アップデート:たった今
薄明るくしぼった真っ白な画面を見つめながら、いつまでも言葉を思いつかずに時計の時刻ばかり確認している。
メール画面をスクロールして何度更新してもあのひとからの返信はない。
それでも、それでももし今あのひとがメールが来てやしないかと気にしたとしたら、と思うのだ。
馬鹿みたいに。
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もう何度目かも分からない十一月九日。
リマインダーが0時を知らせて今日を終わらせる。
消してしまうことの出来ない月額275円の人形の足。
このご時世に未だにEメールなんかでやりとりすることを大切にしているのだと話すあのひとの、膨大な量の通知のどれほどを占めているだろうか。
白んでいく空の色と、おやすみまたねと言えない私たちのあの下らないやりとりは今でもまだメールボックスのどこかに残っているだろうか。
思い出せることが少しずつ消えていくという事実だけがぼんやりと認識出来ているけれど、一体私が何を忘れているのかさえも分からない。
抗いようもなく鈍感になっていることしか分からないのだ。
そうしてそれは、どうしようもなく悲しいことだ。
なんにも変わらない。なんにもこわくない。だからなんにもうしなわない、だなんて、もうとっくに思えない。
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あのひとのことが好きで好きでどうしようもなかった。
死人のように冷たいこの手を、もう温めることなどなくても。
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