森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 73

 `久原様。
 すみません。
 気を遣わせて、あたしが言うことがおかしいですね。
 ひかり本人が答えを見つけて伝えるべきであって、あたしが
 いろいろと口を挟んではいけないんです。
 それは十分にわかってたはずなんですが。
 久原様、このメールと共にあたしが言ったことは忘れてください。
 すみません。いい大人なんですもん、自分できちんと決めないとですね。
 でも、オファーがあった時にどういう話の映画なのかは
 お話していただけるのでしょう?それをきちんとお聞きしたうえで
 どうするかを返答すればいいんですものね。
 久原様。あたし失礼なメールを送ってしまいました。すみません。
 きっと気を悪くされたのではないでしょうか。
 申し訳ありません。期待外れのあたしに思ってしまわれたのかもしれませんね。
 こんな女々しいあたしですが、久原様の期待に応えることができるでしょうか。
 ちょっと不安になってきました。本当にすみません。
 あたしからのメールは忘れてください。´

きっと久原氏には嫌われたかもしれないと思いつつも、
これで映画の話が流れたらそれでいいとそう思いながら別のメールを
確認をしてみていた。西村がPCを覗き込み、まだ終わらないのかと
そう話しかけてくるも弓弦はもうちょっといいカタカタと軽快な指使いで
別のメールの返信をしていた。

     `tururururururu tururururururu´

誰かと思い携帯を見ると久原氏から電話だ。あわてて弓弦は携帯を取る。


「はい、原田です。」
「夜分にすまないね、私だ。久原だ。」
「すみません、あたしきっとがっかりさせるようなメールを送ってしまいました。」
「いや、いいんだよ。気にしないで。まだまだ先の話なんだし
 どうなるかわからないものだ。中心に来る人物とストーリーと
 それだけしか組み立ててないのだけれど、制作会社も大乗り気でな。
 だが、バタバタしているうちにどんどん進んでいくと思う。  
 仲の良い姫君たち。仲が良くいつも一緒に居た
 そんなお姫様たちの出演でやはりいろいろと考えるものだよ。
 そんな人として気にしてあげれる兄弟がいるということは幸せなことだよ。」
「でも。」
「でも?」
「仕事とプライベートは別。それをわきまえてない発言だったから。」
「ますますそういう弓弦君に惚れてしまうだろ(笑)」
「本当に。あたしのメールのことは忘れてください。
 まずはひかりの意志が優先だし、それが一番の答えだから。」
「ありがとう。とりあえず、来週山本社長と話をしてくるよ。
 そしてひかり君とも。そのことは終わった後に君に連絡をする。
 入れるからそれを待っててくれないか?
 山本社長だって考えるだろうしひかり君だって。
 ひかり君は山本社長にとっては一社員だが大切な社員だ。
 きちんとしたことを時間がかかっても話し合って報告するだろう。
 だから、それまで待っててくれないか?」
「えぇ。きっといいことをお知らせしてもらえると思うので
 きっと、きっと。いい報告を。」
「待ってなさい。そして弓弦君。」
「なんでしょう?」
「きっとこの映画で弓弦君を弓弦君以上にスクリーンに映し出してみせる。
 バーテンダーの弓弦君と同等の女優原田弓弦を引き出してみせる。
 そのためにはどんな努力もいとわない。」
「ありがとうございます。でも西村さんが不安にならない程度で
 よろしくお願いしますね(笑)」
「もちろん。一応制作会社には伝えてあるんだが監督も私がすることになっている。
 思いっきり全力で頑張るよ。よろしく頼むよ、弓弦君。」
「そんな・・・・・。ありがとうございます。では、お休みなさい。
 おやすみなさい男爵様(笑)」

電話が切れる。少しの時間の間だけの電話が西村にはすぐどういう事か気づいた。
だけど聞いてないふりをしてTVを見て笑っているふりをしている。

「どうかしたのか?」
「ん?何でもない。ちょっとね。」
「弓弦?なにかあった?」 
「何にもないって(笑)」
「まぁ、後ででも落ち着いてからゆっくり話してよ。
 でも、明日は記者会見だからもうそろそろ電気消すぞ?」
「と言っても21時になるよ?もうすぐ。」
「そっか、ならその時間で寝よう。」
「きちんと寝ないとね。目の下にクマができる(笑)」
「なぁ、消灯時間過ぎたらそばに行ってもいいか?」
「なんで?西村さんらしくない。」
「弓弦の体温を感じて眠りたい。駄目?」
「・・・・・・・・・・・・。いいよ。あたしもそばにいてほしい。」

