第十二回ブログで感謝企画🍫Valentine特別編💗②
*第十二回ブログで感謝企画🍫Valentine特別編①💗の続きです。下記からメインストーリーを再開致します。↓
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…―森の中を歩き続けながら、絵梨がため息をついた。『…スイーって、行きたいな…自転車とかで…』と。
すると、二人は顔を見合わせた。『やってみる?』『うん』と、そう話ながら…――
瑠「アイテム召喚、乗り物!出来れば自転車二台っ!!」
すると、もくもくもくっと途端、辺りは白いモヤに包まれた。『わっ何も見えない…!』と、そう騒ぎながら、二人は白いモヤが引いていくのを待った。すると次第に、モヤの中から、何かのシルエットが浮かび上がって見えてくる…――
瑠絵「ん??」
モヤの中へと、必死に目を凝らす二人…――
〝あのシルエットは…――〟
すると、モヤの中から〝ヒヒィィーン!!〟と、鳴き声が聞こえてきた。
瑠絵「へっ?!」
そして二人の目の前へと、金色の鬣を生やした一頭の黒馬が現れたのだった。
瑠「まさかこの子がっ?!」
絵「…この特徴、この子多分、スパイダーとバンパイアが動物園から連れ出してた子だよね…」
瑠「〝グルファクシ〟?!」
すると黒馬がヒヒィンと鳴いて頷いた。やはりどうやら本当にグルファクシのようである。
〝じ、自転車じゃなくて、馬が来た…〟
困惑しかない二人であった。
二人は困惑している。だがすると、先にオレンジ花リスとハートキャットが、嬉しそうに『チュチュ!!』『ミュゥミュゥ!!』と鳴きながら、グルファクシの背へと乗った。グルファも『ヒィンヒィン』と、快く鳴いている。――どうやら、動物たちはもう打ち解けたようである。
――そして動物たちの不思議そうな眼差しが、じっと瑠璃と絵梨を見つめた。彼と彼女らの瞳は言っている。〝で??アンタら乗らんの??〟と。
瑠「のっ乗ります…!」
絵「よろしくお願いします。グルファさん…」
――こうしてグルファクシの背に乗って、二人はペースを上げていくのだった。
すると【役目を果たしたなら、そのお馬くんは現実世界へと戻れるよ!】と、ゲームのアナウンスが入るのだった。…――どうやらそうらしい。
二人はグルファクシの背を乗りその背を優しく撫でながら、『呼んでしまってごめんね』『来てくれてありがとう…』と、そう話している。
――二人はグルファクシの背に乗って、どんどん森を進んで行った。
すると途中、何かの気配を感じ取ったかのように、グルファクシがピタリと足を止めた。グルファクシはじっと、真っ直ぐに森の闇の中を見ている…――
瑠璃と絵梨、二人に緊張が走る。ごくりと生唾を飲み込んだ…――
…――すると暗闇の中から、『きっきは手下たちが世話になったようで』と、そう話しながら、不気味に笑った男が歩いてきた。
瑠「っまさか、さっきの山賊たちの…――」
そして男の後ろには、やはり他の手下たちもいるようだ。
するとゲームのアナウンスが【山賊のお頭が現れた!!】と。
やはり手下を大勢連れたこの男が、山賊のボスのようだ。
二人はゴクリと生唾を飲み込んだ。
絵「逃げようよっ!」
【お頭を倒さないとクリア出来ません。本当に逃げますか?】
絵「っ逃げられないじゃん…」
〝まっまた戦うしかない…〟と、覚悟を決めて、二人はグルファクシの背から下りた。
瑠「グルファ、この子たちを連れて、下がっていて!」
不安げな顔をするオレンジ花リスとハートキャットをグルファクシに預けると、瑠璃と絵梨は山賊たちの前へと足を動かした。
瑠「よし!またライフルと爆弾を!」
【一度召喚して使ったアイテムは、既に現実世界へと戻っているよ!】
瑠絵「えぇ~?!」
〝また、レア武器出るまでゴミで戦えと?!〟と、先が思いやられる二人だった。
二人は顔を青くしている。――だが敵は待ってはくれない。ボスが『お前たち、やっちまえ!』と、手下たちに声をかける。
すると、武器を振り上げながら、手下たちが一気に襲い掛かってくるのだった…――!!
