あらすじ
「迎えに来たわよ、優。私のものになる覚悟はできた?」
「……ワァオ、クールなご登場だな。だがな、風呂乱入するのはやめろ。パンツ履いてるときに来い。ジロジロ見るな。そして照れるな、そこで……」
桃子はヤのつく職業(しかも組長)の父を持つ、ちょっと怖い育ちの女の子だ。とはいえ父は暴対法をきっかけに組を解散、今は完全な堅気となったため、桃子も普通の女の子となっている。
だから、普通にキャンパスライスを……なんて話には、この女の場合はならない。なぜなら根っこが任侠育ち。受けた恩は絶対に返すし、惚れた男は絶対に落とす、それが彼女の信条だ。
だから彼女は初恋の男、元若頭にして現マフィアの百々目を追いかけてイタリアに飛んだ。『お嬢が二十歳になったら考えてやりますよ』、その戯言を真にする、それだけのために。
そして、行き着いた先にいたのは何一つ変わらない女たらしの男だった。
「組が解散しようが、あなたがマフィアになろうが、あなたは私のものなの、わかる? だから他の女にいくら優しくしてもいいけど、私を絶対に優先しなさい」
「あんた、何も変わってねえな……」
優は押しかけてきた桃子を追い出すことはなく、囲っている女と同じように扱うわけでもなく、昔と同じように子ども扱いをしてくる。しかし桃子は、そんな扱いに心を折るような女でもない。
「私をあんたの女として見られないなら、私があんたを女としてみればいいって気がついたのよ。かわいいわね、ハニー。お姫様にしてあげるわ」
「……ほんとに、男前ね……」
駆け引きも何もなく猪突猛進、後も先もなく突っ走る。……桃子にはそうしないといけない理由があったのだ。
「馬鹿だなあ、こんな所まで来てさ。……死んでも、あんたはもう俺のもんだ。いいんだな?」
「あなたが私のものなの。死んでも、ずっとよ。……ずっとだからね」
年下女子×ジゴロによる悲恋の話。
鬼怒 桃子(20)
初恋の相手を追いかけてイタリアにまでやってくる行動派女子。
百々目 優(32)
元ヤクザにして現マフィア。とにかく女に優しい。そして不真面目。
ポートレート・イン・ザ・ダークのアナザーストーリーです。