ネオンと身につける宝石、お金が輝く時間帯。側の繁華街が騒ぎ立てる夜になった頃、男は途方に暮れて目的もなくふらっと歩いていた。
「これからどうしよう……」
男は遠方から仕事を求め此処へやって来た。
その筈だったがどうやら訳ありのよう。
何度溜息を吐いてもこのピンチは救えない。
まず誰かに…!
「って知り合いがいなければ意味ないじゃないか!」
初めて来た場所に偶然知り合いが。という偶然も夢のまた夢。
「あれ…なんだろうこの匂い。美味しそうな匂いがする」
何処からか漂ってくる匂いに無意識に止まる。
知っているような、懐かしい感じ。
何処からするんだろ、キョロキョロ頭を動かすも飲食店は閉まっている。
これは食べ物の匂いの筈だ。
「俺は何を期待してたんだ」
がっくり肩を下ろした男はまた歩き出した。
……………………あっ。
まさに今通り過ぎようとした使われていない黒い建物だ。此処からあの匂いが…!
何も考えなかった。
今日まで何も口にしなかったから漂ってくる匂いに誘われるまま足を踏み入れた。
「いない?」
中は前まできっちり整頓されていたであろう家具たちが倒れたり壊れていたり、とにかく無人だった。
でも男は見た。
見つけてしまった。
奥に光った小さなものを。
軽い気持ちで好奇心に駆られて後押しされるようにそれに手を伸ばした。
---カチッ
「……え」
直ぐ目の前のただの壁にちょっと隙間ができていた。
中に入ると大人が余裕で通れる道の上に立っていた。まだまだ先はあってだんだん生活感が感じられた。
「凄っ」
思わず感嘆な声が出てしまう。
白と黒でまとめられた家具にハーリキンチェックの壁と天井。
独特の雰囲気を持つカフェ。
「いらっしゃいませ。お客様、何名様でしょうか」
女の人が居る。
そう、女の人………う
「っ!うわーーー!!!すいませんすいませんすいません」
「…今日は愉快なお客が来たもんだ。あははは、席はご自由に」
は?
この作品はフィクションです。