忘れられないから、愛なんだ。 【完】

作者嶺田 スズ

君がいなくなった日、涙なんて流れなかった。


君がゆっくりとあの海に還った日、やっと僕は一筋だけの涙を流した。



――きっと、忘れられないから、愛なんだ。

君は幸福だっただろうか。


あの日のことを、僕と過ごしたほんの少しの日々を、覚えているだろうか。






「ねぇ、それは違うよ」




  忘れられないから、

    愛なんだ。





君が海に沈んだ日、僕の心で誰かが泣いた。