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日本、平安時代と似た、少し異なる世界。
和歌や琴、物語など宮中で生きる者にとって必要な教養は数多くある。その中でも、『香』は特に重視されている。それは時に政治をも動かすほどの力を持っていた。
香を術として扱う者を、香術師と呼ぶ。春・夏・秋・冬・雑(季節問わずの意。二つ存在する)の、それぞれの季節を司る小さな
彼女たちは陰陽寮の所属でありながら、女官として中宮に仕えている。
宮中の多くの女性がそうであるように、香術師も本名を名乗ることはない。季節を司る役職名があり、それを名乗る決まりとなっている。
また、香術師は、各々得意とする香道具があり、それが仕事道具となる。
春の神使と契約し、役職名を梅花、香道具は扇子とする彼女は、幼い頃から憧れていた香術師になることができ、期待に胸を膨らませていた。
定期的に行われる香の会の中で、大臣から帝の言葉を伝えられる。
「隠されたる香を作り出すことが香術師の使命である」
初代香術師が作ったとされる、幻の香のことで、それを作れば宮中で一番の香術師となる。梅花は、それを目標にしようとするが、会の終わり、謎の人物に隠されたる香は決して作ってはならないと忠告される。
中宮の元へ出仕し、香術師として忙しく充実した日々を過ごす。ある日、梅花への指名の依頼が舞い込んだ。人を探したいという希望で、一度は失敗したかに見えたが、探し人は梅花自身のことだった。その依頼者は、香術師になるために振った元婚約者、
仕事にも慣れてきた頃、不眠症ならぬ、睡眠過多の者が増えているという噂を耳にする。調査をすることになった梅花は、調べていくうちに荷葉が関わっているのではないかと思い始める。荷葉になぜ香術師になったのか、と尋ねると「ある人に逢うため」と返される。
ある人とは、復讐相手のことで、殺したいほど憎かったが、踏みとどまり、香で一か月眠り続けさせることで、復讐とした。梅花は荷葉の強い思いに触れ、この事実を胸の中にしまった。
ある朝、菊花が宮中から姿を消した。他にも数人が行方不明になっていて、前日の夜に物の怪の目撃情報もあったことから、物の怪に攫われたと騒ぎになった。
菊花の行方を探しているうちに、部屋の日記に物の怪の幻覚を使って、下働きをしている家族を宮中から出すという計画が書かれているのを見つける。しかし、いくつかの違和感から菊花自身も予想外のことが起きていると考え、朔たち陰陽寮職員の物の怪退治に同行する。物の怪に取り込まれてしまった菊花を何とか助け出す。
その後、物の怪騒動をきっかけに、宮中最大の事件が起こる。