森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 74

「おはようございます、先生。」
「あぁ、おはよう。今日は緊張するねぇ、お互いに。」
「えぇ、緊張して口から心臓が出てきそう(笑)」
「先生お久しぶりです。」
「おぉ、君も一緒だったのか。久しぶりに君の診察もしなければならないな。」
「えぇ。俺も退院して約10日ぐらいたったんで。
 それの退院した後ほぼ仕事だったし。」
「そういえば退院した後お顔を見ていませんでしたね(笑)」
「とりあえず西村さんも一緒にMRI室に行ってMRIを。
 骨折した箇所がどこまで治っているかを見ないとな。」
「さぁ、診察に入りましょう。記者会見まで時間がありませんから。」


「まずは西村さん、MRI室でMRIをお願いします。
 原田さん、こちらへ。診察を始めます。」
「はぁい。」
「まずは原田さんの両腕から。ここ数日松葉づえを使っていますが
 右側・右肩とかは痛くないですか?」
「はじめは痛かったけど、しばらくして痛みはなくなりましたよ。」
「では、まっすぐ椅子に腰かけたまま、右腕を右耳につけるような感じで
 まっすぐ伸ばしてあげてみてください。ゆっくりゆっくりと。」
「こうですか?」
「ゆっくりと真っ直ぐあげてって右耳に添わせるようにしっかりと。
 大丈夫ですか?痛かったらそこで止めてください。」
「えっと、痛くはないです。痛くはないですよ?」
「ではそのまま45度前に倒して。」
「はい」
「ゆっくりとね、ゆっくりと痛みは?」
「痛くはないです。」
「次は右耳にまた沿わせて手をあげて。そして次はそのまま横に。横に下げてって。」
「はい。」
「痛みは?」
「痛くはないです。少し突っ張るような感触があるけど・・・・。」
「その突っ張る感触はどこ?」
「右側の首筋と二の腕にかかる肩の所。」
「痛みは?」 
「突っ張ってても痛くはないです。」
「あとはリハビリだな。多分骨は大丈夫と思うな。」
「本当ですか?やった。」
「レントゲンを撮るともっとわかるだろうからそれからだな。」
「左肩は・・・・・。」
「痛みがありますか?」
「痛いというよりも動きづらい。うまく左腕を動かせない。」
「それは仕方ないですよ。あの厚く腕を動かすための肩甲骨が
 真っ二つに割れてたんですから。でもなぁ。」
「リハビリ次第なんですか?」
「そうですねぇ。これもレントゲン次第でリハビリ内容が決まりますねぇ。」
「痛くはないのですが動きづらいところだけ。
 右は腕を回すことはできるのですが左は回せない。
 だけど食事をする動作には何ら問題はないんですけどね。」
「まだ怪我のことを考えるあまり、
 きちんと筋力を元に戻すようなことはしてませんものね。
 日常生活での動きに対しては一生懸命動かしてきましたけど。」
「西村さんも帰って来たみたいだ。
 原田さん次はあなたがレントゲンを撮ってきてもらってください。」
「はぁい。」

しばらくすると西村が自分のMRIの画像を受け取って診察室に帰ってきた。
ご機嫌に鼻歌交じりで。

「先生。戻りました。」
「あぁ、さぁ次はあなたを診察だ。」
「俺は別に骨折してたとかじゃないし、大丈夫でしょう?」
「もちろんばっちりです。傷口に異常も見られませんし。
 今日のこの後の記者会見では事件が起こってからあなたが怪我をし  
 その怪我についてのことを一部聞かれますが?」
「いいんじゃないんですか?別に隠すようなことでもないし。
 今はこんなに回復しているんです。大丈夫ですよ。(笑)」
「そうですね。では、西村さん対して聞かれたことについては
 何も隠すこともないのでお話しするのは構わないということですね。」
「はい。隠すっていうかねぇ、隠してどうするんだって(笑)」
「まぁ、誰だって君みたいな人のことを逐一詳しく聞きたいものさ。
 嘘があればそこを突っつくという行為をしたくて。」
「弓弦はきっちいろいろとつつかれるだろうなぁ。
 なんで俺と翔太と一緒に居たのかとか、
 それこそいやらしい記者は意地悪な質問をしてくるんでしょうねぇ。」
「でも君はきちんと答えれるだろう?原田君も何も隠さずにいえるんじゃないのかね?」
「話の先を隠したままでは話しづらいことも出てくるでしょうから
 それにについての話もしなければなりませんしね。」
「事件のことについての質問が先になるのか?」
「多分。多分警察の人も混じるので事件の事から。
 そしてきっと弓弦個人の事。弓弦個人についての質問になると
 原田さんが出てくるのかと。で、原田さんは弓弦のことを
 話した後に俺との婚約発表となる予定ですが
 きっとぐちゃぐちゃな質問で会見もめちゃくちゃになるかと(笑)」
「みんな西村さんと原田さんの関係の方がきっと興味津々でしょうからな。」
「だから、どういってとっかかりを作って一つ一つ答えていくかが
 ポイントの一つになるんでしょうけれど。」
「大変だなぁ、君も。まぁ、わかっているが突っ込まれても
 君と原田君のおめでたい話の席になるんだからイライラせずに話をしないとな。」
「それは俺だって大人ですから(笑)」
「なんだか気味は机でもひっくり返して暴れそうだな。」
「いや、それはきっと弓弦がすると思われますが(笑)」
「彼女はもうそろそろレントゲン室から出てくるのでは?」
「そうなんですか?」
「松葉づえも大変ですから、でてくるところで待ってあげて
 ここまで連れてきてくれますか?
 その間にもう一人ぐらい患者さんを診察してますから。」
「そうですね、先生も忙しいのに。んじゃ、終わったら連れてきます。」

