あの時の不安とよく似ていた
しばらく彼との思い出にひたっていた
もう何時間たっただろう
時計が無い部屋は時間が分からない
すると昨日の看護婦がはいってきた
《先生からおはなしがありますので一緒にきてください》
昨日と同じく車椅子で診察室へ
部屋に入ると医者がいた
何か言いたそうにしている表情
そのなかにもグッとおさえている軽い笑み
紙に書かれた
《今から書くことを落ち着いて受け止めてください》
うなずいた
《あなたは大型トラックとの事故で頭を強打して耳が聞こえるための脳の部分が破損しています。右耳は鼓膜も破れていてもうもとにはもどらないでしょう》
一通り読んでまた最初から読み直した
「いやだ」
《大丈夫です。耳は聞こえなくても手話や紙に書くことで会話が出来ます。手話を覚えるための施設も紹介します》
「そういう問題じゃない」
冷たい医者の文字を恨めしくにらんだ