第十三回ブログで感謝企画🌸春のスペシャル版🌠③
第十三回ブログで感謝企画🌸春のスペシャル版🌠②の続きです。
【前回のあらすじ】
敵対する両者男四人組の体と精神が入れ替わった。互いにリスクはあるが、これで敵側の情報を盗み放題か?!…――と、思いきや、彼らは入り替わり状態のまま、ただワチャワチャと騒いでいるだけである。――さぁ、一体どうなる?!
―――――*
――入れ替わり二日目の朝、雪哉たちの体で過ごす灰簾たちの話である。
…――そう、また事件が起きた。“入れ替わり”以上の事件はないとしても、それは灰簾にとってちょっとした事件であった。例え黄玉には、鼻で笑われる程度の事であったとしても…――
黄玉は鼻で笑っている。黒曜は二人を見守っている。灰簾と瑪瑙が、しょうもないやり取りをしていたのだ…――
一体どうしたと言うのか、灰簾が瑪瑙を正座で座らせて、瑪瑙のほっぺを両手掴んでぐるぐるとしながら話をしている…――
灰「おいコラ、メェ!お前なにやってんの?!昨日のレバニラに引き続き、何でお前、オレが雪哉の異性関係に片をつけてるうちに、オレの分まで食っちまうの?!お前バカなの?!オレがまだ食ってないの、流石に気が付いていたよな?!昨日も今日も!!」
瑪「ごめんなさぁ~い…違うんだよ~……原因、陽介の体なんだよ~……コイツの胃袋、底無しなんだよ~…大食いなの~……痩せの大食いなの~……気が付いたら全部食ってんの~……ホントに~……」
灰「胃袋底無しでも人の分まで食うか食わないかって、そこはモラルだろうが?!お前バカなのメェ~?!オレがお前を昨日“羊”と呼んだ優しさ、気が付いてね~の?!“ジンギスカン”って呼んでやろーか?!違いが分かるかコラ?!“羊”は生きてんの!“ジンギスカン”は料理なの!死んでんの!分かるか?!メェ!?」
依然黄玉が鼻で笑っている中、黒曜はぅっと涙ぐみながら両手で顔を覆っている。〝メェくんをジンギスカンだなんて呼ばないでっ…!…〟と。
瑪「だってレン、ずっと電話してるんだもん…!…レンがさっさと食わないせいで、こっちはずっ~と食いもん見せびらかされてたんだぞっ……!先に残酷なことをしたのはレンなんだ……!こっちはいきなりすげぇ大食いになっちゃって困ってたのに!レンが食わないから食った!それだけ~!」
灰「だからモラルの問題だぞ!?オレは悲しかったぜ!何で一人で食っちまえるんだよっ!ガキの頃からトマトとブロッコリーのトレードしてた仲だろうっ!お前がオレの分まで食っちまったら一緒に食えねーじゃんっ!!お前はそれでいいのかよっ!!信じてたのにっ!!ジンギスカンにしてやるっ…!……」
瑪「っっ…――?!」
『いや灰簾アイツ、本音出たぞ…』とまた黄玉が鼻で笑っている。〝何だかんだアイツ、オレら幼馴染みたちのこと大好きだよな~〟と思いながら。そして黒曜は『レンくん信じてたよ!!…』と。…――たが灰簾は『馬鹿羊野郎!信じてたのに!ジンギスカンにしてやる!』と。そして瑪瑙は『ぅっ…オレが馬鹿だったよっ…この身を持って償います。そう、ジンギスカンにっ…!…』と。『メェーくんッダメッーー!!』と黒曜が止めに入るのだった。そして『ちょっダメダメッ…!二人とも離れてっ…!』と。
黒「落ち着くんだ!大丈夫!…――今度からオレが、ちゃん“七人前”くらい作ってあげるから!!」
