ファン
76

フルーツロール

フルーツロール🍎です(*´∀`)🌹

名前の由来は、“その時食べたかったから”です。

どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

小説は基本、ピカレクスロマン🔫の要素が強く、波瀾万丈な物語。そこから少しずつ、幸せを勝ち取っていくような物語だと思います🔫🍀

よろしかったら、フルーツロールの物語を、楽しんで頂けたらと思いますm(__)m

第六回ブログで感謝企画②🎬️💮

第六回ブログで感謝企画①🎬️💮の続きです。

下記からメインストーリーを再開いたします。↓


―――*



「鬼の巣窟とまで呼ばれていた黒須は、稲葉さんたちが卒業した後に一旦落ち着きました。

けど当時は皆、新たな黒須のテッペン争いが始まるものだと、そう思っていました。

ですが新三年にももう、テッペン狙うような骨のある奴はいませんでした。
――新三年は二年の時に、稲葉さん、白谷さん、星さん、高橋さんに挑みコテンパンにされましたんで。
その時に二学年生粋のワルたちは皆、転校に追いやられました。
そう、新三年にはもう、骨のある奴がいなかったんです。

――そうなると新ニ年が中心にテッペン争いをするのでは?と、新三年や当時一年だったオレらは思っていました。だが、そうはならなかった。

稲葉さんや白谷さんたちの可愛がっていた隼人さんや光さんたちが、テッペン争いなんかよりも、とにかく楽しむ事が好きな愉快な人たちだったからです。」


5人「………」


〝あの隼人たちとか言うガキ共、オーシャンの大馬鹿先輩共よりも、だいぶお利口じゃん!〟


「隼人さんたちがニ年、三年の時の黒須は、まさに楽園でした。

あの五人は好きに楽しんでいましたから。

月一で文化祭をやっていたし、授業は基本、音楽か美術か体育の三択でしたし、夜は花火で遊んだし、学園の裏山へ釣りへも行っていたし…

そうやって伝染するように、黒須全体が楽園へと変わっていったんです。鬼の巣窟とまで言われていた、あの黒須が…」


〝やっぱし今回もオーシャンの四人は悪役じゃねぇか!隼人たち無意識救世主かよ?!良い奴らだなぁ?!〟


「だが、また黒須は変わっちまった…!!隼人さんたちが卒業したタイミングで、野心を持っていた一部の奴らが事件を起こしたんだ!

〝こんなヌルイ黒須は認めねぇ。オレはテッペン取る為に黒須へ入ったんだ。こんな楽園はブチ壊してやる〟――そう言ってソイツらは、次々に生徒を襲い始めた。

……――黒須はまた逆戻りした。逆戻りをするしかなかった。

〝殴らなきゃ殴られる〟。
〝喧嘩で勝たなきゃいけねぇ〟。
〝だったらテッペン取るしかねぇ〟…――ってな。

――オレはまた、あの楽園を取り戻してぇんだ!!
だからオレも人を殴った!負けた奴を舎弟にする為に!
そうして軍団を作ったんだ!オレらがテッペン取って、また黒須を楽園へと戻す為になぁ!!」


5人「っ?!」


川「えっ?!キミ、楽園に戻す為にテッペン目指しているの?!」


「あぁ!!そうだ!!」


5人「メチャクチャ良い奴じゃん?!」


――モヒカンの目的を知り、思わずうっと涙ぐむ五人である。

『世の中捨てたもんじゃねぇなぁ…!』と、片腕で涙を拭っている照。
両手を顔に当てしくしくと泣きながら、『前言撤回よモヒカン…その優しい心は少しだけ夕に似ている……顔は似ても似つかないけれど…』と明美。
『そうだよね…楽園に戻したいよなぁ!』とボロボロと泣きながら川浜。
そして右京と澄橋もうっと涙ぐみながら、『どんなクソガキでもバカでも構わねぇ。…―ただ誰かを痛めつけちゃいけねぇ。クソガキでバカだが、争いのない楽園を目指すお前は正しい』『そうそう。勉強しなくても良いから人は殴らずただ遊べ。――そんで卒業したらちゃんと働け』『『人は傷つけるな。〝オレらみたいにならねぇ様に!!〞』』と。