〝絶体絶命!!〟
瑠「え、何これ?!今さらだけどコレ、バレンタイン編だよね?!」
絵「っ…―そ、そうの筈…!クリスマスに引き続き…空気をまったく読まないブログ世界っ……」
瑠「プロローグっぽい辺りで、まともな恋愛ストーリーを期待していた皆に、どう謝ればっ…―!……」
絵「バレンタインキュンキュンストーリーを期待していた皆様、今回も…―〝謝罪致します〞!!」
チョコを届ける為に、女たちが死ぬ気で戦う回。正真正銘、熱い👊🔥バレンタイン編である。
瑠「フツーはこっちの〝熱い💑❤️〟じゃないのかな?!」
――さておき、ここを出てチョコを届ける為には、この迫りくる敵をどうにかしないといけないのだ。
瑠絵「おっお助けアイテム召喚っ…」
〝戦うしかないっ〟と、泣く泣くアイテム召喚をした二人だった。――さぁ何が出たかな?
【レア武器レベル2⭐️⭐️!番外編 Ⅲ より〝椿 弥生作・胸キュン逆ハー恋愛小説〞!!】
瑠絵「どう戦えと~?!」
困惑しながら取り敢えず小説を掴んだ。…――武器を振り上げながら、敵は迫り来る…――
――〝何か策でも書いてあるの?!〟と、そんな事を思いながら、パッと小説を開いた。すると…――
\パッパラパッパッパ~~ン!!🎺/
瑠「ぅわっ?!何何何?!いきなりやたらとめでたい感じの音楽流れ始めたぁ~?!」
【恋愛小説で女子力がUPしたよ!!魅力数値1→5!!】
〝だから何のゲームだよ?!〟と、口をあんぐりと開けてしまっている二人だった。
だがすると…――敵の何人かが、ハッとしたように、ピタリと足を止めた…――
「えっ?!すっすげぇ可愛い女の子たちじゃん!!」
「可哀想で、攻撃なんて出来ねぇよ!!」
「こんなこと、や~めた♪」
瑠絵「「………。……」」
〝そういう事かぁぁ~~?!〞
〝つまり、丸腰の女相手に掛かってくるクズばかりだと思っていたら、こっちの魅力数値が1だったからって事ですか?!〟
――こうして数人が『お頭!自分、女の子いじめられねぇッス!!』と言いながら、去って行ったのだった。
頭「ッ!!あの裏切り者共がぁ~!!…――くっ……だが、仕方がないか…――残ったお前たちで、コイツをやっちまえ!!」
「勿論ッス!お頭!!」
…―だが、敵はまだまだいる。二人は再び窮地に立たされた。〝またアイテムを…―〟と、思った、その時だった…――!!
\ランランラン♪ラランランラ~~ン♪/
瑠絵「「……もう、驚かないよ……」」
【レベルUP!!✴️助っ人スキル⭐️解放!!】
瑠「ん?!助っ人?!」
【〝助っ人召喚〟の掛け声で、ランダムで助っ人を召喚出来るよ!!助っ人として現れる人物は、何かしらキミたちと関わりのある人たちの中から、ランダムで選抜されるよ!!】
〝あっ、つまり、いつものランダムキャラくじ引き…〟
察している二人であった。
――その頃、黒幕非モテ男は画面の向こう側で高笑いしているのだった。『アッハハハハ!!だがそう、“助っ人は関わりある人物に限る”ってなぁ!!誰が出る?ひ弱な女友達かな??知り合いのお兄さん??フン!!男が出たって、相手は武器を持った山賊さぁぁー!!』と。
…―だがその頃、瑠璃と絵梨はと言うと〝何かしら、関わりのある人が出るって?!あっ!警察とか元暴走族とか裏社会の人とかっ…―私たち、強そうな知り合い結構多くないか?!やった!!強い人出ろ~~!!〟と、このスキルに大変喜んでいるようである。
――さぁ、誰が出るかな?…―
瑠絵「「助っ人召喚っ!」」
ランダムキャラくじ引き、発動である!!
