主要人物紹介
ニロ(ふたぐち・けんじ)
19歳。バンドではギターボーカルを担当している。金髪のふわふわ天然パーマ頭がトレードマークで、明るく人懐っこい性格。ヒモ生活で培った家事スキルとマッサージの腕はかなりのもの。
リュウシ(たにおか・りゅうし)
34歳。全身にタトゥーの入っている長身の彫り師。日本人離れした掘りの深い端正な顔をしており、寡黙で感情表現に乏しい。仕事の合間に絵を描いているが、それは世間に発表していない。
あらすじ
バンドが解散し、ヒモ同然だった彼女にもフラれて家を追い出されたバンドマンのニロは、自暴自棄になって入った居酒屋で、全身にタトゥーが入った彫り師・リュウシに出会う。興味を惹かれたニロは一方的に絡み、意識を失うまで飲み続けた。翌日、リュウシの家で目覚めたニロは、自分の顔に大きなタトゥーが入っていることに気づく。ニロは酔った勢いでリュウシにタトゥーを入れてくれと頼んでいたのだ。そんなことは全く記憶にないニロだったが、リュウシはタトゥーの代金をニロに請求する。ニロは金がないと正直に告げた上で、この家に住み込みで働かせてくれと懇願した。一度は断ったリュウシだったが、ヒモ生活で培ったニロの家事スキルを見て、しぶしぶ了承する。こうして始まった奇妙な共同生活の中でふたりは仲を深めていく。やがてニロはふたたびバンドを組みスカウトまで漕ぎ着けるが、レコード会社のプロデューサーに『顔のタトゥーを消せ』といわれてしまう。悩んだすえ、ニロはリュウシの家を出て一人暮らしを始め、タトゥーを消した。数年後、売れっ子のバンドマンになったニロは、ある日のライヴの終わり、リュウシが死んだことを知る。ニロは泣きながらリュウシが一度だけ褒めてくれた自分の歌を静かに歌った。