千年の寿命を持つ守護者カレヴィは、空高くそびえるミハエルの塔に住んでいる。
『人の娘を娶《めと》り、命をつなぐ』――それが守護者の掟だが、面倒くさがりのカレヴィは九三四歳になってもなお、妻を迎えていない。
見かねた下僕《しもべ》の黒鷲《くろわし》イストが、妻を連れてくるよう進言し、カレヴィをミハエルの塔から突き落とす。
塔の麓《ふもと》、マロイオの街で開かれる朝市。
二十六歳になったアルマは自慢の手作りスコーンを並べて売っている。そこに現れた謎の男に袋いっぱいの金貨を渡され、「これでお前を買う。我が妻になれ」と連れ去られる。
男の正体は、艶《つや》やかな銀髪に翡翠《ひすい》の眼《まなこ》をした守護者カレヴィ。アルマはカレヴィの愛撫《あいぶ》に翻弄され、わけがわからないまま、体を許してしまう。
翌朝、黒鷲《くろわし》イストから説明を受けるアルマ。『人の娘』であれば自分でなくともいいのでは?、とすぐに気づき、カレヴィに抗議をする。カレヴィは聞く耳を持たず、毎夜、深く、アルマを愛する。
カレヴィの手は恐ろしく美しく、優しく、いやらしい。だが、そこに本当の愛はないようにアルマには思えた。面倒臭がりのカレヴィなら、一度逃げたらすぐ諦めるだろう、アルマは考える。カレヴィがいない隙にミハエルの塔を下り、アルマは自宅に戻る。
アルマの自宅には、婚約者のトゥオマスが来ていた。
トゥオマスは自治区の長で――前の長であり、事故で急逝した父の人気を得るため、娘アルマに婚姻を求めていた。
だが、カレヴィに愛されたアルマは以前とは比べものにならないほど、女の色香を放つようになっていた。怒ったトゥオマスはアルマを襲おうとする。
トゥオマスの乱暴な扱いに、アルマは、カレヴィはこんなことはしなかった、と目に涙をためる。一方、カレヴィもまた、アルマがミハエルの塔からいなくなっていて――一度は面倒臭いと思うものの、アルマの温もりが消えたことに淋しさを覚えた。
トゥオマスを蹴り上げ、逃げるアルマをカレヴィが迎えに来る。
「カラダが好みではあるが、そこに宿る精神が好きだ」と独特の価値観ながらも、アルマに愛を告げるカレヴィ。アルマもまた、そんなカレヴィを受け入れ、二人は結ばれる――