アオイ

涙なしでは読めませんでした。悲しすぎる現実の中で紡がれる、少年と少女の絆があたたかい。
最初から最後まで、先が気になり一気に読み進めることができました。

読みやすい文章と深い描写に引き込まれ、まるで映像でも見ているかのように作中の情景が鮮明に伝わってきました。

彰が結真の両親を殺していく場面は非常に生々しく恐ろしくもありましたが、この作品に絶対必要なシーンだったと思います。

また、右手の人差し指で鼻の下を擦るという彰のクセが、各場面でかなり効果的に描かれていたと思います。人が、言葉以外のもので気持ちを語るという描写がすごく丁寧に現れていました。

そして、彰が自殺を図って回想に入り、病院で意識が戻る時の心象風景もすごく印象的でした。

過酷で難しい虐待という現実。それに負けない結真の強さと、結真を助けたいと願う彰の優しさに何度も涙がこぼれました。(結真は彰がいたから、あのような最期の言葉をつぶやけたのではないかな、と思いました。)

克彦と彰の過去が徐々にあらわになってゆくタイミングも絶妙でした。

作品全体に、人の優しさや絆の大切さがにじみでていました。

この先、彰が栞と共に幸せになることを信じて……。