『彼方からの呼び声』あれこれ
先日、書き終えた「彼方からの呼び声」というお話は、今からずいぶんと先の未来、人類が太陽系を飛び出して、恒星間を移動できるようになった未来の出来事を描きました。
太陽系から4万5000光年も離れた天の川銀河の外れで、一人の宇宙生物学者が経験する異種の知性とのコンタクトという、まったくの空想の世界のお話です。想像するのは自由… とはいえ、せっかく宇宙を描くのだから今分かっていることはなるべく放り込みたいと思い、あれこれ調べて回ったのを覚えています。
この記事は、そのメモ代わりみたいなものです。
・ポーラポーラ
木星型の巨大なガス惑星です。天の川銀河には超巨大なものからそこそこのサイズまで、無数のガス惑星があることが分かってきており、氷の衛星を従えているものも無数にあるでしょう。
木星の探査機、ガリレオとジュノーが捉えた画像は、ポーラポーラのイメージに強く影響しています。特にジュノーが撮影したまがまがしいまでの木星の大気活動は、インパクトが大きかったです。
NASA: Jupiter
https://www.nasa.gov/jupiter
・エウロパの海
木星の衛星エウロパとガニメデには(もしかするとカリストにも)、氷の表層の下に液体の「海」があることはほぼ確実とされています。エウロパの海(Europa's ocean)という熟語も、これだけで通じるくらいには一般的になっている様です。
エウロパの表面には地下からの活動が活発な領域があり、実際に高く水を噴き上げている箇所もあると報告されました。
https://www.space.com/jupiter-moon-europa-plumes-crust
"plume" は水煙とか水柱といった意味ですが、"破局的なブルーム" はここからの派生的なイメージです。ポーラポーラは木星よりも大きく、第4衛星にかかる力も激しく、地下から突き上げる力も破壊的だろうと。
・Dog Star
昔、読んだSFの短編です。調べたら作者はアーサー・C・クラークでした。
ミッション中、うとうとしていた宇宙飛行士が、昔飼っていた愛犬の鳴き声を聞いた気がして目覚め、自分の身に危険が迫っていたことに気付く… 確かそんなお話でした。
ラスト近くのシーンのヒントになっていると思います。
・太陽風交点
こちらも、昔読んだSFの短編です。作者は堀晃さん。
「銀河系の星々の中で、宇宙に出ることなく滅んだ文明」の遺跡を探査する調査員と、とある星で出会った結晶型の知的生命体との旅を描いた連作短編で、「静けさに満ちた宇宙の辺境」というイメージは本作にも大きく影響していると思います。
・恒星のコードナンバー
天の川銀河には1000億~5000億くらいの恒星があると言われています。5000億として、
500000000000=12桁 コードナンバーも12桁あれば間に合うはずですが、まあ16桁くらいあれば十分だろうと軽く考えて付けました。
番号に意味はなかったのですが、せっかくだから何か意味を付けてやろうと思って設定を考えてみました。
(実際、後でナンバーは付け直しています)
天の川銀河は、厚みのある円盤で例えられます。宇宙に原点があれば縦横高さの情報で星の位置を特定できるのでしょうが、そんな便利なものはないので太陽を起点に考えるのが一般的の様です。
私も調べて初めて知ったのですが、"galactic quadrant(銀河の四分円)" という、優雅な名前が与えられています。これを使いました。
太陽から銀河中心の方向を0°、そこから反時計回りに角度を与えていきます。
距離は、太陽からの距離(光年)。
厚みについては、銀河の北極と南極の間を1000刻みくらいで。
これにペルセウス腕とか、外腕とかの位置情報を加えて。
太陽から一番近い恒星まで、4光年くらいだそうです。角度は6桁で足りるか微妙ですが、16桁の情報があれば大体はカバーできそうです。
未来には、もっとクールで正確な情報管理方法が発明されているはずですが、今の私にそれを知るすべはありませんので、「中途半端に凝った設定」くらいで横目で見てもらえたらと思います。
NASAが作った図を使って、物語に出てきた星の位置を表してみました。本当はこの記事に貼り付けたかったのですが、そういう機能はないので「あとがき」の後ろに付けています。天の川銀河の果てしなさや、ポーラポーラの孤独さをイメージする助けに少しでもなれば… と思います
宇宙のことを考えると、果てしなさすぎて呆然としつつ、自分の知らない世界が無数にあるという可能性にわくわくしたりします。
人類が生命を見つけたり、知的な生命とコンタクトを取ったりする未来も、どこかにあるかも知れません。
でも次は、もっと感情にまかせたお話を書きたいと思ったり。
2021.7.28 黒川亜季
2021.8.30 「あれこれ」の中に、堀晃さんの短編「太陽風交点」を追記しました
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コメント
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- YSK
黒川亜季さま、こちらで失礼します。
「雨が降ったら ここへおいでよ その1」
読ませていただきました!
恋愛未満という設定で、麻衣の気持ちや
きゅんとする感じに懐かしさを覚えました☆
ありがとうございます(´。•ㅅ•。`) - y.kato-channel
春が来るまでニセモノの恋を
読ませてもらいました。
面白かったです。
コメントも書いたので、
よかったら、
読んでください。
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