前に書いた「ライバルがいる、ということ」 という記事の、ちょっとだけ続きです。
いつも以上に小難しい話ですので、ご容赦を…
人の名前について。
守備範囲がヨーロッパなのでそこに限定しますが、今はweb上の名付け辞典が本当に充実しています。
名前の意味、起源、どの国に多いのか、他の国では何と呼ばれるか、(ここ数十年に限って)どのくらい名付けられたのか… 名前にまつわる情報をいちどきに見ることが出来るので、リンクを辿っていくだけで、何だか色々なコトが分かったような気になります。
歴史ものや歴史を下敷きにしたファンタジーを描くのに、その舞台に相応しい名前を(登場人物の数だけ)用意したい。
そういう希望は、無理をしないでも叶えられるようになりました。
今ある名前はOK。では、今はこの世界にはない名前は…?
私が今、温めているお話に、「共和制ローマの時代に生きた、ガリア(ケルト)の戦士階級出身の奴隷」が登場します。
今からは、2000年以上も昔になります。
ギリシア人やローマ人は、自分たちのコトを書きまくってくれたので、世の中にもう十分ですというくらいに名前のストックがあります。
けれど、文字で歴史や物語を残さなかったケルトやゲルマンの人たちはそういうわけには行かず、語り伝えられたお話の断片とか、それこそギリシア人やローマ人が書き残してくれた中から探すことになります。
ガリアは今のフランス一帯の古い名前で、何十もの部族が農耕や牧畜をしながら暮らしていました。
都会的なローマ人に比べれば素朴で直情的、力を尊ぶがゲルマン人ほどむき出しではない、そんなイメージでしょうか?
ガリア人の名前について、簡単に手に入るのはカエサルが書いた「ガリア戦記」くらいだと思います。
ガリア人は、名前の響きも含め、とても面白い名乗り方をしていました。数は多くないですが、こんな感じです。
オルゲトリクス (Orgeto-rix, killing? king)(敵を)殺す王?
ドゥムノリクス (Dumno-rix, world? king) 世界の王?
アンビオリクス (Ambi-rix, around king, king protecter)王の守護者
カトゥウォルクス (katu-wolko, fight hawk) 戦いの鷹
ウェルキンゲトリクス (wor-kenget-rix, over warrior king) 偉大な戦士の王
ガリア戦記に登場するのは部族の長とか支配層に属する戦士が主なので、やっぱり勇ましい名前が多いですね。
自分の作るお話でも、ガリア戦記から名前を借りてこようかな~と最初は考えていたのですが、ガリア人の名前の作り方から、別のアプローチができないかと考えました。
それで調べてみました。あるもんですね。
イギリスのウェールズ大学のウェブサイトに、昔のケルト語と英語を対応させた簡易的な辞書がアップされているのを見つけました。
100ページあるその辞書の中から、戦士らしい、勇ましい単語を拾ってきて、頭、真ん中、後ろでグループを作り、それをランダムに組み合わせる… そんな風にして、幾つか作ってみました。
アブロウェッロガイソ (abro-wello-gaiso, very better spear) とても良い槍
アンビレグリセゴ (ambi-regli-sego, around clear victory) 勝利の守り手
スゥボッロエンセド (su-borro-en-sedo, good large chariot) 良い大きな戦車
ウェイドネトロリクス (weid-netro-rix, knowing strength king )強さを知る王
クノケンゲトミンディ (kuno-kenget-mindi, high warrior crown) 高い戦士の冠
順番がおかしいとか、この語は使わないとか、あると思いますが、組み合わせが勝手に意味を喋り始める感じで、「お前の体つきは槍というより金槌だろう」みたいな会話の糸口にはなるかなと思えました。
もう少し試してみて、ガリア人の雰囲気に合った、格好いい名前も、格好悪い名前も、作ってみたいと思っています。
webの検索機能が充実して、調べ物が本当にやりやすくなってきた。そんなお話でした。
興味があったら、ぜひ…
babyname wizard - web名付け辞典
https://www.babynamewizard.com/
Celtic Lexicon - 古代のケルト語について(短縮URL)
https://bit.ly/37Ocqpd