森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU  1

もうお昼休みに入ったのに、なかなかメールが来ないと思って携帯と見ているひかり。
そんなひかりの携帯にメールが入る。

`遅れてごめん。弁当持ってきた。いま、入口の前にいるんだけど´と。


「すみません、ちょっと。」
「あぁ、行ってらっしゃい。てか前にいるの?」
「はい。ちょっと行ってきます。」
「いつも仲がいいのね。ひかりちゃん」
「あはは。」


そう一緒に居た人たちに声をかけるとそそくさと事務所の外へと出て行った。
いつもなら12時きっかりにメールをくれる弓弦。今日はちょっと遅かった。
お昼を事務所でいただいてた他の人もお弁当が遅かったために気にしていたのだが
やっと来たって言って部屋から出ていくひかりの背中を見てた。
その中の一人、ゆかりがちょっといたずらっぽく言った。

「ねぇ、ひかりのお弁当を持ってくる人って誰?」
「誰だっけ?ちょっとだけ見たことあるけど、顔は見えないのよね。
 バイクで来てて、背が高くてヘルメットとってないからわからないけど
 でも、ひかりの頭なでたりしてて仲が良く見えるんだよね。」
「そうなの?ちょっと行ってみたいかも、いい?」
「早くいかないと帰っちゃうよ?」
「いいかなぁ。ちょっと行ってくるね。」

そういってゆかりはひかりを呼びに行くふりで誰か確かめようと
事務室を出て行った。通用口のドアを出るとすぐそこにひかりとその人がいた。

「ひかり。」
「なに?」
「あ、こんにちわ。いつもひかりちゃんにはお世話になってます。」
「こんにちわ。いつもひかりがお世話になっています。
 …………ひかり?その人は?」
「ゆかり。吉村ゆかりさんって言って同じ職場の人よ。」
「はじめまして、ひかりがいつもお世話になっています。」

低いけどしっかりとヘルメットの中から聞こえる声。
ゆかりはみんなと同じそれは男の人でひかりの彼と思ってしまった。

「んじゃ、今日も仕事だから自分で帰って。遅くはならないと思うけど。」
「わかった。仕事がんばってね。いってらっしゃい。」

するとバイクに乗りその場を離れていった。ゆかりはつかさずひかりに聞いた。

「弓弦君っていうんだ。ひかりの彼?」
「彼?アハハハハハハハ(笑)弓弦は女だよ(笑)あたしのいとこ。」
「彼じゃないの?いとこなの?ほんとに?」
「本当にいとこだって、弓弦はお父さんがいなくて
 お母さん長崎に残したまま進学でこっちに来て、そのままうちにいるの。」
「えっとその弓弦さん?だっけ」
「弓弦?」
「お弁当は?美味しい?」
「うん、弓弦はね料理が得意なの。魚釣るのも上手だし。」
「へぇ、今度紹介してよ。」
「弓弦の仕事がバーテンダーだから、夜はいないのよね。
 でも休みの日は、そうねぇ・・・・・バイク乗り回してるみたい」
「そうなんだ。でも、そのバーに行けば会えるのよね。」
「そうね、今度一緒に行く?」
「行ってみたい。」
「じゃ、今度。」

そういう話をしながらのお昼が終わる。
お昼が終わるか終らないかの時に、またメールが入る。

 `今日は臨時休業らしい。
  仕事が終わったらこの間の埋め合わせに。どこか行きたいとこある?´

ひかりはメールを見ながらにやにやしてしまった。
すると隣のゆかりが「どうしたの?」と声をかける。

「ひかり?なに?何にやにやしてるのよ。」
「ちょっとね。珍しいなぁって。」
「なにが?」
「今日会ったでしょ?弓弦がね今日は臨時でお休みらしくて
 どっか行きたいところ連れてってくれるって。」
「いいなぁ。でもバイクでしょ?あたしも一緒にって言っても無理だもんね。」
「そうだねぇ。ゆかりは今度来週でも連れてってあげるから、ばーに。」
「ありがと。さ、仕事仕事。もうすぐ帰ってくる人たちがいるから
 しっかりとしないとね。」

