愚図

dilemma.


簡単なことだ、と思う。
どうだっていいやりとりを省いてしまえば、根本の解決にならなくとも寝てしまえばいいのだ。
少なくとも満たされるのだ。
息遣いや抱え込む腕や情けない声で、なんてことないことだったと思えれば、それで良い。
どうしたってひとつになれないことを知っているなら、ほかに方法はない。


ーーーーー

考えて欲しい訳でも、受け止めて欲しいわけでもない、と思いながら身体に回された腕を抱いて、ぬるい湯船の中でゼロ距離のまま首にキスを受ける。
抱きたいと思われているだけで充分だ。
一日の終わりにこうしてくっついていることを、求めていたのは私だけではなかったのだと安堵する。
自分勝手だからという君の、髪を梳いて頬を撫でる指。
しゃくり上げながら泣く私を宥める声はいつだって柔らかいのに、傷付ける言葉を吐きながら君が傷付かなければいい、だなんて思う。

薄く開けた眼から見える君の白い顔をずっと忘れないでいられたらいいのに。
言い訳や取り繕うことをしない君の、君だけの正しさを身体中に染み込ませることができたら。
心臓にぶっ刺さった言葉を抜くことはできないまま目蓋を閉じる。
薬に頼らずに眠る夜。
たった二日分の寂しさを埋めることを、君がしてくれたらいいのに。





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