〝オレらみたいにならねぇ様に!!〞…――裏社会一員からの、切実な願いである。


そして、心を打たれた五人は『テッペン取って黒須を楽園に戻すぞ!モヒカン!!』となる。『ほっ本当ですかぁ~?!ありがとうございますっ…』と思わずモヒカンも涙ぐむ。



澄「それで、黒須を逆戻りさせる原因のヤツは?」


「オレと同じ三年の〝阿呆咲〞って奴です!奴ら阿呆軍団が今の黒須の黒幕!!あの軍団さえやっちまえば、黒須はまた楽園に戻れる筈だ!」


右「……見事な名だな。迷惑なアホ咲き野郎って訳だ」


すると、『そうと決まれば仲間たちを呼んできます!皆で協力して阿呆軍団を倒すんだ!』と
モヒカンは仲間たちを呼ぶ為に教室を飛び出して行ったのだった…――


こちらはモヒカンが戻るまで、一旦待機である。


そして暇をもて余し始めた五人は…――


明「飲み物がなくなっちゃったの。自販機探してくる」


澄「…一人じゃ危険だ。オレがついて行こう」


笑顔で『ありがとう』と答えながら、〝ただの暇人かと思ってたら案外気が利く!〟と心の中で思っている明美である。――明美と澄橋は自販機を探しに。


右「オレは寝る。眠る努力をする」


照「じゃあオレは校舎を見て回ろうかな」


川「モヒカンが戻った時、右京さんがいるなら平気ですよね!オレもいろいろ見てきたい!」


右京がここへと残り、照と川浜は黒須を見て回る事に。


右「なぁテルテル、ネコ貸してネコ」


照「キツネですって」


照はお守り狐を右京へと手渡す。


川「ソレどうするんですか?」


右「あ?ネコと一緒に昼寝したりするだろう?人はモフモフがあった方が眠れる筈だ」


一瞬〝ぬいぐるみと一緒に寝るつもりか?!〟と思ったが、その後に〝あっ切実に眠りたいんだろうな〟と気が付き、何もツッコまない二人だった。――こうして照と川浜も教室を出た。部屋には右京が一人だ。


〝よし、ちょっとでも眠らないとな〟と、右京はアイマスクをつけてソファーへと寝転がる。体の上にネコ(狐)を置きながら…――



――皆が出て行き約15分。教室の外に怪しい人影が四つあった。
その四人は外から、そっと教室の中を覗き見ている。四人の男たちは小声で話す…――


「何だ?誰もいないじゃねぇか」


「あっいや待て!誰か寝てる!」


『本当だ!』と頷き合うと、四人はそっと教室の扉を開いた。音を立てないように気をつけながら中へと…――


「藻樋山(モヒカン)の野郎が腕の立つ転入生と一緒にいたってんで、ここへと送り込まれたが…―この寝てる奴が転入生の一人か?」


「ちくしょう!女はどこに行った!〝女拉致してこい〟って阿呆咲さんからの命令なのによ…!」


――そう、彼らは阿呆咲の差し金であった。人質にする為に明美を捜しているらしい…――

『寝てる野郎が一人だけかよ!』と、差し金の男たちは舌を打った。

――だが、右京をじっと眺めるがいなや……――


「っ?!…――これは男装に違いねぇ!きっとコイツが標的だ……!!」


〝女だ!!〟…―と、思ったらしいのだ。

〝女を拉致するぞ!〟と、男は手をのばす…――が、“パンッ”と右京にその手を払われる。


「「「「起きてる?!」」」」


そう、やはり眠れていない。『邪魔すんな…もうちょっとで寝れそう…』と、右京は呟いている。


「そうはいかねぇ!一緒に来てもらおうか?女ぁ!」


右「……女じゃねぇよ……」


「騙されねぇぞ!!…――アイマスクで目は見えねぇが、テメーうちの姉ちゃんよりも大分キレイだぞ?!男の訳ねーだろうが?!」


「ぬいぐるみと寝てるし!!女だ!絶対女だ!」


〝やっぱしコイツが標的だぁ!!〟と、男が右京の腕を掴む。
――が、右京はまだ、あくまでも頑張って眠ろうとしている最中である。
腕を引っ張られながら、『あっ動かすな動かすな…眠れなくなる…』と、この状況でも危機感がまるで無いようだ。
――終いには、お姫様抱っこで抱き上げられる。
だがやはり本人は、『なになに?安眠ベッドにでも連れてってくれるのか?』と。呑気なのか、それともウトウトして寝ぼけているのか謎だが、そう呟いている。