\ランランラ~ン♪/
【鈴菜!!】
瑠絵「「ッ?!……」」
〝ちっ違うの…!!すっ鈴菜さんが嫌とかじゃなくてっ…あのつまり…――!!普通の女の子出ちゃったよって…そういう事でっ!!〟
――そして『え?!ここどこ?!』と目を丸くしている鈴菜が目の前へと現れた。因みに彼女の腕の中には、チョコレートを溶かしたボウルがある。そう、今日はバレンタイン。
瑠絵「ごめんなさいっ鈴菜さぁぁ~ん?!」
鈴「へ??」
〝彼女にもっ私たちと同じ思いをさせてしまうなんてっ…〟と、キュッと胸が苦しくなる二人だった。
――そして画面の向こう側ではやはり男が笑っている。『ホラなぁ!やっぱし女友達か!しかもこの女、チョコ作ってやがったな?!ちょうど良い!一緒にゲームの世界をさまよえ!!』と。
『かくかくしかじか……と、いう事でして…巻き込んでしまい、ごめんなさい…』と、謝る二人。
だが鈴菜は目をパチパチとさせた後に、ハッとしたように、顔を赤くして片手で口を押さえた。
鈴「っつまり今から私たち、ちっ力を合わせて戦うのね…!!そ、それって、それって…まさに美しい“友情”…!!」
瑠絵「「………」」
〝そうだった!?鈴菜さんって、“友達ほしい人”だった!!〟
鈴菜は溶けたチョコレートの入ったボウルを、地面へと置いた。
すると『チュチュ♪』『ミュゥミュゥ♪』と嬉しそうに鳴きながら、オレンジ花リスとハートキャットがチョコレートを舐め始めた。隣でグルファも穏やかな表情をしている。
――そして鈴菜は高らかに宣言するのだった。
鈴「彼との同意があれば、バレンタインなんていつだって出来るのよ!〝バレンタインデート〟って約束して、チョコ渡せば良いんだから!!」
絵「っ?!鈴菜さん、さすがです」
瑠「っ?!そうよね!事情を説明して分かってくれないようなバカな男となんて、付き合ってないつもりだし…!」
鈴「けどねぇ…――〝友情が芽生える瞬間のいうものはっ逃したならもう二度、来ないかもしれない〟のよー!!」
〝たっ確かにその通り?!〟と、納得してしまう瑠璃と絵梨。
そして鈴菜は画面の向こう側かと思われる斜め上の空中を、ビシッと指差した。
鈴「そこから見ているんでしょう!非モテ男ー!!アンタ彼女もいないけど、そんなんじゃどうせ友達もいないんでしょ!!」
するとまた、ズギシャッ!!と、空中で鋭い音が響いたのだった。言葉のナイフという名の攻撃である。
そして案の定、画面の向こう側で男は『ぅっ』と痛む胸を押さえているのだった。
瑠璃と絵梨は〝鈴菜さんやる~!!〟と、感心している。
…―だがやはり…――
鈴「さぁ!戦いましょう!友情の誓いにバトルを!えいっ!!食らえ!変な色のキノコ!!」
鈴菜はむしり取ったキノコを山賊に向かって投げた。すると、スパン!と、キノコは山賊の持っていた剣にぶつかり、真っ二つになったのだった。
鈴瑠絵「………。」
―ポトッと虚しく、切れたキノコが地面へと転がる。
…――するとギロりと、不機嫌な山賊の眼差しが三人へと向いた。
鈴瑠絵「キャャャー?!」
やはり鈴菜では、山賊に勝てっこないだろう。
―そして再び『お遊びは終わりだ!!』と、山賊たちが武器を片手に走ってくる――
『キャャ~?!』と、大絶叫しながら取り敢えず三人は走る…――
瑠「こっ今度こそ…!裏社会の人とかこい!助っ人召喚っ!!」
\ランダムキャラくじ引き発動!!/
\ランランラ~ン♪/
【シラー!!】
すると『あら、ここは一体どこですの?』と、そう首を傾げながらシラーが現れた。
鈴菜と絵梨は『へっ…おばあちゃん…』『こういう時に限って、男が出ない…』と、顔を青くしている。だが瑠璃が『…いや、シラー様…すごいよ…』と。『『へ??』』と鈴菜と絵梨。