珍しく弓弦が西村のそばにいたいとそういう意味らしき言葉を発する。
珍しいなぁと西村も思うがそういう返事になることを言ったのは自分だと
そう感じていたために何も言わずに微笑んだ。

 `消灯ですよ´

そう看護師から声がかかり、部屋の明かりが小さい明りだけをのこし
消されてしまい、部屋は薄暗くなった。
すると、簡易ベッドに寝ていた西村はしずかにベッドを抜け出し弓弦の寝ているベッドに近づいた。
弓弦は少し端に寄ると、布団をあげ西村がそこに入り込む。
弓弦と一緒のベッドに入り込むと、西村は両肩の怪我に気を遣いながらも
腕を弓弦の方に回した。
素直にその西村がまわした腕の中にすっぽりと頭をうずめ西村の顔を見上げる。
すると西村は弓弦をしっかりと抱き込みお休みのkissを。
愛おしく大切なお互いを大切に抱きしめながら、眠りについた。
弓弦はしばらくすると、目が覚めた。何かが・・・・と。
目が覚めて、ふと自分を抱きしめている西村の方を見上げると
西村は起きて弓弦を見つめていた。目が覚め見上げる弓弦に声をかける。

「眠くないのか?」
「ん、どうだろう。なんだかさ、なんだか・・・・・なんなんだろう。
 わからないけど眠れない。眠れないのよ。」
「俺もだ。俺も、眠くない。眠いはずなのに寝れないんだ。」
「二人してなんでこういう所気が合うんだろうね。」
「弓弦。」
「なに?どうかした?」
「なんかさ、弓弦が怪我して大変だっていうのに
 泊まり込んで挙句の果てにベッドにもぐりこんでさ。」
「でもそのほうが離れているよりも安心する。
 手をつないでいられる距離もこうやって抱きしめられている距離も
 までは何ら変わりない。すごく安心してられる。」
「俺もだ。俺もそう思う。怪我して動けないときはさ痛いだろうから
 抱きしめたくても抱きしめられなくて、結局手をつないでた。
 弓弦の温かさをさ、手を握ることで生きている暖かさを感じられて
 その時はそれで俺は安心していられた。
 だけど気が付いてからのバタバタで弓弦がどこか遠くに行ってしまいそうに思ってさ
 自分が退院してから今までずっと不安で仕方がなかった。
 誰かの物になってしまいそうで。」
「心配性だなぁ。でも不安材料は多かったから。
 ごめんね。本当にごめんねそんなに不安にさせて。」
「なんで謝るのさ。弓弦が謝る必要なんかないじゃないか。」
「だって、心配ばかりさせるし。」
「俺はそれでも弓弦のこの暖かさを感じられる場所にいられれば
 それが一番幸せになれると思ってさ、そう思ってるよ。
 だから、これからもずっとそばにいて。ずっとそばにいて。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「弓弦、お前は何かにつけて泣くなぁ。泣き虫だなぁ。」
「西村さんはあたしを泣かせんの得意なんじゃない?」
「あはは、そうだな。でも幸せな涙しか流させてないぞ?」
「そうだね。そうだね。ねぇ、このままもう寝ようよ。
 明日は早い。きっとみんなが邪魔しに早くに来るだろうし。」
「今日は俺も落ち着いて幸せな夢を見れそうだ。
 弓弦を感じて、暖かく気持ちよく寝れそうだ。
 これから毎日。毎日弓弦を感じて休むことができる。」
「うん。早いね早く寝着かないと明日が大変。」
「お休み、お休み弓弦。」
「おやすみなさい・・・・・・・。」

