物語全体のあらすじ




 その昔、神獣・白龍はくりゅうから地のことわりを書き換える力を授けられ、十余国を従えて一つの国と成した聖王。神国『天游てんゆう』では、その開闢かいびゃくの祖を持つ子孫が二百年の時を経た今も、神通力の威容をもって人々を害する魔獣や他国に抗し国を治めていた。


 天游に生きる主人公・白蓮はくれんは、七階位ある貴族のうち第四階位に属する蔡家さいけの姫であったが、片目の傷と背中の火傷痕のせいで高位貴族の妻になれるはずもなく、出来損ないとして父・子禅しぜんから見放されていた。生活が立ち行かなくなり、顔の傷のために侍女として雇われる事も出来ない白蓮は、生き延びるため男の姿に身をやつして『龍禅りゅうぜん』と名を改め、官吏登用試験・神試しんしを受験し見事合格。


 希望通りの閑職・書院番の地位を手に入れた龍禅は、好きな書物と頼れる上司・鄭曹克ていそうこくと共に心穏やかな日々を過ごしていたが、この国の頂点である聖王に見初められ、その側付きに任じられてしまう。聖王が男色家だと言う噂を思い出した龍禅は、身の危険を感じて思わず自分が女である事を明かしてしまい、それがきっかけで聖王が女性恐怖症であると言う、王として致命的な秘密を握る事になる。


 宰相・はく耀ようの取引に乗り、秘密と引き換えに聖王直属の中書省ちゅうしょしょうで見習いとして働く事になった龍禅は、聖王・劉蒼幻りゅうそうげんと少しずつ距離を縮めて行き、冷酷無比と囁かれ現人神あらひとがみとして君臨する彼が、聖王の立場を重荷に感じ日々悩み苦しみながら政務に臨んでいる事を知る。龍禅は知らなかったが、蒼幻は本来聖王が持つべき神通力を扱う事が出来ず、常にそれが露見する危険性と背中合わせに生きて来た。その神通力を何故か龍禅が引き出してしまった事で、蒼幻達は彼女が何者なのか探りながらも秘密裏に守ろうとする。


 そうした蒼幻達の監視の目をくぐり、龍禅は何者かにさらわれてしまう。蒼幻は幼い頃から龍禅を守護してきた幼龍・白焔はくえんに導かれ、龍禅の居所が宮中に存在する半治外法権の大神殿である事を突き止める。蒼幻を待ち受けていた大神官によって、秘され続けた真実が明かされる。この国の暗部に触れ、自らの本当の出自と秘められた力を知ってしまった龍禅は、更なる陰謀と混沌の渦に巻き込まれて行く。


 男装少女が過去と思惑の交錯する男社会を駆け抜ける、本格中華ファンタジー。