そう話をしていると、取引先の人とかの出入りが激しくなってきた。
事務所でも、バタバタとし始めた。

夕方になりロケなどで移動する人たちもいるしTV局に移動する人たちも大勢いる上、
出入りする関係者で受付付近はごった返し。18時になっても帰れずにいた。
すると、`終わった?´と弓弦からメールが入る。
`まだだけど・・・・・・どこ?´と返信すると`会社の前にいる。待ってるよ´と。

帰ろうとしているとき、誰なのかタイミングが悪くロケに出発するのに
飛行機に間に合わないと騒ぐ人が事務所でマネージャーに八つ当たりしてた。
八つ当たりしてもしょうがないのにと思いつつも、一生懸命に入口でタクシーを捕まえようとしているが
なかなかつかまらない。どんどん時間が過ぎていく。
そんななか、18時半を回りひかりとゆかりは早々に交代の人と交代し帰るために着替えた。
そして、ひかりもゆかりも帰ろうと会社を出たところ、弓弦が待っていた。

「お疲れ。どこ行く?」
「ゆかりも一緒じゃだめ?」
「あぁ、いいよ。でもバイクには乗れないか・・・・・。」
「あたしはいいわ。二人でどうぞ。今日はちょっとね用事がね。」
「そうなの?残念。またね。」

そういってゆかりとひかり達はそこで別れた。

「弓弦。あのね(笑)」
「何さ。」
「弓弦はね、あたしの彼だって(笑)」
「ひかり、ちゃんと言った?あたし女だって。」
「あたしはちゃんと女だって言ったし、弓弦って名前教えて話ししたけど。」

そう話をしていると、会社の入り口から出て`山本君´と呼ぶ人が。
所属事務所のタレントで槙村渉だ。

「どうしたんですか?槙村さん。ロケ出発だったんじゃないですか?」
「時間間違ってさ、タクシーつかまんなくってさぁ。彼は?山本君の彼?」
「弓弦といいます。初めまして。」
「あのさ、バイクなら間に合うと思うんだけど無理いってごめん
 俺を羽田まで送ってくれない?時間やべぇんだ。」
「ひかり、ここで待ってくれる?」
「弓弦は大丈夫?」
「大丈夫さ、送っていくだけでいいんでしょ?」
「助かる。埋め合わせはすっから。」
「ひかり、お前のヘルメットを槙村さんに。」
「んじゃ、槙村さん気を付けて行ってらっしゃい。」
「1時間ほどで戻るから待ってて。」
「弓弦も気を付けて行ってきてね。」
「あぁ。」

そういうと、弓弦の後ろに槙村が乗って送られていった。
ひかりは、その背中を見えなくなるまで見送りまた事務所のほうの戻っていった。

「あの、弓弦君?」
「はい。」
「20時35分離陸なんですが。」
「この分だと、19時45分ぐらいが精一杯かも。」
「それでもありがたい。」
「いえ。」
「て言うか弓弦君って山本さんの彼氏?」
「みんな噂してるらしいですがいとこですよ?」
「そうなんだ。」
「さ、信号が変わる。飛ばしますよ?」
「はい。」
「しっかりつかまっててください。」
「よろしく」

そういって槙村は弓弦にしっかりと抱きついた。
弓弦は何とも思っていないみたいだったが、槙村はふと???と。
腰が細いとは思ったが少し上の方に腕が行き何かしら当たるものが。

悩んでいるうちに空港についた。

「弓弦君、じゃなくって弓弦さんなんだ。山本君の彼氏と間違ってごめん。」
「え?」
「だって弓弦君じゃなくって弓弦さんなんだろ?」
「あはは、気づいたんですか。」
「まぁ帰ってから、また会いたいね。」
「お誘いはお受けできませんが、良ければお店に来ていただけると嬉しですが。」  
「山本君に聞けば分かる?」
「えぇ。」
「んぁ、直連絡入れれるように連絡先も聞いていい?」
「えぇ。いたずら目的でなければいいですよ(笑)」
「もちろんんじゃ、また今度」
「えぇ、また。」

そういって槙村と弓弦は別れ、離陸するのを見届けてからひかりが待つ事務所に戻った。
事務所の戻り入口についたところで携帯にかけようとすると
ひかりと共に男の人が出てきた。