瑪「コク!!え?オレジンギスカンにならなくても大丈夫そう?!」
黒「当たり前だろう?!」
灰「なんだ“七人前作る”って、その手があったか!……―友情を裏切られ続けるならもういっそ、食ってしまうしかないと…―そう思い詰めていた思考が馬鹿みたいだぜ!!」
〝瑪瑙も灰簾も、コイツらが言うと冗談に聞こえねーんだよっ……!!怖ぇ~よ!!〟と、内心思っている黒曜だった。
…――これが今朝の入れ替わり雨神日本支部、MEN'S 組を震撼させた、ジンギスカン事件であった。
底無しの胃袋を持つ陽介と入れ替わった瑪瑙が、衝動のままに灰簾の分まで食べてしまったのが事の発端である。
入れ替わり初日に引き続き、入れ替わった他人の体に翻弄されている彼らである。
…――それはちょうど、瑪瑙と入れ替わっている陽介が『瑪瑙の体だと食費浮くわ~。浮いた金で何か買えるじゃん!!ラッキ~!!』と、ご機嫌でルンルンとしていた頃の話であった。
――そしてこのまま、お次は瑪瑙たちの体で過ごす、陽介たちの話である。
…――そう、瑪瑙の体だから“食費が浮いた”。
そうしてご機嫌で、陽介は雪哉の肩を叩いた。雪哉が振り向くと、陽介はこの入れ替わり期間中に浮いた食費から捻出した五千円札をペラリと見せる。この短い期間に、既に五千円分も浮いたらしい。
…――すると声を潜めながら陽介は雪哉に『煩悩との戦いどう~?』と。雪哉は『もう戦いなんて止めてぇ』と。すると陽介が五千円札をペラペラとさせながら『紙媒体探しに行っちゃう?…――』と。雪哉はハッとして目を丸くした。再びハッとして、少し離れた場所で話をしている純と聖を見る。そしてまた、陽介へと視線を戻す。二人は声を潜めながら話す…――
雪「ほらオレら四人、“煩悩と戦う宣言”しちまったじゃん?!純と聖どうする?!一声かけるか?!…――いやあの二人さぁ、案外やる気なら煩悩と戦えちまう感じじゃん?…―」
陽「…いやそうなんだよ…!!純と聖は案外戦うつもりなら戦えちまう奴らなんだよっ!!……あのさぁ、何つーかさぁ、オレとユキ、純と聖じゃ~……元々体ん中にいる仙人の数が違ぇんだよっ……!!ユキ、オレの言ってること、分かってくれるか?!」
雪「分かる分かるっ!!聖と純の中には元から煩悩と戦う為に仙人30人くらい住んでんのっ!!いやホントそうだ!!ホントそうだと思うぜっ!!そんでもってアイツらは煩悩と戦うモードになると、仙人更に20人くらい越して来んのっ!!けどオレらん中には越して来ねぇーのっ!!」
陽「そうそうそう!!ホントそうだぜ!!だってオレらん中にはさぁ元々仙人2、3人くらいしかいない訳じゃん?!オレらが“煩悩と戦うモード”になって必死に他の仙人呼ぶじゃん?!…――アイツら、来ねぇんだよっ!!元々が2、3人しか住んでねぇから住み心地悪ぃんだろうな~!ホント呼んでも参上しねーのっ!!」
〝つまりこれって~?…――〞
雪陽「「煩悩と戦わなくてもいい星の生まれ!!」」
パン!!と互いに掌を叩き合って、ご機嫌の二人である。
――因みに小声で話しているつもりだが、純と聖に丸聞こえである。純は鼻で笑っている。聖はやや複雑な心情で二人を観察している。
…――だがこの後、事件が起こったのだ…―