――こうして右京が、阿呆軍団に拉致された。


――その頃、藻樋山ことモヒカンは仲間たちを集めていたところだった。
そして、そんなモヒカンのところへと、一本の不吉な電話が…――


―「女は預かったぜ?藻樋山ぁ?――さぁ、ど~こだ?…――」


モヒカンはサッと顔色を悪くした。
――すぐに電話は切れる。

〝アネゴが危ねぇ!!〟と、取り敢えずモヒカンはこの事態を澄橋たちにも伝えようと、仲間たちを引き連れ一旦あの教室を目指した…――


――ガラッ!と扉を開く。


「誰かいるか?!大変だ!アネゴがぁ…―!!」


……だが、『え?私?』と言いながら、澄橋と一緒に教室へと戻ってきていた明美が振り返ったのだった。

『アネゴ!ご無事で!…――なんだハッタリかぁ!阿呆咲の野郎、〝女預かった〟とか言いやがってー!』と、モヒカンは言う。

――だが、澄橋と明美は気が付いた。

〝女は預かったと電話があったが、明美は無事だった。となると、間違われそうなのは……〟と。
もう、右京しか思い浮かばないのだった。

『いや、それ多分右京だ』と。すると『えぇ~?!やっぱし誰かしらは拉致されてる~?!』と、またモヒカンは顔を青くするのだった。


「急いで捜そうっ!」


澄「まぁ捜すか。右京ならあまり急がなくても平気だろうが」


澄橋と明美、モヒカンと軍団のメンバーで手分けをしての捜索が始まった。


――澄橋は明美と一緒に行動しながら川浜にも連絡をいれた。『右京が拉致された。捜せ』と。


澄橋の連絡を受けた川浜も、照と共に右京を捜し回る…――


――
――――


「何か手掛かりは……」


澄橋と明美は西校舎の階段の前で、息を切らしたモヒカンと偶然落ち合った。
『いや、手掛かりは何も』と澄橋。
――だがその時、明美が何かを見付けた。明美はハッとしながらそれを指差した。


明「見てこれ!照くんのキツネがっ!」


澄「なに?!」


するとそこには、照のぬいぐるみが落ちている。


明澄「「………――」」


澄「…いや、照を捜している訳では…」


とは思ったが、『おい、今どこだ?お前のぬいぐるみ落ちてるぞ?』と照へと電話をした。すると…――


照「そのぬいぐるみ、右京さんに貸したんですよ!」


澄「っ?!…――なら今すぐ来い!西校舎一階、南側から数えてニ個目の階段の下に!」


――ここで全員落ち合うのだ。『分かりました!今行きます!』と、そう言って照との電話は切れた。


そして照と川浜は…―


照「今すぐ〝西校舎一階、南側から数えて二個目の階段の下に!〟」


川「へ?!何それ?!西の校舎なのに南側から数えてって?!どうしてそんなにややこしい!!」


照「何でもいいから!行こう!」


川「あぁ!」


だが、〝行こう!〟〝あぁ!〟と言い合ったまま、校庭の真ん中で二人は、互いをじっと見たまま固まっている。


照川「……――」


川「あっ…―コンパス!!」


照「流石ッス!」


どうやら照も、方角が分からないらしいのだ。
二人でコンパスを覗き込む…―
『西西西!西って?!』『ッ?!』


〝E、W、S、N――さぁ西ってどれだ?!〟


せっかくコンパスを持ってきたのに、結局そこからである。


照「ここは勘ッス!どうスか?!もう世界平和ダブルピースの〝W〞の方角に行けゃいいとオレは思う!!」


川「!?照くん冴えてる!そうだ!世界平和願いながらダブルピースな〝W〞に進めば間違っていたとしても天がどうにかしてくれるさ!!」


――〝ダブルピースな〝W〞へ!!〟――


テキトーなくせに正解を引いている二人だった。


二人は無事、西校舎の前へ。次は〝南〞である。――二人は再び、じっとコンパスを眺める。
〝W〞は西であると推測は立ててある。なら南は?〝E、S、N〞さぁどれだ?――


