mimiko
少女はいつの間にか女性になり、翻弄し惑わし、そしてポンと勝手に開花するのです
兄、征太郎に手を引かれるように大きくなった美和子が、
いつの間にかひとりの女になり、憧れの先であった征太郎をも置いて、
色鮮やかに花開く様を見せてもらえる、そんな物語……。
相変わらずの世界観は見事なものです。
春なら、文中にずっと桜の花びらが舞い落ちているような。
秋ならススキの穂があるかなしかの風にゆれて、さわさわと歌っているようでしょうか……。
花の盛りの美和子さんは、華やかで儚く美しく。
兄の征太郎さんは思わず、一瞬の宵闇に身を任せ、その手を取ってみたけれど、
すぐに訪れてしまった陽炎のなかで、尚、輝く宝物を見つけてしまったような、そんな戸惑いに心を揺さぶられます。
女性は男性の知らない間に、大人になって美しく変わっていくのですね。
いつも兄の征太郎さんの後を追いかけていた美和子さんが、いつの間にか成長して、征太郎さんの心を追い抜いていく様が、
切なく見事に歌いあげられていて、読んでいて心地よかったです。
傑作でした。