『俺を一緒に連れて帰ってよ』夏風邪に苦しんでいたところを、幽霊に取り憑かれたかなえ。憧れの先輩との距離が縮むにつれ、名無しの幽霊との時間は残り少なくなっていき…
名前も知らない、意地悪な幽霊。
偉そうで、勝手で――優しかった。
「結構キツイね。俺もあんたの名前、訊かなきゃよかった」
いつか、ずっとずっと先――……そんな約束をできないことは、私達二人とも分かっているのにね。
「俺、やっぱ名無しでいいや。……これ以上辛い思い、あんたにさせたくないから」
夏空、蝶々結び