「ああそうだ、——死んでしまえばいい」
時は江戸。
開国の音高く世が騒乱に巻き込まれる少し前。
その異貌の仔どもは生まれてしまった。
老者のような白髪に、空を溶かしこんだ蒼の瞳。
バケモノと謗られ傷つけられて。
果ては誰にも顧みられず、幽閉されて独り育った。
願ったさいわいへの道往きを、仔どもは自身の死以外には知らなかった。
——なのに。
腹を裂いた仔どもの現実をひるがえし、くるりと現れたそこは【江戸裏】
まことのバケモノが集いし夜の町。
魂となってさまよう仔どもはその町で、風鈴細工を生業をする盲目のサトリに拾われる。
あたたかな腕は恐怖でしかなく、けれども生まれて初めて、仔どもは愛されることを知ったのだ。
風鈴響く常夜の町で、死にたがりの仔どもが出逢ったこれは得がたい救いのはなし。
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