〝今日こそ煩悩に従うぞ!!〟と、陽介は『もう瑪瑙と灰簾の体だからって、遠慮なんてしねーもんなぁ~!!なぁ~?ユキ~?』と、笑顔でポンと雪哉の肩を叩く。…―だが陽介は『ん?』と言って、目を丸くした…――。何故か雪哉の目が、めちゃくちゃ泳いでいる。『んー?ユキ~?』と言って、目を合わせようとする。だが雪哉は目を合わせないように必死である。明らかに…――〝怪しい〟…――
陽介はハッとして顔を青くした。〝まさかっ…〟と、陽介はショックで後退りをする…――
陽「まさかっまさかユキッ…――抜け駆けしたか?!ひ、酷いっ…オレはこうしてちゃんと、ユキに声をかけたのにっ…――!!」
雪「っ!?そ、そんなっ…―抜け駆けだなんてっ…――陽介っ…――だって数えてみろよっ!お前さっき〝オレらん中には仙人2、3人〟って言ったよなぁ?!オレの仙人2人っ…!お前3人っ…―!!お前の方が1人多かっただけじゃん?!それを抜け駆けだなんてっ…――酷ぇ!!…」
陽「いや2、3人って言ったら“同じ括りだと思ったから”2、3人って言ったんだっ!!1人の差をどうするかって…――そこはモラルモラル!!モラル次第でどうにか出来るっ!!…―オレは悲しいぜユキ!!ガキの頃、互いに人生初だったエ◯本一緒に開いた事忘れたのかよ?!“入れ替わって他人の体だけど煩悩満たしますか?”って、あの時の◯ロ本さながらの感覚で、お前との思い出に浸っていたのは、オレだけだったのかよ?!」
雪「っっ…――?!……」
すると『ユキの馬鹿野郎っ!!』と言いながら、陽介が雪哉のほっぺを掴んでぐるぐるし始める。『痛い痛い痛いっ?!え?!なに陽介?!今までこんな事、一度もしなかったよな?!』『いやオレも分からねぇや!!ただ何だかオレの体、今ユキの体にこうやられてる気がするっ!!お返しだっコノ野郎っ!!』『いや知らねーよ?!そんな事をしているのは誰だ?!灰簾か?!』『誰がジンギスカンだコラ?!』『何の話してんの?!』と、二人で陽介と雪哉はバタバタとしているのだった。
…――するとそこに『止せ止せ止せ。離れろ』と言いながら、聖が止めに入った。陽介と雪哉は『なんだよ聖?!』『お前が止めに入るなんて珍しいな?!』と。
聖「まぁまぁまぁ。オレら四人、友だちだろ~?仲良くしようぜ~。事情は良く分かった。…――あのさぁ、仙人参上させて住みつかせるのは大変なわけ!けど追い出すのは簡単なわけ!だってオレも純も、男だから!」
陽雪「「ひっ聖っまさか?!」」
すると聖がキメ顔で『逆にオレと純が、合わせてやるぜ!な、純!』と。すると純は頬杖をつきながら、一度鼻で笑った。だが『仕方ねぇなぁ』と。
そして聖は陽介に『だからもう良くね?怒んなって。雪哉の抜け駆けなんて、珍しい話でもねぇよ』と。ご最もである。
――これが今朝の入れ替わりブラック オーシャン、四人組を震撼させた、オレの仙人の方が1人少かった事件である。
“他人の体だから煩悩と戦い遠慮しよう”と誓い合った仲でありながら、いち早く1人、雪哉が抜け駆けしていた事が発覚したという事件であった。
――さておき四人は『コンビニからエ◯本が消えた、こんな浪漫に欠けた時代だぜ…』と、苦笑しながら、仕方なく本屋を目指すのだった。
そして書店の中〝さぁ、あのカーテンの向こう側が大人のコーナーだぜ!!〟と、他人の体であるのを良いことに、随分と軽い足取りである。
…――だがその時、書店の棚の先の方で、一人の女性がそわそわとしながらこちらを見ている事に気が付いた。
