やさしくて、あたたかい

作者はる

 ヨウタは幼い頃から自身に劣等感を抱いていた。その背景に優秀で美形な兄と双子の妹の存在があった。そんな彼は二十歳を迎え、美容師になるために美容専門学校へ通っていた。
ある時、兄を驚かそうと女装したヨウタは偶然ある男と再会した。
 鈴木ユウ。かつてヨウタを肯定してくれた男で、九年前の引っ越しから疎遠…

 ヨウタは幼い頃から自身に劣等感を抱いていた。その背景に優秀で美形な兄と双子の妹の存在があった。そんな彼は二十歳を迎え、美容師になるために美容専門学校へ通っていた。

ある時、兄を驚かそうと女装したヨウタは偶然ある男と再会した。

 鈴木ユウ。かつてヨウタを肯定してくれた男で、九年前の引っ越しから疎遠になっていた。

 再会を喜ぶヨウタだったが、彼は別人になっていた。荒んだ容姿に挙動不審な所作。残酷な学生生活が彼をそうさせてしまった。

 ヨウタは本来の彼に戻すべく、男性恐怖症の彼に合わせて「恩田つくし」という架空の女になりすまし、彼の容姿や交友関係を改善していった。

 二ヵ月後、すっかり以前の彼に戻ったユウはつくしに思いを寄せるようになり、ヨウタもまた、やさしい彼に惹かれていた。

その後、ひょんなことでつくしの正体を知ったユウは自身の思いに悩みながら、ヨウタへの接近をやめられずにいた。

 最終的に、ユウはつくし扮するヨウタへの思いを打ち明け、ヨウタもまた、かつての卑屈な自身を捨て、彼への思いを受け入れるのだった。