照「〝S〟…――コイツはフィッシュフックに似てやがる……」


川「なるほど…――“幸せを釣り上げる”という意味を持つ、あのフィッシュフックにな…――」


そして――


――〝ダブルピースの後は幸せ一杯に決まってんだろうが?!願いを込めてっフィッシュフックな〝S〞に行けゃ良いんだ!!〟――


二人はフィッシュフックな〝S〞の方角へ――


またしても、テキトーなくせに正解を引いている二人であった。


そして…――


照「明美さん!」


川「澄橋さん!モヒカン!」


澄「早かったな。川浜、照」


無事、全員落ち合った。

〝ここへぬいぐるみが落ちていたなら、取り敢えず西校舎の二階から上だろう……〟

澄橋、明美、川浜、照、モヒカンと軍団たち、全員で階段を駆け上がる…――


澄「取り敢えず二階から……」


〝二階から捜そう〟と、澄橋はそう言おうとした。だが……


川「何を言ってるんですか!澄橋さん!」


照「ヤンキーってのは、〝上へ上へ〞と上がる習性を持った生き物ッス!!」


川照「〝屋上〞だぁぁ~!!」


澄「……っ?!……」


照「なぁ!モヒカーン!!」


「〝屋上〞だぁぁ~!!」


すると軍団も『屋上だぁぁ~!!』『おぉ~!!』と、雄叫びを上げる。


澄橋は〝そうなのか?!〟と思いながらも、彼らの野生の感を信じて一緒に階段を駆け上がる。


――そして屋上へ……


まだ屋上に右京と阿呆軍団がいるとは決まっていない。だがモヒカンは当たり前の様に『阿呆咲テメー!!』と、叫びながら屋上への扉を開いた。
……だが、するとやはり、当たり前の様に屋上にちゃんと阿呆軍団がいて、『来たな。藻樋山~』と、不敵な笑みを浮かべた阿呆咲が言ってくるのだった。

『ヤンキー単純だな…』と、目を見張りながら衝撃を受けている澄橋。
…―だが、この空気は何とも〝本当にいた!びっくりした!〟などとは言い出せない空気である。――そう何故か澄橋以外の皆〝TEH 当たり前〟みたいな顔をしているから…―

――そしてやはり、阿呆軍団に捕まっているのは右京だ。
両腕と胴体をロープで縛られたまま……―〝寝ている〟。


藻「もう許さねー!阿呆咲!今日ここでオレらモヒカン軍団が黒須のテッペンを頂く!…―そして黒須を楽園へと戻す!!」


阿「――まだ楽園だのとヌルイ事を言ってやがるのか?――その楽園ってので毎日馬鹿みてーに笑って過ごし、何がそんなに良い?……――オレは殴り合いの方が好きだ!心全てさらけ出す“喧嘩”の方がなぁ!」


藻「何が“心をさらけ出す”だ!今の黒須は見せ掛けだ!恐怖に支配されている!だから皆仕方なく拳を握ってるだけなんだ!――そんなものの何が良い!」


『黙れ!』と声を荒らげ、阿呆咲が拳を構えて動いた。すると、阿呆軍団も一斉に拳を構えて駆け出す――

モヒカンも拳を構えて阿呆咲へと――。モヒカン軍団も拳を構えて駆け出す――


明「私たちも行くよ!」


川「はい!」


照「おう!」


澄「仕方がない。――で、右京は?」


明「〝叩き起こして加勢させる〞!」


『名案だ』と、言って四人も、拳を構えて乱闘の渦へと突っ込んでいく――

今にも怒り、泣きそうな空の下を…――


明「右京さん!起きてー!!」


バコン!☆


右「っ……!!……えっ?!オレ何分眠れたのかな?!」


明「知りません!いいから加勢してー!」


右京は目を凝らしながら、目の前で繰り広げられる乱闘を眺める。〝あっ?何やってんの?〟とそんな事を考えながら。

明美が右京のロープをほどき、右京に自由が戻る。


明「行きますよ!ついにテッペン争いです!」


右「了解…⭐️なら仕方がない」


こうして右京も乱闘へと加わった――


――そして藻樋山と阿呆咲は……――


阿「何が楽園だぁ?!ふざけんな……!そんなものこそ見せ掛けだ!!そんな場所にいたって…――笑えねー奴だっているんだ!!オレは大嫌いだ!!笑えねぇ事情抱えたクソみてーなオレらを置き去りにして、〝楽園〟とか言ってはしゃいでるテメーらがなぁ!!」