〝何で見んの?!自由じゃね?!コーナーがあるって事は買っても良いんですよ?!お姉さん?! 見ないでくれっ!!〟と、思いながら、四人はピタリと足を止めた。
〝いやいやいや、さすがにチラチラ見られたら、こっちだってコーナーに入りずれぇの!〟と思いながら…――
だがそんな事を思っていると、何故かそろそろと、女性がこちらへとやって来た。そして女性はどこか気まずそうにしながら『…あの…久し…ぶり……』と。
四人は〝へっ?!〟と目を丸くしている。〝し、知り合いかよ?!ぅわっ柘榴に続き、タイミング悪~?!今度は誰~?!〟と。
〝誰っ?!〟と思っている四人。だが次の瞬間、陽介は感じた。〝ぅわ~?!きた~?!瑪瑙の胸にまた7と4突き刺さっとるぅ~?!この人、絶対ぇ琥珀だぁぁ~?!〟と。
――そう、彼女は琥珀である。
すると陽介は他の三人の方に振り返り小声で『マズイマズイマズイッこの人、絶対ぇ瑪瑙の大切な人っ…カーテンの向こうなんて行けね~…!!…』と。
〝えぇ~…ここまで来てソレかよぉ~…〟と、ガックシと肩を落とす他の三人だった。
柘榴と言い琥珀と言い、まるで〝ちょっとアンタたち!!私たちの幼馴染みを汚さないでくれない?!〟と、そう言っているかのような素晴らしいタイミングの乱入である。完璧だ。
…――取り敢えず琥珀は、この体の持ち主たちの知り合いなのだ。こちらもそのように振る舞わなくていけないだろう。
四人は『よう、久しぶり~』『元気してたか~?』と、〝自然に自然に〟と心掛けながら柔らかい笑顔で対応する。
…――すると笑顔に安心したのか、琥珀の表情はいくらか柔らかくなったように見えた。そして琥珀は『うん。久しぶりだね。…――』と。だがこの後、四人にピンチが訪れるのだった…――
琥「四人で本屋にいるなんて、珍しいわね。何の本を探しているの?」
四人「っ?!」
〝それ聞かないでぇ~~?!〞
四人が引き吊った顔をしていると、琥珀は不思議そうに『ん?』と。
雪哉がチラッとカーテンの方を見た。〝まさかっコイツ白状するつもりか?!〟と、バッと雪哉を見る他の三人。
すると雪哉が『あぁ、コーナーの場所見て、気が付かない?』と。琥珀が『コーナーの…―』と…――
だがそこで陽介が『ぁあー!!違うから!!コーナーってぇこっちぃ~!!』と言いながら、クルリと華麗に立ち位置を変え、カーテンの前から他のコーナーの前へと移った。
聖がシレッとしながら『そんな大袈裟な~』と。
〝いやコイツらの沽券に関わるぜ?!テメェら無責任な顔してんじゃねーよぉ~?!〟と、必死な陽介である。
瑪瑙の体から陽介に伝わってくる危機感が、他の三人よりも強いのか何なのか、とにかく陽介が必死だ。
〝瑪瑙の沽券はオレが守るぜ!!〟と…―エ◯本買いに来た時点で、物凄く今更な話である。
――そして琥珀は、クルリと華麗にターンをし立ち位置を変えた陽介…――と言うよりは瑪瑙を見ながら、ポカンとしながら目を丸くしている。〝え…瑪瑙、お、踊ってる??…〟と不思議に思いながら。既に瑪瑙の沽券が危うい。
さておき話は戻り、『何の本を』と。すると陽介が…――
陽「あぁ~煩悩とぉ戦おうと思って~……」
〝コイツ咄嗟に、事実と反対の事を言いやがったぁぁ~~?!〞と、雪哉、聖、純は鳩が豆鉄砲を食らったようになりながら固まっている。