「おい!何だババァ、怪我したくなかったらそこ退きなぁ!」
すると『…あら、何です?騒がしい…』と言いながら、瞳に鋭い光を宿したシラーが男たちの方へと振り返る。
シ「わたくしと、やり合いますか?…――」
瞬間、シラーはサッと、両袖の中から隠し持っていた暗器の刃を取り出した――
鈴絵「えぇ~?!」
そして二本の刃を華麗に操りながら、早々と山賊を二人程片付けてしまった。
絵梨も鈴菜も、他の山賊たちも皆、鳩が豆鉄砲を食らったようになり固まっているのだった。
瑠「さ、さすがシラー様…!」
シ「これはどういう事です?柴山さん。…――けれどまぁ、事情は後で聞きましょう。今は、この方々をどうにかするのが先のようですね」
鈴「おばあちゃんカッコいい!!」
『えぇ。わたしくに任せなさい』とシラー。だが…――
シ「ぅっ…―!!はっ……やはりだっダメですわ…!!…こっこれ以上交戦するとっ…こっ腰が…―いってしまいそうですわ…―はぅっ…―」
瑠絵鈴「シラー様ぁぁ~~?!」
〝やっぱりダメだったぁぁ~?!〟と、シラーをグルファクシの元へと避難された三人だった。
瑠「グルファ!シラー様をお願いね!」
「ヒィィン!」(任せろ!)
そしてシラーは座ったグルファクシの隣に寝転がりながら『もうわたしも、若くはないのですね…』などと、ポツリポツリと言っているのだった。
――振り出しに戻り、三人は再び、大絶叫しながら山賊から逃げ回っている。
〝というか何で?!バリバリ動ける青年出ろよ!?うちの男共、こういう時に当選しないで何やってんだよ?!〞
ランダムだから仕方がないが、三人に苛立ちが募るのだった。
瑠「三度目の正直っ!!バリバリ動ける青年っこ~い!!助っ人召~喚!!」
\ランダムキャラくじ引き発動!!/
\ランランラ~ン♪/
【翠玉!!】
〝敵じゃん?!あっけど、もしかしてこの人、戦える人??〞
すると『あれ??ここどこですかぁ~??黄玉さぁ~ん??皆ぁ~??』と、困り顔で翠玉がやって来た。
翠「え…うそ…また私、はぐれちゃった??…う~ん…けどいつの間に、森に迷ったんだっけなぁ…」
瑠絵鈴「………。」
〝え??この人、可笑しな世界に飛ばされた事に、気がついてない?!〟
『あ、あの…』と声をかけると、『わっ!!』と言って翠玉がバッと振り返った。
〝え?この人、私たちいることに気が付いてなかった?!この人大丈夫かなぁ?!〟
翠玉は『ん?誰??』と言いながら首を傾げている。
――だがその時『また可笑しな術で人を呼びやがったな!!』と、そう言いながら山賊が切りかかってきた。
四人はハッとする…――そして『キャャ~?!何ですかアナタたちはぁぁ~?!』と、叫びながらも翠玉が剣を抜いた…――
〝おぉぉ~!!〟と、思っている瑠璃と絵梨と鈴菜。そして翠玉は…――
翠「嫌ぁぁ~?!来ないでぇ~?!キャャャ~ー!!」
――と、泣きべそをかきながらも剣を振るい、ズギシャ!!ズギシャ!!ズギシャ!!と、山賊を倒している。
瑠絵鈴「おぉぉ~!!すごーい!!」
鈴「頼もし~い!」
瑠「気が楽になった~!」
絵「現実世界に戻ったなら、この人が敵なんて~!」
瑠絵鈴「〝気が重くなった~!〞」
…――そして数十分後、依然泣きべそをかいてはいるが、山賊のお頭以外を翠玉が全員倒したのだった。
〝おぉぉ~!!〞と、興奮気味でパチパチと拍手をする三人だった。そして翠玉は…――
翠「ぅっ…こ、怖かったぁ……」
と、言いながら裾で涙を拭っている…―が、地面へと伸びている山賊の手下たちに『お…お前がな…』と、ツッコミを入れられている。
