深雪の国。それは貧民のものが大半命を落とす過酷な国。そこに一人の女が迷い込んだ。この世界とは異なる世界『現代』の住人だった者が流れ込んでしまった。彼女の運命は
「帰りたい、帰りたいのよ。」
そう彼女は言う。
「帰りたいのよ、私の産まれた『世界』に。」
帰りたいと、彼女は呟く。
それでも背中から回れた腕から逃れるすべを、私は知らない。
『帰りたい』
彼女の頬に、雫が伝った。