セシアより、愛をこめて。
時は未来。
科学技術の行き過ぎた地球では、度重なる争いによる世界の荒廃が起きていた。
開ききったオゾンホールから降り注ぐ有害な光線から身を守るために作られた巨大ドームが点在する、末期の地球はやがて、廃星となってしまう。
この物語は、人々が火星に移民を完了した時代に、廃…
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「セシアより、愛をこめて。」
時は未来。
科学技術の行き過ぎた地球では、度重なる争いによる世界の荒廃が起きていた。
開ききったオゾンホールから降り注ぐ有害な光線から身を守るために作られた巨大ドームが点在する、末期の地球はやがて、廃星となってしまう。
この物語は、人々が火星に移民を完了した時代に、廃星となった地球から掘り起こされた耐熱型のカプセルに入っていた、一通の手紙が発見されるとこから始まる。
そのうち手紙の内容は拙く、火星の未来にとって──再び争いを始めていた「火星の戦争時代」にとっては、全く意味のないものと認識されるはずだった。
──が、しかし。
受け取り手である大国の軍部の総司令官により、とある「可能性」を見出だされ、瞬く間に火星中へと羽ばたくことになる。
総司令官の名はアゼル・ディレイ。
テラフォーミングされた火星で生じた各国の争いを、命を賭し停止させた者となった。
手紙は「この戦時には不必要なもので、平和への願いも思い出させてしまう危険なものだ」と、アゼルの属する国家から抹消命令がかかっていたものであったが、アゼルは幼なじみのキリエ・ムジカに秘密裏に手紙を託し、抹消したかのような灰を証拠として国家に提出していたのだ。
キリエ・ムジカは、多種の機械に精通した科学者であり、ハッキング能力を持っていた。
キリエはその才を発揮し、軍部の全ての機械を停止させた上、国の全ての端末から「手紙」を読み上げた音声を流し続けた。
やがて、アゼルとともに反逆者として互いに別々の場所で射殺されるまで、二人は「争いの停止」を謳い続けた。
二人の行動は、火星の平和へとつながった。
しかし、火星にて「世界恒久平和条約」が締結された数百年後には、再び争いが勃発してしまう。
この時、かの数百年前の大戦を停止させたアゼルとキリエが流した「セシア・ミュルズ」という地球末期の一人の少女が書いた「手紙の文面」を覚えていた二人の少女、メルとリタ──ともに軍部所属の女性は、一人は軍用機を故意に故障させ、一人はかつてのキリエのように機器のハッキングをして「セシアの手紙」を読み上げることで、またも戦争に歯止めをかけた。
それからも、「手紙」は踊り出した──幾度も、幾度も。
繰り返す過ちの時代に、警鐘を鳴らすかのように──願いを、語るかのように。
そして、それから数千年後──
火星は、中世に逆戻りをしていた。
争いは忘れ去られ、穏やかな風が吹く時代の中、人々は暮らしていた。
創世の女神が降り立った国とされるラッセンブルグや他の国々には、守護騎士団という、王城を守る組織はあれど、世界に戦は起きていなかった。
しかし水面下では、様々なものが蠢いており──ラッセンブルグの隣国、シュテルンは、「古代兵器」という──かつての火星の争いの負の遺産を発掘し、ラッセンブルグに総攻撃をかけようとしていた。
ラッセンブルグ守護騎士団の一人、セレストは、同じ騎士団で隊長でもあるギル・ノスタルジアの裏切りにより国王を失ったラッセンブルグの姫君、フィオレンティーナとともに、ラッセンブルグの地下室に眠る「もうひとつの古の遺産」と対面し──
そこで出会った「数千年前の亡霊」のリタとともに、「セシアの手紙」にたどり着く。
やがてそれが古の兵器を停止させる「キーワード」だと知ったセレストは、フィオレンティーナとともに、リタに「古代語」での停止コードの入力を嘆願する。
リタは逡巡したのち快諾すると、シュテルンの古代兵器を全て停止・崩壊させ、崩れ落ちる「遺構」の中からセレストとフィオレンティーナを逃がした後、同じく長年さまよっていたメルとともに、静かに永眠し、世界を「これからを生きる」全ての人間の判断に託した。
平和を取り戻したラッセンブルグ城では、セレストが新たな国王となったフィオレンティーナに忠誠を誓う。
※このシナリオは、私の小説「セシアより、愛をこめて。」をシナリオ化したものです。
https://maho.jp/works/15591074771453239232