「あぁ、またクビか…。」
主人公、佐々木なつき、女、23歳バツ1の雇用二ヶ月頃のブチ当たる壁はいつもこれだ。最近の雇用状態は女性に優しくなってきたはずなのだが、何故かなつきには優しい安体した日々は訪れてはくれなかった。
不幸な彼女のもう一つの不幸は仲の良い友達と呼べる人がひとりもいないことで、悩みを相談する唯一の相手、実の母親も相談されると重荷だと嫌がり、又グチ子が言ってると余計ストレス返しされ憂うつになるのだった。
「あぁ、私、何やってるんだろう…。」
呟いても現実は回避されない。
時々、気晴らしに図書館に行ってみるが、今日はなかなか、これだ!と思える本に巡り会えなくて帰ろうかと思った矢先、一冊の児童書が目に入った。ロビンソング・ルソーそういえば通信講座の課題でロビンソンの絵描かなきゃならないんだっけな…と、その本を手に取った時にとなりに4、5歳位の男の子が何やら本を返却する所が解らない様子で一冊の本を置いていった。列車絵本、その本は列車の写真そっくりの絵がいっぱいのっているらしい本ですごく上手な絵だった。
「すごいな…、リアルな列車の絵‼︎」
私は感動してその本も一緒に借りようと図書館の人にその子が返却の本を置いていったことを話すと、図書館の若い女性があいそよく
「この本は借りている本ではない様で、貸し出し可能ですよ。」
と言ったので、ついでに
「この本は作者の実話を元にしたものですか?」
と、きいてみた。
「いいえ、作者デファーという人がお金に困って、知人から聞いた話を元に書いた本がたまたまヒットした様ですよ。」
と教えてくれた。そうか、文才のない私だけど、仕事はダメになったし、時間はたっぷりあるのだから、短編小説でも書いてみようかな…、絵よりも文の方が楽だし…。そんな軽い気持ちでショートストーリーの世界を思い描いてみようと決意した。跳ね者の私だけどやれるだけやってみるか。そんな私が描いた小説は、コンテストには入賞せず…。職探しが再び続いた秋の夕立の多いきまぐれな時期で辛い悪夢の続いた日、ある少女漫画の新人コーナーの話が自分のボツになった小説の内容とそっくりなストーリー漫画になっているのを見てキモをぬかした。
「なんじゃ、こりゃあ…。」
思わずなつきは呟くが、作者の名を見て2度目のショック‼︎
『咲名つき』
って私の名前1文字づらした様なふざけた名前っ‼︎
「これって盗作と同じじゃん。いったい誰がこの漫画を書いたんだろう?」
ーーこうして、なつきのこの作者を探すことが始まった。