夏空、蝶々結び【完】

作者中嶋 まゆき

『俺を一緒に連れて帰ってよ』夏風邪に苦しんでいたところを、幽霊に取り憑かれたかなえ。憧れの先輩との距離が縮むにつれ、名無しの幽霊との時間は残り少なくなっていき…



名前も知らない、意地悪な幽霊。

偉そうで、勝手で――優しかった。




「結構キツイね。俺もあんたの名前、訊かなきゃよかった」





いつか、ずっとずっと先――……そんな約束をできないことは、私達二人とも分かっているのにね。





「俺、やっぱ名無しでいいや。……これ以上辛い思い、あんたにさせたくないから」








夏空、蝶々結び