月明かりが差し込む病室は、明かりを消してもうっすらと白く明るく
弓弦の顔を照らし西村はその弓弦の寝顔を見つめていたが
いつのまにか寝てしまった。

「ん・・・・・んぅんんん。」
「どうした?弓弦?痛いのか?」
「あぁ、ごめん。起こしちゃった。ごめん。」
「いや、もうすぐ起こされる時間だ。寝れたか?」
「えぇぐっすりと。すごくしっかりと眠れた気がする。」
「俺もさ、こんなにぐっすりと寝れたのは久しぶりさ。おとといの大阪の夜は不安でさ。」
「なんで?」
「知らなかった?」
「なにを?」
「俺にさ、マジで翔太がメールしてくるんだよ。」
「メール?西村さんに?聞いてない!」
「あぁ。翔太がな、今日は俺が弓弦さんの看病で病院に泊まりますって。
 俺に不安な気持ちを植え付けるんだぜ?
 でも、本当にいるとは思わなかったなぁ・・・・。」
「ほんとに?翔太君何にも言わなかったけど?」
「あいつ本当に不安にさせるんだぞ。」
「西村さん心理作戦で困らされてない(笑)」
「そうかもしんない。もしさ、もし翔太とマジkissしてたら
 きっとショックで弓弦に会えなくなるかも。」
「そんなことでショック受けるの?兎ちゃんじゃん(笑)」
「でもきっと翔太から弓弦を引きはがすな。
 そうでないと俺らの間に亀裂が入る。絶対無理無理。」

「おはようございます。起きていますか?」
「はい。おはようございます。」
「朝ごはんですけど、どうしますか?」 
「食堂に行きます。大丈夫ですよ、今日はすごくご機嫌な朝でしたもの。」
「そうなんですか?やっぱりご夫婦で迎える朝は特別なんですね(笑)」
「今日は記者会見ですし、息を合わせて迎えないとね。」
「そうですね、早めに食べて先生との打ち合わせもあるのでしょう?
 原田さんもそれだけ動けると、そのあとは出かけれるんじゃないですか?」
「出かけれれば・・・・・それはうれしいですがどうなんでしょうね。」
「出かけれるんであれば、どこに連れて行こうかな。」
「家によってあたしの車で出かけれたらどこでも行けるんだけど。」
「それはあとで相談しよう。とりあえず、身支度整えて
 朝ごはんだ。そしてそのまま先生の所へ顔を出そう。」
「えぇ。」
「では下で用意させてきますね。身支度整えられたら
 降りてきてくださっても結構ですよ。」




「おはようございます。」
「おはようございます。今日もご機嫌な笑顔ですね、原田さん。」
「もちろんですよぉ。いつもいつも無愛想じゃぁね(笑)」
「今日は旦那さんも一緒だもんな、ご機嫌いいはずじゃな。」
「またまた。でも久しぶりに一緒に朝ごはんなんですよねぇ。」
「今日の献立は?」
「西村さんもおなかすいただろう、きちんと食べないと会見がきついぞ。
 しっかり食べて行ってくださいね。」
「ありがとう。んじゃ、弓弦。あっちに座って。俺受け取ってくるから。」
「ありがとう、あっちの窓側にいるよ?いい?」
「あぁ。」

また同じ窓側の席が空いていたので、そこに座る弓弦。
それを横目で確認し、配膳を待つ西村。まず弓弦の分が呼ばれたので
それを弓弦のいる席へ持っていく。
弓弦が笑顔でありがとうと言うと、西村は自分の分も呼ばれたといい
カウンターへ取りに行く。その後ろ姿をじっと見つめる弓弦の顔が見える。
テーブルに二人揃うと食べ始め、何気ない話をしながらもやっぱり記者会見の話となる。
食事の後は担当医の所に行きその日の診察を受け、
退院した西村の当初の見解と退院までの回復していった経緯を聞き、
また弓弦が発見されたときの事細かな詳細と救急車で運ばれたときの
弓弦の怪我の状態および治療、そして事細かな今日までの回復と治療との話。
きちんと担当医が話すことと西村が聞かれて話すこと、
弓弦が質問を受けて答えていいことなどを話しした。

コメント

ログインするとコメントが投稿できます

まだコメントがありません