――そして残る敵は、お頭ただ一人である。
キュッとしっかりと涙を拭うと、翠玉はサッと、お頭へと剣を向けた…――
翠「…――どうやら、アナタがこの人たちのリーダーのようですね。私と、勝負しますか?…――」
「…っ…――良いだろう。勝負してやろうじゃねぇか…小娘…―!」
翠「手加減はしません。アナタのようなリーダーは、一度痛い目に遭うことをオススメ致します」
『何だと小娘!』と山賊のお頭が声を荒らげる。…――すると、彼女の目尻に溜まっていた涙が、キラリと光って見えた――
翠「…―“アナタのようなリーダー”には言って良いでしょう。まったく好感が持てませんもの。手下たちが全員やられてしまうまで、アナタはそこで何をしていたんです?…」
『黙れ生意気な奴め!』と言いながら、山賊のお頭も剣を抜いた。
こうして勝負は一騎討に…――
――互いに剣を構えると、二人は駆け出した――
…――彼女の瞳は、しっかりと相手の剣を見切っていた――
――――――――――――――――――――
…―大違いですね。私の、好きな人とは――
――――――――――――――――――――
そして、サッと振るった刃が、標的をとらえた――
山賊のお頭は地面へと倒れ、そこに立っているのは翠玉である。
…―彼女は剣をおさめ、振り返った。
そこで見ていた三人と、順番に目が合う。
瑠璃と絵梨、鈴菜は『ありがとうございました』と…――。すると翠玉は、ふっと柔らかく口元を綻ばせたのだった…――
――こうして山賊の一味に勝利した瑠璃と絵梨は、動物たちと助っ人たち、皆と一緒にゴールである宝箱の元を目指した。
ゴールはもう、目と鼻の先だ。
…――そしてついに、宝箱を見付け、一同は足を急がせた。
…――宝箱を開くと、〝ゲームクリア〟の文字が表示される。
途端、彼女たちは目映い光に包まれた…―――
…――彼女たちは強い光から逃れるように、ギュッと強く目を瞑っていた。
だが次の瞬間、〝ドンッ!!ガシャン!!〞という凄い音が響き渡り、彼女たちはびっくりしてとじていた目をひらいた。
すると…―
瑠「へ?!ここどこ?!誰の家?!」
訳が分からずに、彼女たちはキョロキョロと部屋を見渡した。…―知らぬ部屋だ。だが、この部屋の雰囲気を見る限り、ここは“現実世界”だろう。
――すると彼女たちは、そこで口をあんぐりと開け固まっている、例の非モテ野郎の存在に気が付いた。どうしやらここは、現実世界の彼の家のようだ。
瑠璃と絵梨は男を指差しながら『あぁー~!!』と。
だがすると男も顔を青くして指差しながら『あ?!あぁ~!!』と。男が指差している方向は、瑠璃と絵梨を飛びこえた向こう側である。
『え?なになに?!』と言って、彼女たちは男の指差している方向を振り向いた。すると…―
「ヒヒィーーン!!」
一同「!!」
一緒にゲームの世界から帰ってきたグルファクシの前足の下に、無惨な姿に成り果てたテレビがある。
彼女たちは『グルファ、良くやった!』と。そして男は『なんて事を?!この馬っ…―』と言って、キッとグルファを睨みつける。…―だがすると、フンと鼻を鳴らしたグルファに、男はギロりと睨まれる。思わず怯む男。グルファは一声鳴くと、前足を振り上げた…――そして、ドン!!バキッ!!と、家の床を破壊した。
頭を抱えながら『あぁ~?!』と、更に顔を青くする男。
『なんてお利口なお馬くんなのかしら!』と、〝もっとやっちゃえー!!〞と思っている女たち。
鈴「グルちゃん!やっちゃえ!家電家電!全家電破壊の刑!!」
「ヒィーン!!」
バキーン!!グシャッ!!ドーン!!バキン!!