ゴッと阿呆咲の拳が藻樋山の頬を殴った。


藻「阿呆咲、お前……」


阿「あぁ?!何だよその目?!同情かぁ?…――ムカつくんだよ!!」


――すると『は?』と言って、今度は藻樋山が阿呆咲をゴッと殴った。


藻「冗談じゃねーよ!同情?…―んなもん、してやる義理もねー!!無理に楽しめとも笑えとも、誰も言わねーだろうが!オレや皆が呼ぶ〝楽園〟ってのはなぁ、ただの飾りの言葉じゃねーんだよ!“心からそう感じる様になったから”だからいつしか皆〝楽園〟って呼ぶようになったんだ!!」


阿「……――」


藻「――お前言ったよなぁ?〝笑えねぇ事情抱えたクソみてーなオレら〟ってよぉ?……その通りだ馬鹿野郎が。……この黒須にいる奴らは皆、そんなクソ野郎共だ。笑えねぇ事情があるが、意地張って泣き叫ぶ事も出来はしねぇ…――だから〝殴り合うしかなかった〟。――そうオレら全員、そんなクソ野郎共だ!」


阿「楽園楽園ってヘラヘラしてる野郎が、知った様に言うんじゃねーよ!!」


藻「――……全員〝そんなクソ野郎共〟だったが、いつしか笑える様になった。拳を握らずにただ、楽しい事だけを探す様な日々の中で。そしていつしか皆〝楽園〟だと、そう感じる様になった」


阿「………――」


藻「オレらは同じ筈だ。阿呆咲。テメーは“まだ”、楽園を感じられていねぇだけだ。〝これから笑える様になる筈〟だ!
――…なのによぉ、今黒須を恐怖で支配なんかしちまったら、いつになってもここは、テメーの楽園にはなりゃしねーんだよ!!」