琥「煩悩と?えっと…煩悩とぉ…戦う為の本って?…」
雪純聖「ッ?!」
陽「ッ?!シャッ…〝写経〞のほーんッッ!!」
雪純聖「しゃ写経~?!」
雪哉も純も聖も琥珀も、目を丸くしている。…――だがその時、本当に四人の目に〝写経の本〞が飛び込んできた。
まさに華麗にターンした陽介の立ち位置の前、エ◯本コーナー入り口のカーテンの隣のコーナーこそ、〝神仏仏のコーナー〟。…―それはまさに、カーテンの向こうへと誘われていきそうになる男共を引き止める為の、最後の救いかのように…――
〝ホラ見ろッ?!仏様はオレらを見捨ててなかったぁ~?!コーナーの位置決めた店員Niceー!!…な、反面、嫌味すぎるだろーがぁ?!なんだこの配置はぁ?!エ◯本売ってるくせにコレはねぇーだろうがぁ~?!〟
――さておき陽介は、サッと写経の本を手に取り開く。写経するべくお経の文字の羅列が本の中に広がっている。正直漢字ばかりでサッパリ分からんと言うのが本音だろう。
そして陽介は何を思ったか、勝手なイメージの瑪瑙を演じつつ、格好つけたポーズをキメながら『琥珀、写経をするオレなんて、どうかな?…――』と、勝手な事を聞き始める。
琥珀はふっと表情を消し去ると『写経…』と、どこか遠い目をしながら呟いた。
陽介が勝手に瑪瑙を演じて必要のない事を話し始めたものだから、雪哉と純と聖はヒヤヒヤとしている。〝琥珀の表情も消えたしっ大丈夫かよ?!〟と。…――だがそんな事を思っていると、何か深い悩みでもあったのか何なのか、琥珀はボソッと『写経、悪くないかもしれない…』と。〝意外な返答だったぁ?!〟と雪哉たち三人は琥珀を二度見している。そして陽介もハッとしている。
…――だが安堵と共に、ある不安が湧き上がる。
〝写経、悪くない〟と、世の煩悩と戦うモード強めの琥珀に、本当はカーテンの向こうに用があったなど、そんな事がバレたら一大事である。失望される事間違いなし。
四人は決意する。〝このまま写経の本買いに来た人たち演じるぞ!!〟と。嘘は罪である。彼らは写経した方がいいだろう。だがさておき〝決意した〟。
…――だがその時、一体いつから後をつけて来ていたのか『琥珀っ騙されちゃダメ!!』と言いながら、マスクと帽子、だて眼鏡をかけた柘榴が飛び出して来た。絶体絶命である。
柘「騙されちゃダメ!!ソイツらはカーテンの向こう側に用があった偽物よ!!中身が私たちの幼馴染みじゃない!!」
陽雪純聖「えぇ~ー?!」
〝エ◯本買いに来た事がバレると思ってビビっていたら、何だかもっと、いろいろスゲェ事までバレていた?!〟
琥珀は『カーテンの?』と言って、今始めて、カーテンの向こう側のコーナーが、何なのかに気が付いたようである。
すると琥珀まで『ッ?!偽物!!私たちの幼馴染みはエ◯本なんて開かないもんっ!!』と。
〝いやいやどんな理想と決め付けだよ?!エ◯本に興味のねぇ男なんて、いるわけねぇだろう?!〟と、衝撃を受けている四人。
そして〝キミたち!そう言って幼馴染みたちを“女の理想”と言う箱に閉じ込めようとするんじゃない!不自由で可哀想だろうが~!!まさかっ灰簾のパソコンにエ◯動画の履歴がないのは、キミたちのせいなのでは?!〟と。
〝偽物!!〟と言われ『いやそんな訳ねぇじゃん…!!姉ちゃん何言ってんだよ!』と雪哉。