グルファクシにより全家電破壊の刑に処された男は、戦意を喪失し、床へと崩れたのだった…―〝成敗〞である。
瑠「これに懲りたらもう二度と、こんな事をしない事ね!」
絵「…――今回は特別に、警察にも元暴走族の友人たちにも突き出さずに済ませてあげます」
鈴「…―そうね。今回だけ特別に、裏組織の知り合いたちに突き出さずに済ませてあげるわ」
〝っ…―え、なんだコイツら?!そんなにヤバそうな知り合いがいる奴らだったのか…?〟と、男はまた顔を青くしている。
〝今回は突き出さずに済ませてあげる〟と、瑠璃、絵梨、鈴菜…――だが次の瞬間、彼女たちがニッと悪い顔で笑いながら、サッとシラーと翠玉を差し示した…――
瑠「…まぁ私たちが黙っていてあげても…――」
絵「……―裏の組織に属しているシラー様と翠玉さんに、アナタを許す気がなかったのなら…――」
鈴「私たちの慈悲なんて、何の意味なんてないけどね~?…――怖~い人たちに、怖~い事されちゃうかもね~?」
『ギャャ~~?!ごめんなさぁ~い?!』と、顔を真っ青にしながら頭を下げた男だった。
そしてシラーと翠玉はと言うと、何故かゲームの中から抜け出てきてしまっていた、オレンジ花リスとハートキャットをモフモフしていたところである…
『なんて可愛らしい!モフモフですね!』『連れて帰りたいわ!』と翠玉とシラー。そして笑顔で振り返り…――
シ「こんなクズ男でも、この子たちの生みの親なのですね」
翠「良いでしょう。今回は多めにみましょう。この子たちの生まれた世界を守る為にも、ゲームの作り手であるアナタは必要です」
――こうして、オレンジ花リスとハートキャットのお陰で命拾いをした男だった。
そして彼女たちは『っ…待ち合わせが!』『早く帰らないと…』と、そんな事を話しながら、この家を去る…――
瑠「じゃあね!キノコのデザイン微妙なくせに、モンスターのデザインは最高な非モテ男!」
「っおいお前たち、そっちは玄関じゃないぞ!」
一同「えっ??」
「ヒヒィーン!!」
―ドカーン!!
絵「あ、“玄関そっちじゃない”って教えてくれて、ありがとうございました」
鈴「けど、お気遣いなく!本当の玄関ではなくてもたった今……―!」
一同「グルファが前足で、玄関に変えてくれましたから!!」
『……もう本当にっ…早く帰って下さいっ…涙が止まりませんっ…』と、ズタズタになった我が家を前に、彼女たちを泣いて帰したがっている男であった。
…――彼女たちは急いで男の家を飛び出し、時計を見る。そして目を丸くした。
…――空を見上げて見ればそこには、駅の前までやって来た頃と同じ、徐々に暗くなり始めた空があった。
何時間もゲームの中にいた感覚は確かにあったのに、あの世界で過ごした時間は、現実世界の時間の中では、ごく僅かな時間だったのだろう…――
『…やった…間に合う』と、呆気取られながら、瑠璃と絵梨は顔を見合わせる。
すると鈴菜は『ならまた、チョコの材料買って帰ろうかな』と、皆に別れを告げると、近くのスーパーマーケットへと走って行った。
シラーはまず『グルちゃんのことは任せて下さい。部下に元の場所へと帰しておいてもらいますから』と。そして『…――バレンタインは本来、男性から女性に花を贈るのが主流なのです。…私も部下を呼び帰ります。あの人が何を用意してくれているのか、とても楽しみですもの』と、そう話して口元を綻ばせていた。
瑠璃と絵梨は〝部下が来るまでもう少し待つ〟と、そう話すシラーと、そして翠玉に別れを告げると、また駅を目指して走り始めた。…――バックに手を入れて、そこにちゃんとチョコレートがあるのを確認して、ワクワクと胸を踊らせながら…――
…――そして翠玉もシラーに『では…―』と、そう一声掛けると、足を動かし始める。
少し歩いた場所で彼女は一旦足を止めると、内ポケットから、ラッピングしたクッキーを取り出す…
じっとそれに視線を落としてから、彼女はため息混じりに、クッキーを内ポケットへと戻した…――
彼女の背中は、暗くなり始める街の中へと消えていったのだった…――
…――夜はこれから。今夜はバレンタイン。
好きな人へと、形にした愛を、伝える日――
…――どうか今夜は、いつも伝えきれない私のこの気持ちが、アナタへと全て、余すことなく、伝わりますように…―――
♡――【Valentine特別編・end🍫❤️】――♡
ありがとうございました。ではまた、第十三回と本編でお会い致しましょう✨
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