愚図

homeostasis.


世界でひとりだけだったの
誰より彼を愛してたの
でもお互いのことを思って、別々の道を選んだの
ありきたりな話だけど、そんな簡単なことじゃなくて
うまく言葉に出来ないけど、誰より彼を愛してたの



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そうじゃないでしょ、というあのひとの睫毛の一番先の氷の粒みたいな、波の終わりの泡みたいな白い点を眺める。
巻き戻して再生、そうじゃないでしょ。化けの皮の剥がれていくあのひとの、あなた、ではなくおまえ、と私を呼ぶ声。
いいじゃない、と楽観的ぶって、夜中にトイレに隠れて泣くあのひとの、あの夜のわかんない、と呟いた声。

私はあのひとに抱きしめられてばかりで、あのひとを抱きしめてあげなかった。
あのひとがそう求めていたことも分かっていたけれど、それでも一度でもあのひとを抱きしめていたら良かったのに。
そうしたらきっと、抱きしめた感触を覚えていられたのに。

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息が苦しくなればなる程喋る癖を、誰が知っていなくたって構わないと思っていて、どれだけ長い時間をかけたってもう変わってしまったものは元には戻らないと知る。
言葉の理解度が足らないのは私の方だと知る。



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