愚図

待つとしきかば


上がったり下がったり煮詰まったり揺らいだり忙しい。
あのひとからの連絡は返ってこなくて、近くて遠い胡散臭い笑顔の誰かからの宙ぶらりんな連絡は続かなくて、私はずっと親指をくるくると回している。
だけど今更無理をしなくていいのだとか追撃をするのも良い加減鬱陶しいような気がして何も出来ず、大人しくしているしかないのだ。
良く知らない他人の時間軸や機敏は難しいなあと思う。
どこかに行きたい気持ちと誰かといたい気持ちは必ずしも比例する訳ではないと思うけれど、でもじゃあひとりきりで遠くに行くのも億劫でくさくさしているのだ。
つまんないなあと思ってつまんないなあと口に出しても、心の中で思ったことと出て行った呪いの言葉は全く違うもののように感じて辟易する。
独り言でさえ思う通りには出て行かない。
優しくされること、甘やかされること、ほんの少しだけ触る誰かの白い指。
当たり前みたいに私の荷物を持つこと。
意外と節操がなかったら当たり、と思いながらそういえば今日は一度も顔を見ていないことを思い出す。
愛して欲しかったり愛さないで欲しかったりしながら日常に溶けていく私の心の、すっかりど真ん中にいるじゃないかと自嘲。
マリンブルーで愛されたり大黒ふ頭で虹を見たりシーガーディアンで酔わされたりボーリング場で格好つけられたりブルーライトバーで泣き濡れたりバーバービューの部屋で抱きしめられたりしたいのに、あのひとはちっともそうしてくれない。
それでも会いに行かない、と言うとさも残念そうになんだ、などと言うのだ。
一体いつになったらホワイトタイガーを見に行くのかと嘯くのだ。
伸びて丸まって眠るだけの生き物に、私もなれたらいいのに。
あのひとの腕のなかで眠れたらいいのに。


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