愚図

混濁する


いつだって独りよがり、を愛しているのだから、どうしようもない。
私の私にしか分からないこと、を、このひとは分かっているのだと知るときの喜びと悲しみ。
それでも一体どうして、このひとは私の特別じゃない。

本当に必要なものなどないのに、と口にするのは狡さの結果で、どうしても君が必要なのだと本当は言いたいのだ。
今ここにあったらいいのに。小林製薬。とか思いながら、それでも連絡のひとつも出来ずに愚図愚図としている。
短い時間で良いから、今君の匂いを嗅げたらいいのに。
君の白い顔を眺めて白い指を触って、大好きのキスをしたいのに。
こうしてひとり大人しくしてしまうことをそのうち後悔したりして、どれだけ君のことが好きだかあててごらん、とか思うのだ。
こんなふうに今日を生きてしまったこと、ほんの少しでいいから君が同じように私のことを考えてくれたらいいのに。
何かの手違いで好きになってくれないかなどと良く言ったものだ。
いつでも物足りないと思うけれど、遡れば随分よくもまあ相手にされているじゃないの、と自嘲する。
会えなくてごめんねだなんて言うくせに、もう私のことなんてどこかに行ってしまったみたいだ。
寂しさを誇示することの無意味さと絶大さを図りかねている。
それでも孤独を呟くな、沈黙を誇れと生きてきたことを、失ってたまるものかと泣いて過ごすのだ。

ーーーーー

頭が割れるように痛くて、命からがら車を運転して帰って珈琲で鎮痛剤を流し込む。
申し訳程度になんとか化粧を落としてベッドに突っ伏す。
具合の良い体勢を探しながら痛みに耐えて手負いの獣みたいにやり過ごして、薬が効くのを待った。
眠りと現実の間を行ったり来たりしながら一時間、なんとか遠くに薄ぼんやりした鈍い痛みを残したものの生還出来たことに安堵する。
君に伝う予定のない一連の時間を、何の意味などなくとも伝いたいのだ。
そうして寂しい会いたいと言いたい。

まあいいか、と何事にも諦めることの得意な君が、きっといつか私のこともまあいいかと捨て置いてしまうこと、捨てないで欲しいと思っちゃう、と言ったあのときのあのひと言をせめて録音しておけば良かった、と悲しい気持ちで思うのだ。


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