これには琥珀も〝灰簾が柘榴を姉ちゃんって?!冗談抜きで可笑しい!そもそも黒曜がスッピンで出歩く訳がないし、黄玉まで含めて四人一緒にカーテンの向こうとかないよ!〟と。そして琥珀は振り向いて、じっと陽介を見る…――そして〝瑪瑙だけど…瑪瑙じゃ、ない…〟と、やはり何か違うと感じるものがあるらしい。
琥珀は目を丸くしながら柘榴に『…え、これ真面目に…中身、違う人じゃないの?…』と。柘榴も『絶っ体!何か可笑しい!』と。『いやいやそんなっ』と誤魔化そうとする四人。
柘「なら自分の本名、言える?!」
陽「めのりん!」
雪「レンレン!」
聖「こく之すけ!」
純「おう之じょう!」
柘琥「違うわっ!」
陽「めのたんっ!」
雪「カイくんっ!」
聖「こっくんっ!」
純「おうじろうっ!」
陽「てかユキはサリナさんが唯吹くんって言ってたじゃん!!」
雪「そうだったぁ~?!はい!唯吹ですっっ!!」
柘琥「……。」
〝ホント誰ぇ~?!〟と、柘榴と琥珀が放心状態である。そして二人はサッと顔色を悪くし、四人から一歩後退りする。
柘「煩悩のお化けっ?!」
琥「あ、悪霊っ?!」
柘琥「「悪霊にっ憑依されてるぅ~~?!」」
〝誰が悪霊だ?!コラぁぁ~~?!〟
柘榴と琥珀から憑依している悪霊扱いされている四人であった。そして四人は思っている。〝はいはいはいっ向こうでは逆に、お前たちの幼馴染みが悪霊扱いされてますよ~だっ!!絶対にそうだぁ~!!オレたちだけが悪霊扱いなんてっっ認めねぇぞ~~!!〟と。
――そしてその頃あちらでは、街で瑠璃と雪哉の体の灰簾が、バッタリと会った所であった。
瑠璃は当然雪哉だと思いながら、何やら灰簾に洋菓子店のビラに記載された地図を見せていた。因みにもちろん灰簾も、テキトーに瑠璃の知り合いである雪哉を演じていた。
瑠「オープンしたばっかしの店で、スマホで検索してもまだマップが出ないんだよね~。ビラの地図頼りに来たのに、何だか店が見つからないの…」
〝ほら、ココ。雪哉場所分かるー?〟と言ったように、瑠璃は地図を指差した。灰簾は瑠璃の持っている地図を覗き込む…――。
だがそこで瑠璃はある事を思い出し、ハッとした。〝あっ?!雪哉に聞いてもムダだっ!雪哉って毎回地図を、古代文字の石板でも眺めているかのような顔で眺めた挙げ句、結局地図を読めずに迷うような奴だったぁ!?マッマズイッ聞いてしまったっ…―!訳の分からない道に案内されてしまうぅ~…〟
瑠「あっ?!やっぱり…いいや!大丈夫!自分で探すよっ…!!」
〝変な道に案内される前にサヨナラしないとっ〟と、瑠璃は焦っていた。だが…――
灰「これ一本向こう」
瑠「あ…そっち、最初に行ったんだよね…」
灰「いやけど、絶対一本向こうだから。きっと見落としたんだろう」
瑠「ッッ?!」
〝何だか今日の雪哉、説得力が…ある?!え、え、え?!これはまさかっ…今日は信じて大丈夫なパターン?!〟
そして灰簾は瑠璃の手からビラを取り上げると『ほらコッチ。仕方ねぇなぁ~。オレが案内してやるよ。まったく、ドイツもコイツも迷子の羊かって…』と、牧羊犬の腕が鳴ると言ったところである。嫌味な言葉は吐くが、やはりこれも結局、スーパーボランティア活動だ。
――〝今日の雪哉は何か違う!〟と、雪哉を信じて瑠璃は灰簾についていく。すると…――
灰「ほら、あった。手前の店の看板に隠れて、見つけにくかっただけじゃねぇかよ」
