愚図

killing me softly.


じわじわとした苦しみなんかじゃなくて、胸を刺されるような痛みでもない。
静かな絶望だ。
涙も出ない。
撤回したい、という君の震えた声。
受け入れるべきなんかではないことを分かっていても、そうしてあげないのは私のエゴだ。
それでも良いから、という癖にちっとも良くなんかないのだ。
もう何も元には戻らない。
二度と。

気丈であれ、と擦り込み続けた時間なんて何の役にも立たないと熱を持った頭で考える。
びょおびょおと泣いて、嫌だと言える人間なんて、と悪態をつく。
ハリネズミになってしまった君を宥め賺して抱き締めることなんか出来もしなくて、私はひとりでびょおびょおと泣くばかりだった。
過ごして来た時間は全て空想だったのだと、一体どうしたら思わないでいられるんだろうか。
例えどんなに取り繕っても穴を塞ぐことなんか出来なくて、先延ばしにして曖昧にやり過ごして誤魔化して、そうしていられたらそれで構わないと、言葉にして耳目に流して呪いにする。
何の力も持たない私には、強力な呪いはかけられない。
だから綻びはきっと、私をぐしゃぐしゃにする。
これでは駄目だ。
これでは駄目だ。
これでは駄目だ。
分かっているのにどうすることも出来ないのだ。
悲しみは私を正しくして、穏やかに死んでいく。
殺された私はもう、殺された私でしかいられないのだ。


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