。
散歩にもなるし、子供がカメラをプレゼントしたり、自分で趣味を開拓するために始められる場合だったり。
きっかけは様々ですが、高齢者の趣味としてはメジャーみたいです。
「ぼちぼち写真やってみよかぁ~」みたいな感じです。
しかしそこまで本気モードになっていて人にどうしたらうまくなるのかを説明するのってすごく難しい!
本当のことを言えば、風景でも人でも動物でも、良い表情を撮ろうと思わずに「生きてる!」といういうような瞬間を切り取るのが、真髄かとは思っているのだけれど、そんな事を地下アイドルやアイドルアスリートにチヤホヤされたいだけのおじさんとか、息子にカメラを趣味にしたら?とカメラを渡されたおばあさんに言っても「はぁ?」です。
でもそれを聞いてくるほとんどの方が出来ていない共通のパターンがありまして。
ちょっと自分と向き合えば向上するポイントだったので、お話はしたのですが。
それは、撮りたいものが自分の中で絞れていないのです。
例えば、なーんでもない山道の写真。
なんでこんな何でもないところを撮ったんだろう?と思うような画面なのです。
でもよくよく話を聞くと、すっごく小さい花が咲いていて、それがきれいだと思って撮ったとのこと。
その方が撮りたいのは花の美しさに感動したという事。なのに、周りのぼーぼーの草や削れた綺麗でもない砂まみれの岩肌、その他もろもろが周りに写りこんでいて、しかも水平がとれていない。
水平がとれていないのは、意図が分かる場合は良いのですが、絶対に水平がとれていないということすら気が付いていない。
その方が感動したという花は多く見積もっても、全体の5%ほどしか面積を占めていないのです。
きっと花がきれい!となった時は、自分の目はそこにクローズアップしていたはずです。
なのに、全景を撮る。
どうして全景を撮ったのですか?と尋ねると「花の咲いている植物の上から下まで全部画角に収めないといけないから」だと言うのです。
ひょろっと背の長いその植物は花が咲いているの先端あたりだけで、下は泥がかかっていてしおしおで絵にはなりません。
その方も「こんにな状況なのに綺麗な花を咲かせているいじらしい生命力!」みたいな事を撮りたいわけでもない。
なので実地です。
トリミングをして見せてあげるのです。
花だけをクローズアップしたら、思っている景色に近づくでしょ?と。
でも、ひょろ長い植物のつま先から頭まで入っていないと、気持ちが悪いというのです。
はっきり言って、そんな方法は有りません……
人の目は見たいところだけを見る能力があり、脳で良い感じにトリミングもし、しかも見たい場所を舐めるように見ることができます。
しかし写真はその画角一発勝負。
何か主役を決めないといけないのです。
孫などの人物の時でも、頭が入っていないとか足がつま先まで入っていないとか、良くありましたね……、なのに顔が小さいから表情が見えないとか。
何かを主役にすると、何かを切り捨てたり脇役にしないといけないものなのです。
「テレビドラマでも主人公の頭が切れて写っていなくても、気持ち悪くないでしょ?」というと「そういうもんか?」「切れてしまうのは失礼ではないのか?」と。
伝えたいものが「頭の先からつま先まで全てが入っている写真」だったのなら、それでいいのですが……芸術的にステキな写真を撮りたいと思っているんですよね?とひずみが生まれます。
まぁね、本人がやりたいようにするのが一番なんですよ。趣味だから。
でも趣味という物は哲学のかたまりなんですよね……
自分と向き合って初めて答えが見つかって来る。
世の中の常識や、型にはまった考えや、誰かの顔色をうかがってするものではない。
犯罪や人を傷つけるのはいけないですよ。
でも、向き合うべきは自分なのに。
どうしても頭のてっぺんからつま先まで画角に入れたいのなら、撮影方法を工夫するべきです。
脚立を持って行って上から撮るとか、寝転んで下から撮るとか。
そういう工夫や自分が何に感動しているのか、何を伝えたいのか、どうやったら伝わるのかという事と向き合うのが楽しみなのに、シャッターを押せばカメラが勝手に撮ってくれると思っているのでなかなか……難しい質問でした。
趣味って本当、難しいですね……
どこまで突き詰めたいのかも人によって違うし。
全景を撮りたいプロ並みの方に、美山町(茅葺の里)を紹介したのですが、全景がとれる画角が1種類しかないと言って不満そうにされたこともあります。
その話を聞いていた私ともう人のカメラ趣味のおじさんは、全景以外も撮るので撮影スポットは大量にあるんですけどね……
撮りたいものも違うから、本当に写真は難しい。
人の目って違うんだなぁと、思う一場面でもありました。
趣味!趣味だと侮るなかれ!です。
哲学です!
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コメント
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- メラニー
きっと何にでも言えるのでしょうが、トライ&エラーですよね。
それを楽しめないと趣味には出来ないのだと思います。 - y.kato-channel
難しいけど、
勉強になります。
深いですね、
なかなか
自分はそんなこと、
考えたこともなかったけど。
哲学みたいに、
答えを探していくんですね。