先生の大人できれいな手が黒板に文字を残していく。
音をならす黒板と、袖をまくった腕に動く筋、鍛えられた背中がYシャツで余計に引き立てられて、私が真剣に見ているのは黒板の文字なのか先生の姿なのかわからなくなった。
全部が愛しいです。
先生が記す文字も、鳴らす音も、動く後ろ姿も、全部すき。
言えないけど、届かないけど、生徒じゃないとみられない先生の姿だから、私はおとなしく良い生徒を演じるの。
今度も100点をとったら、先生はとびきりの笑顔で喜んでくれる?
ねえ、先生。
卒業するときには、素直になってもいいよね。
それまでは、素直でいい子で一生懸命勉強する生徒でいるから、まだ、薬指に指輪ははめないで。
バカな私にも夢を見させてね。