パンディラ亜大陸――北部の草原地帯には遊牧民族が暮らしている。国家はなく、幾つかの氏族集団が点在していた。彼らは四つの民族に大別される。ヴァンギル、ケチャ、パルティアナ、そしてタングトである。しかしパンディラ暦百十年、最も人数の多いタングトの族長がその首長となる連合国家ファングを樹立した。四大民族は対等関係にあったはずだが、ファング国王アムル=ファンが属していたタングトを優遇する措置が横行し、他民族が反発する状況がここ数年続いている。
一方、南部には三つの国家がある。最も歴史が古いセイラン王国、その西側にはカリバルディア王国、そして一番新しく勃興してきたギルバリア帝国である。
時にパンディラ暦百二十年代。
片や王族の地に連なる公爵家の娘。片や出自も不明な旅芸人一座の少年。二人は出逢い、再会を約した直後に離ればなれとなる。時は流れ、二人は戦場で相まみえる。少女は帝国軍を指揮し、少年は遊牧民族の軍団を率いて――
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