いないはずの君がいる世界

作者AKIO

 世界が改変されていく現在ファンタジー。


 ある日、瀬尾新が夢から目覚めると、いるはずのない妹・瀬尾千華子が家族の一員として暮らしていた。千華子と名乗る妹を母親は当然の様に受け入れていた。二人の反応から、自分がおかしくなってしまったのはだと判断した新は記憶喪失ジョークで妹に接するという妙案を思いつき、妹の情報を引き出していく。


 同じ頃、通学中の真辺麻奈美は世界が改変されたことに気がついた。教室に到着すると千華子に話しかけられて、今まで存在しなかった千華子を改変の関係者だと確信し彼女の観察を始める。


 千華子には兄がおりその兄が、改変の鍵を握っていると睨んだ真辺は千華子の家に招待してもらう。その兄に家まで車で送ってもらうことで二人きりになれた真辺は新に尋ねた。


「お兄さんは妹さんの記憶、どれくらいありますか?」


 困惑している新に真辺は改変とは何かを語り始める。一人の人間の後悔をなかったことにした世界・・・・・・それが妹である千華子の存在する改変後の世界。今回の改変の媒体となったのが新であり、過去の後悔によって失われたはずの命が千華子。


 そして、現在、媒体となっている新と過去に媒体となった人間以外の記憶は改変後の正解に不都合が生じないように書き換えられてしまう。つまり、真辺は過去に改変の媒体となった人物だった。こうした情報はすべて彼女の実体験と情報サイト『箱庭』から得たものだと説明される。


 情報サイト『箱庭』には改変の媒体となった者たちからの悲痛な叫びが投稿されていた。どの投稿にも最初は大切な人が蘇った喜びが記されているが、その後は死神に追われる日々、そして最後には必ずその人を再び亡くしてしまった悲しみが綴られていた。


「死神は蘇った人の死因となった者のこと。世界を元の形に戻そうと再び殺しにくるの」


 真辺の言葉に新は白髪の男を連想する。しかし、その男は当時未成年で名前すら分からない。当時のまま白髪であってくれるなら探せるかもしれないが・・・・・・。その日から新は死神の捜索を開始した。そして、二人は協力関係となり、死神襲撃に備えて学校では真辺が家では新が千華子を護衛することになる。


 ある日、新は仕事中に通り魔事件が発生した現場を通りかかる。家からは距離があった新は真辺に警戒するように連絡する。新の不安は的中し、放課後に繁華街へ赴いた千華子が過去に事件があった交差点に近づいてしまいう。

 

 千華子を尾行していた真辺はその交差点で白髪の男を見つけその場から彼女を連れ出すが、二人の行く手を阻むように先ほどの白髪が現れる。その男こそが千華子の死神だった。