小豆らいじ

少女の心奥、深く根付く“想い”
初めに。私はまず、物語云々の前に主人公である一人の少女にだけ心を馳せることをお許し願う。

この作品でとても丁寧に描かれているのは、彼女が四年前に亡くした実母に抱く、どこまでも強い想い。

人とは忘れゆく生き物で、今を生きねばならない私達がこれからの時間を死者と共に歩めはしないように、それは自然の摂理だとも言えよう。

だから人は、少女の父親のようにまた誰かを求め必要ともするし、少女の妹のように思い出と受け止め歩いても行ける。

そんな中たった独り、頑なにママを一時も忘れない絶対に思い出にはしないと突っぱねる姿は痛ましいほどで……それでいてなんて‘純粋’な子なのだろうと思うともう、涙を禁じ得なかった。

少女はきっと、それぞれ皆の想いをちゃんと理解している。
後妻を徹底的に拒み続ける彼女の真意は、本当は憎んでいる訳じゃない。ただこの女性を受け入れることで、実母を思い出にしてしまうことを何より、恐れているのではないだろうか。

とにかもかくにも、涙なしでは読めない作品。上巻でこの読みごたえ。

下巻では、まひろを通してそわの心の変化に注目したい。