愚図

アラザン


キハラからの連絡にはいつも惑う。
いつだって意味もなく生存確認をするこの男の、思惑を読み取ることなどは不可能なのだ。
一体何のために?と何度考えたところで無駄なのだと分かっていても、やはり思うのだ。
一体何のために?

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返信をすることが面倒でいつまでも愚図愚図として、あのひとにメールをする。
2分毎にアップデートをしても意味がないのに。

寒天のなかみたいな空気を肺に入れながら横浜の雑多な道を歩く。
来るたびに変わるこの街のどこを見てもあのひとはいない。
こんなとこにいるはずもないのに、と思いながら。


待ち合わせにぐうたらなあのひとを待ちながらひとりで呆けていたのは一体何年前だっただろうか。
悪びれもせず今から出る、などと連絡を寄越してきたあのひとの、ふざけたメールを消してしまったことを心底後悔している。
どんなにきちんと落とし込んでも消えていく精度の悪い私のソリットステートドライブはもうずっと長いこと機能していない。
それはひとえにあのひとが私の人生のなかにめったに現れてくれないからだ。
BLUE BE BOPをみんなが知らないことを寂しいと思っただのと感傷的になって、だからなのかそれとも覚えていたのか、珍しく誕生日を祝う連絡がきたのはもう四ヶ月も前である。
ソートをすれば出てくる記憶と痕跡はちくはぐで、一体なんの話なんだか分からないままそれでも随分楽しそうな内容ばかりで安堵する。
死ぬまで愛していることをなんとかして思い出す。
一層いなくなれなどともうほんの少しも思わないことを良かった、と思うのだ。


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ご機嫌の斜めなこのひとがいなくなる日が今日でなくて良かった。
日中はあんなに可愛く笑っていたのに、なんだか虫の居所の悪い君が私を攻撃する。
私は悲しい気持ちになってぐるぐるとして、一層いなくなれを発動する。
悲しい気持ちになってほしい訳ではないなどと言う君の浅はかさ。
それでもなるべく手離したくないと言うなら、と良いお返事を返す。
失おうとばかりする私を分かっているんだかなんなんだか、それでも優しくしようとする様を息苦しく感じて、そんなことよりもよっぽど今日抱くべきだった、と言わずに今日を終える。
多少のぶつかり、というものがどういうことなのか分からないが、少なくともセックスが出来なければ何の意味もないのだ。
作用もしない一日の価値は低いまま、眠れない夜をくさくさと過ごす。
傲慢である。




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