瑠「っ?!あ、ホントだ?!ありがとう!」
するとまた灰簾が『まったく』と。
瑠璃は思っていた。〝偉そうな態度はいつも通りなんだよなぁ…けど、間違ってないから“ありがとう”しか言えないや~〟と。
…――その時『あ、レンいた!』と言いながら、瑪瑙と黒曜と黄玉が先の道からやって来る。
瑠璃は『あ!陽介、聖、純!』と。
すると瑠璃を見ながら、瑪瑙が『あっ!!』と。そして瑠璃に向かってブンブンと大きく手を振りながら、笑顔で走ってくる。
瑪「瑠ぅ璃ぃ~~!!この間どうもー!!なんかいろいろ、ごめんねー!!」
瑠「あ!陽介!え?何の事だっけぇ?…――う~ん。まぁ、いいか!」
『陽介~!』と言いながら、瑠璃もブンブンと大きく手を振り返している。今のところ、違和感なく瑪瑙が陽介である。瑠璃もまったく不審がっていない。
こうして瑠璃の前に、笑顔で瑪瑙がやって来た。そして彼は何を思ったか…――
瑪「瑠璃、オレオレ!!ホント紛らわしくてごめんな~。オレ瑪瑙瑪瑙!!」
〝コイツ何で白状してんの~?!〟と、目を丸くしながら固まっている灰簾、黒曜、黄玉である。三人はヒヤヒヤとしながら瑠璃の様子を伺う…――だがすると、次の瞬間、瑠璃が可笑しそうに笑い始めた。
瑠「その話よく覚えてたね~!去年のGWに私と絵梨が可笑しな世界に迷い込んで、ソコの世界では〝陽介が瑪瑙〟で〝雪哉が灰簾〟で〝聖が黒曜〟で〝純が黄玉〟だったって、その話の事だよねぇ?もう冗談は止めてよ~(笑)GWにはまだちょっと早いから~!(笑)」
〝何だその世界?!笑い話じゃねぇ~よ?!今年は入れ替わってる!入れ替わってる!4月5月GW怖っ!!〟と、灰簾と黒曜と黄玉は顔色を悪くしている。
瑪「いやオレさぁ、〝瑪瑙〟なんだよねぇ~…」
〝だから何でお前は白状してるの?!〟と三人。
そしてやはり瑠璃は可笑しそうに笑っている。冗談に乗ったつもりで『瑪瑙さん!』と。すると笑顔で瑪瑙が『“この後どうする”!?』と。
瑠「ソレ朔が〝デート誘われたみたいな顔してんな。違ぇからっ〟みたいに言ってきた時のやつ~!!」
瑠璃はそのまま『アハハハハ~♪』と言って笑っている。冗談みたいな乗りで少しハイになっていた彼女は、気が付いていないのだった。そもそもその話、〝陽介との出来事ではなくて、瑪瑙との出来事〟であるのだと。
瑪瑙は〝オレだって気が付いてくれないなぁ…〟と。続いて『ラピス?』と呼んでみる。だが瑠璃は『え!陽介詳しいね~!そう、瑠璃ってラピスラズリの和名と一緒なの!』と。〝やはり気が付いてくれない〟と、シュンとしながらまた『この後どうする…』と。すると瑠璃が例の洋菓子店を指差した。
瑠「ここカフェもやってるんだって!皆でお茶でもする?」
瑪「えぇ?!オレ陽介くんじゃなくて瑪瑙だけどOK?ま、まさかっ好きとか?!うわ~中身瑪瑙でごめ~ん…」
瑠「もう冗談は止して!私彼氏いるじゃん?陽介、瑪瑙ネタはもういいから!瑪瑙はもういい!」
〝瑪瑙はもういいって言われた~〟と、シュンとしながら灰簾、黒曜、黄玉へと振り返る瑪瑙だった。
――こうして、瑠璃とお茶をすることになった入れ替わり雨神四人組。さぁ瑠璃は気が付くのか?④に続く!!④は4/8中には公開予定!
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