もう誰も愛さない。
すべてを失った日に私はそう決めた。
「俺には後継者が必要だ。お前が妻になって俺の子を産んでくれ」
「————————はい?」
呪いの仮面を作ったのが私だからと
むちゃくちゃな要求をされたのに。
「んなっ! なにしてんのよっ!?」
「膝枕だ」
「なんで私が膝枕なんてしなきゃいけないのよっ!!」
私は誰もが忌避する魔女なのに。
「セシルに笑顔の花を咲かせるのは、俺の役目だ」
それなのに
あなたの言葉にこんなにも心を乱される。
言葉はぶっきらぼうなのに態度は優しくて。
いつも私をからかうのに
その瞳はまっすぐに私を見つめてくる。
触れ合うと熱が伝染するみたいに広がっていく。
——ねえ、この結婚は契約なんだよね?