「お帰り弓弦。ありがとうね、槙村君間に合ったって。」
「うん、ぎりぎりだったけどOKだったよ。」
「あの、ひかり君の彼氏?」
「えぇ(笑)」
「社長。社長にはきちんと言わないとね。(笑)弓弦は女ですよ?」
「ほ?だってこんなに背が高くて、大きなバイクで。」
「ね。弓弦。弓弦は背ぇ高いし、いっつもヘルメットとらないんだもん。」
「面倒。でも間に合って本当に良かったですね。」
「あぁ。」
「ねぇ弓弦。ヘルメットとらないと社長に失礼よ?」
「とるの?」
「とってちゃんと。」
「まぁそこまで言わないでも。でも、ここではなんだから事務所に入って。」
「事務所にですか?」
「山本君は何か用事があるか?」
「いえ、ないですけど。」
「弓弦さんは?」
「仕事が今日は休みになったんで、何も。」
「では、もう少しで終わるので事務所で待っててくれるとうれしいんだが
 今日はわたしは家に帰っても一人なんでね、これからちょっと行くんだけれど
 付き合ってくれるとうれしいんだが、どうだね?」
「どうする弓弦?」
「お言葉に甘えましょうか。断ると失礼ですものね。」
「あぁ、断られるのは考えていないが。」

そういって二人は社長につれられて事務所に入っていった。
事務所に入っていくとひかりはお茶を入れてきますと言い離れていった。
弓弦は社長に連れられて社長室へ。
人が少なかったために視線をあまり感じなかったが
社長室に入っていくと秘書らがまだ残っていた。
その秘書たちがびっくりした顔をしていたのを見て弓弦は
`ヘルメットかぶったままでいいですかっていえばよかった´と後悔していた。

「弓弦さん。君はうちの子に似ているんだね。秘書らがびっくりしている。」
「えぇ、それが嫌でいつもひかりの弁当持ってきたときヘルメットとらないでいるんですよね。」
「本当に、髪型を合わせて短くして顔にほくろをつければそっくりだな。」
「多分声も低いし、背も176あるんですよ。
 女としては目つきも悪い方だし、来ている服がいつも男っぽいって  そういわれるんですよ。」
「でも君は美人だ。目つきが悪いんじゃなくってまなざしが鋭いだけ。
 男っぽい服装はそれが一番動きやすいんだろう?声かぁ・・・・・声は個人の個性だからいいんじゃないか?」
「なんだか何でもいい方向に取らえられてしまうんですね。」
「社長。お茶をお持ちしました。」
「ありがとう。少しこの弓弦さんに興味がわいたよ。
 少し私は話しをしてみたいと思うんだが弓弦さんのことを聞きたいのだけれど。」
「あたしは時間は大丈夫ですけど。」
「私の事ですか?普通にいる人間と何ら変わらない私ですよ。(笑)」
「いや、弓弦さんに興味がな。」

そういってM'scompanyの社長である山本は、弓弦に興味を持った。
少しだけ話をしていただけで興味がもたれる自分は???と気持ち引いてしまった弓弦だが
社長が夕飯を一緒にというのでひかりと共について行った。