――瞬間、藻樋山の凄まじい拳が阿呆咲の顔面へと直撃した。


ドッと音を立てて、阿呆咲が屋上の地面へと倒れる…―


『阿呆咲さん?!』と、舎弟たちが駆け寄る。


澄橋、右京、明美、川浜、照の五人は喧嘩を続けながら、何気なく藻樋山と阿呆咲を眺めている…――ゴッと相手に一発入れると、五人はゆっくりと藻樋山の方へ。


澄「やったか?」


藻「分からん」


五人と藻樋山は、地面へ倒れたままの阿呆咲の方へ…――


――すると阿呆咲は、片腕で顔を覆いながら、静かに泣いていた…――


藻「おい阿呆咲……」


阿「……うるせぇよ……馬鹿野郎……」


藻「……――」


――屋上には沈黙が走っている。するとその時、バンと屋上の扉が開いた。


振り返るとそこには、他の生徒たちが集まってきていた。


藻「お前ら、どうして……」


「…屋上から聞こえたんだ。藻樋山が楽園取り返す為に、阿呆咲と言い合ってやりあってる叫びが…」


「そんでオレらも、楽園取り戻す為に覚悟決めてきた!」


『で?阿呆咲は?』と、駆け付けた生徒たち。『ん、』と言って、藻樋山は倒れている阿呆咲を指差した。


「勝ったのか?!」


すると『うーん…』と、藻樋山から曖昧な返事が。


藻「おい阿呆咲!オレの勝ちって事で良かったか?だったらもう、恐怖政治は止めてもらうぜ?オレは楽しむ為の学園にするつもりだからな!」


すると腕で顔を隠しながら、ゆっくりと阿呆咲は話した…――


阿「……入学した頃…文化祭月一であったよな……御気楽な野郎共だと……楽しんでいる奴らが気に食わなかった……」


「………」


阿「……けどよぉ……美味かったんだよなぁ……隼人先輩たちに、無理矢理食わされた…イカリング……」


――その時、バンと再び、屋上の扉が開いた。するとそこには何故か……――


「亮大くん!」


「亮大さん…」


「右京さん!」


有凛と甲斐、そしてPTBの男たち。


〝うわっ?!ヤバそうな奴らが来た?!〟と、顔を真っ青にさせる黒須の生徒たちである。


右「え?何しに来たの?」


有「“購買でお昼買う”って言いながら、カードしか持っていかなかったって言うから…〝大変!〟って思って!」


すると有凛が駆け寄って来て、『お弁当を届けに来たのよ!イカリング!』と言って、イカリングオンリーなお弁当を開けて見せてくれるのだった。

『ありがと』と言いながら、イカリングを一つ取って食べる右京。

――そしてモグモグとしながら、『じゃあ阿呆咲にも無理矢理食わせてみるか』と。


右京、澄橋、明美、川浜、照、モヒカン、六人で『オラ食え!イカリング!あの文化祭の味思い出しながらなぁ!』と、阿呆咲にイカリングを食わせる。

すると阿呆咲、『美味ぇ~…』と、あの文化祭を思い出しながら、ボロボロと泣き始めた。


阿「……また……月一で文化祭が……やりてぇ…」


藻「っ?!おっおう…!また、あの頃みてーになぁ!!」


この場には一斉に、黒須皆の歓喜の声が響く――


そして五人も、互いに顔を見合わせながら、ゆっくりと口元を綻ばしたのだった…――



――黒須はまた、〝楽園〟と呼ばれたあの頃へと戻るだろう。

〝楽園〟だと、いつか皆が、心からそう感じる事の出来る様に、楽しい事を沢山抱えながら。

楽しそうに笑う人々を見て、部外者は呼ぶ『あそこは楽園だ』と、そう軽々しく。

〝楽園〟と呼ばれる場所にいながら、笑顔になれない事情を抱えた、一部の者たちの心を置き去りにしながら。

――だから笑顔になれなかった彼の心は余計に尖った。結果的に人を傷付けた。

部外者はただ見ただけで『楽園』と呼んだ。

だが楽園と呼ばれた場所で楽しんでいる当事者は違った。

自分が心から“この場所は笑顔が絶えない楽しい場所だ”と、そう感じた瞬間にここが〝楽園〟になったのだ。

そう、彼らが呼んだ〝楽園〟とは、ただの言葉ではない。

〝楽園〟とは、心がそう感じた瞬間に、個人の心の中に生まれるものなのだろう…――

そして黒須は楽しい事を沢山詰め込んだ、優しい場所であり続ける。

〝楽園〟だと、そう幸福を感じる事の出来る、生徒たちの心を育てる為に…――



―――【END🌠】―――



――カーテンを開き、電気をつける。ここはスタジオだ。


フ「ハッピーエンドだね!」


瑠「良かった良かった!」


フ「ゲストさん、ヤンキー学園潜入⭐️はどうでしたか?」


リア「熱い話だったな。楽しそうだ」


瑠「ゲストじゃなくて、寧ろ黒須に行ってみたかったですか?」


リア「いや、勢いについていけない」


フ「澄橋はギリギリ勢いについていっていたね。あれ?ついていけていたのかな?」


澄橋の心だけ、置き去りにされていないかどうかが心配である。
――さておき、霧滝の感想は…


霧「警察を呼んでヤンキー学園潜入ドキュメンタリーとは、少年院に連れて行ってほしいのかと思った」


3人「っ?!」


霧「――が、この件は目を瞑ってやる。右京と澄橋は〝オレらみたいにはなるな〟と抑制していたし、子どもたちは平和の為に奮闘していたのが伝わってきたからな」


〝良かった……〟と、ホッと胸を撫で下ろした3人。

以上、黒須のドキュメンタリー感想でした―


フ「ここで話は変わるのですが、照とトリスの誕生日はまだ発表されてないんですよね。本編で発表する機会を待ったなら最後の最後に成り兼ねないので、この当選の機会に発表しちゃう事にしました⭐️

照は9月8日🍰トリスは7月13日🍰ですね」


霧「本当は狙って当選したのか?」


リア「まさか」


瑠「霧滝さん、“逆”です。誕生日未発表の当選者の誕生日が近かったから発表したんです!」


〝おめでとう〟と、自分の取り分のポップコーンを渡す瑠璃とフルーツロール。


リア「ありがとうございます。今日初めてお会いしたのに、ポップコーン貰えるとは思っていませんでした…」


霧「食いかけのポップコーン貰っておいて、謙虚だな…オレだったら〝まともな物寄越せ〟と言ったぞ」


フ「おめでとう!――タイミング見付けて他のキャラの誕生日も発表していこうかと思います。では、そろそろお別れのお時間です」


瑠「皆様いつも、本当にありがとうございます」


他の3人も『ありがとうございます』と…―


では、スタジオからはフルーツロール、瑠璃、霧滝、リアトリス、黒須からは右京、澄橋、川浜、明美、照でお送り致しました!
また、第七回と本編でお会い致しましょう!
ありがとうございました!


コメント

ログインするとコメントが投稿できます

まだコメントがありません