作品コメント
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- オギクボ
片思いが生む悲劇の連鎖
恋愛小説が苦手な私でもどんどん引き込まれていく作品でした。
主人公である孝之の過去と現在を描いた物語。ある事故で5歳児に戻ってしまった兄の面倒をみる孝之。
兄の兄弟愛を壊す彼女の存在。そして、孝之の片思いの暴走が招いてしまった悲劇の連鎖。
とても悲しい物語ですがストーリーの流れは、非常に面白く恋愛小説が苦手な読者でも楽しめる内容です。その点はさすがプロの実力だと思いました。
よくあるイケメン、美女のラブラブハッピーエンドスターリーに飽きた方なら絶対に楽しめると思います。
オススメです。 - 刈り取る者
読者を引き寄せる、表現力
流石、作家としてデビューされたと、いうこともあり。文章は申し分ありません。
ただ、過去編ということもあり。~た、で終わる文章が多いのが、気掛かりな所。
過去といえども、流れ重視で。~たを使わないことも、アリなのでは?
ストーリーは、非の打ち所の無い仕上がりようですね。
私が良く思えたのは。
感情が抑え切れなくなった、孝之が兄である康介に喧嘩をし、階段を落ちるシーン。
心の拠り所を求め、過ちを犯した事を、悟られたくない気持ち。その闇な部分を、垣間見た。「堕ろせ」という言葉。
由佳子さんの、本当の優しいを表現する為に。わざと孝之の暴行に、抵抗しなかった訳。
どれもこれも、胸を揺さ振るような感動を、読者に与えてくれました。
伏線もなかなかのもので。
携帯の番号を知っていた事。
偽善者という言葉。
海で作った、砂の城。
どれも、アッと言わすような、隠し具合で。感心の念で、一杯です。
ただ、意見を言わせて貰うならば。孝之の成長が、無い所が。物語の深みを、減らすと思いました。
続きは、掲示板にて。 - アオイ
一途な恋と悲しい結末。深い内容と構成に、どんどん引き込まれていきました。
主人公孝之の目線で綴られる十年間の長い恋と罪深い行いが、過去と現在を交互に描くことで表されています。
図書館で孝之の読む本を探してくれる美穂と資料室で孝之の進路のために資料を探してくれる美穂の言動が重ねられていたり、
食卓の唐揚げに、康介との仲直りと孝之の大学合格の思い出が重ねられていたり、
物語後半で、由佳子と康介が住んでいたアパートで泣く孝之の場面で、由佳子と孝之の初対面を思い出させる書き方がすごく深くて印象的でした。
作者様は「読者に嫌われるような主人公」を作り上げる事を目標として書かれたそうですが、それが完全にクリアされていました。
美穂が孝之に妊娠したと伝えた時の文章で《答えを聞きたいという美穂の願い「だけ」を叶えてやる事にした》という部分がありましたが、ここでは冷徹になった孝之の心理が強烈に表れていて怒りを覚えました。半面、由佳子への恋心を我慢したり胸の痛みを隠してきた末の感情の爆発だと思うと、孝之に共感・同情もできて……。
悲しい出来事の連続だったけれど、兄弟の絆や美穂と孝之の友情が回復したこと、登場人物達の成長に引き込まれ読む手が止まりませんでした。 - 宝乃香
大人になることは
大人になるということは大切な何かを無くすこと。
そんな言葉を以前聞いたことがあります。
たしかに純粋さや好奇心は減るのかもしれません。
私は、大人になることは無くすのではなく、責任という枷が邪魔をするだけなのかなと思います。
結果に対する責任の重荷を受け入れなければならない。
そんなことを考えながら読ませていただきました。