「山本君と、あ。わたくしも山本と言います。ひかり君が勤めている
 M’scompanyの代表を務めている。自己紹介が遅れてすまない。ひかり君とは?」
「きちんと言うと、母同士が姉妹であたしは長崎に住んでいました。
 N工業を卒業しM大に進み去年卒業。
 ただ、母が長崎でもバーをしていましたので小さいときから
 カウンターの仕事を手伝っていたんです。
 だから在学中もずっとバイトしていて大学卒業してから
 本格的にバーで働いているんです。」
「ほほぉ、その姿だとそこでももててるんだろうな。」
「いえいえ。」
「うそ、弓弦はいつも一人じゃないじゃない。」
「そうなのか?ひかり君。」
「弓弦は、モテモテだよね。」
「ひかり、大げさなんだ。」
「槙村を送って行ってくれてありがとうな。
 槙村が君にあとでお礼がしたいからって私に電話をしてきた。」
「いえ、困ってる時はお互い様です。そう伝えてください。」
「でも君に興味がわいたのは私だけじゃないみたいだ。
 秘書たちも槙村も多分に君を知るためにバーに通うだろう。」
「お店の売り上げが上がるのはうれしいですが(笑)」
「いつも弓弦はモテるんだわ、やっぱり」
「さっきな、弓弦さんがヘルメットをとって部屋に入った時にな
 ほら、あの雪村君たちがな弓弦君を”翔太君?”ってさ」
「あの社長さん?」
「ん?」
「私、その彼と間違われることも良くあるんですけど
 誰かに似ていると言われることがあまり好きではなくて。」
「そうなのか?翔太たちがちょうど時間があるみたいだったから、
 呼んであるが会って話すと、そんな感情もどこかにおいていけると思うが。」
「社長本当ですか?あたし社内にいておはようとかの
 あいさつしかしたことないんですけど?」
「ひかり君は受付の部署だからな。絡むこともないしな。」
「弓弦との食事のために呼んじゃったんでしょ?社長。」
「そうだねぇ。」
「社長さんが呼んだのであれば、会わないと失礼なのかなぁ。」
「もちろん、弓弦との食事のためだけに呼んであるんだから。」
「あまり気が進みませんけど。社長さんに甘えることとしようかな。
 なかなか有名人の人とからむことないから。」
「うそ(笑)いつもバーに行くと弓弦は有名人に囲まれてにぎやかじゃない(笑)」
「仕方ないなぁ、社長ももう連絡入れちゃってるんでしょう?」
「そうだな、そうともいうかな(笑)」
「どうぞ、彼らも連絡を待ってるでしょうし。」






10分もしない頃、社長とひかりといた部屋から
5人も来るということで人る広い部屋に移動した。
すると、5分過ぎたころだっただろうかふすまごしに声がした。

「山本社長様。お連れの方々がおつきになられました。」
「あぁ、とおしてくれ。」
「こんばんわ、社長。」
「あぁ、今日も仕事お疲れだったな。」
「山本さんもいる。こんばんわぁ。」
「れ?翔太がいる?翔太はここにいるのに。」
「そうだよなぁ。」
「社長。どなたですか?」
「なぁ、受付嬢。お前の知り合い?」
「えっとね。」
「ひかり。」
「受付嬢、ひかりちゃんっていうんだ。
 なかなか、ちゃんと喋ったことないからなぁ。」
「そうですね(笑)」
「ひかりのいとこで原田弓弦と言います。よろしく。」
「弓弦って珍しい名前ですね。」
「そうですね。周りには呼び捨てされやすいみたいです。」
「ひかりの自慢のいとこです(笑)」
「いつもお弁当届けてもらってるもんな。」
「そんなところだけ見てるなんて。」
「ひかりさんの彼っていう噂ですよね。」
「彼かぁ・・・・どこに行っても彼なんだなぁ。」
「翔太。翔太。なんで黙ってるんだ?」
「だってさ、俺が目の前でしゃべってるんだぜ?」
「お前そっくりだもんなぁ。血がつながってるんじゃない?」
「それはないよ。ひかりの母と私の母が姉妹で私は長崎出身ですし。
 まず年も私が下でしょう?それに性別が違う(笑)」
「ん?」
「ひかりちゃんとごまかさずに(笑)」
「弓弦は彼じゃなくって彼女です(笑)」
「弓弦さんなの?」
「さっき槙村さんを空港まで送っていったときも言われた。」
「翔太とうり二つでも女性なんだから失礼のないようにな。」
「長崎出身なんですか?」
「えぇ、長崎でうちの母がバーをやってて、小さいときから手伝ったんです。
 M大に進学したんですが、結局バー勤めになりました。
 伯母はちゃんと就職しなさいって怒りましたけど。
 母は大学入学してすぐに亡くなっちゃって自由だし。」
「長崎はどこ?」
「西村正弘さんと同じN工業の電子工学部です。」
「いいところ出てるじゃないですか。でM大でしょ?」
「あぁ、もったいないなぁ。」
「翔太の父ちゃん、会社のそういう人材欲しがるだろうなぁ。」
「私は、硬い仕事は苦手て今までも母に自由に育てられたので
 多分に無理かと。(笑)」
「弓弦さんって横から見てるとすごく優しい笑い方をするのがわかる。」
「でしょ?ひかりのいとこだもん。」

コメント

ログインするとコメントが投稿できます

まだコメントがありません