「頼みますよ、旦那さん(笑)」

先生の診察室を出ると、まっすぐレントゲン室の方にはいかずに
待合室の自販機の方へ行った。自分の分と弓弦の分とのコーヒーを買って
それから、レントゲン室の隣にある受付の所に。
現像したレントゲン写真はそこから渡されるので、そこで待っていれば
弓弦もここに来るはずだからと思い、そこに行った。
案の定、弓弦はレントゲンを撮り終えてその場所にいた。
椅子に座り新聞を読んでいる。その姿もなんとなく寒そうにしている。

「終わったか?」
「あぁ、診察は?」
「俺はすぐさ、ちょっと話してた。で、先生が終わるころだから
 連れて来てって。」
「そう。でもまだレントゲン写真が来ないんだ。」
「そっか。あぁ、ほら。暖かいぞ。」
「ありがとう。寒いときはこれが一番だよね。手がかじかんで
 冷たくなってしまって新聞をめくれなかったんだ。」
「お前新聞読むんだなぁ。」
「だって、接客業の常でしょう?カウンターに立つ仕事だもの、
 目の前に座る人の話題についていくように自分で努力しないと。
 いくらまだ出勤していないとはいえきちんといない間の情報も収集しておかないと。」
「弓弦は真面目だなぁ。て言うか、まっすぐに仕事と向き合ってるんだな。」
「そうしないとあの場所に立つ地位から蹴落とされてしまう。」
「大変だな。でもさ、秋山さんとの仕事もあるだろう?
 で、久原氏の映画もあるだろう?弓弦は退院したら俺よりも
 きっと忙しいんだろうなぁ。俺放置されちまうのか?」
「あはははははは。忙しすぎてかまってあげれないかもよ?
 だから何としても秋山さんの仕事が長引く仕事だったら断る。
 久原氏のは断れないからそれだけ我慢して。」
「それ以外でも仕事は来るんだろうなぁ。」
「バーテンダーの仕事を中心としてそれを邪魔する仕事はしないもん。」
「むりむり。執事がきちんと仕事を選り分けて選んで持ってくる。
 渡辺というやつはそういうやつだ。
 早めに打ち合わせをしておかないと彼の判断のみで仕事を決めてくるぞ。(笑)」
「今日の会見には来るのでしょう?渡辺さん。」
「あぁ、来るよ。で、俺のいないあいだは渡辺が執事でくっついているよ。
 だからきちんと話をして方針を決めないとな。」
「そうだね。遊んでばかりはいられない。
 一つ考えていることは、外出許可が出る範囲ので仕事は受けようと思っている。」
「無理すんなよ。体休められるのも入院している間だけなんだから。」




「原田さん。原田さんおられますか?」
「はい。」
「これを持って担当医の診察室へ移動をお願いします。」
「できてきたな、さぁ行こうか。」



「看護師さん。とりあえずレントゲン写真です。そっちで待っていますから。」


そう言って診察室より離れたところの椅子に座って待つ二人。
ちょうどその話し込んでいる場所に渡辺がやってきた。

「おはようございます。」
「あぁ、おはようございます渡辺さん。」
「まささんもいたんですか。」
「いいじゃんいたって(笑)邪魔だった?」
「いえいえ、大切な奥様ですものね(笑)」
「で、今日のことで早くに来たんだろ?」
「はい、原田さんの具合もと思って。」
「原田さんってかたいこと言わないでいいよぉ、渡辺さん。」
「そうですか?」
「だって西村さんの時にもいっしょにいたじゃん。でもその時も原田さんだっけ?」
「その時も原田さんって呼んでましたよ。嫌ですか?」
「弓弦、あんまり意地悪なこと言うなよ?
 渡辺はすげぇ真面目なやつだからなやんじまう(笑)」
「自分としては原田さんの方が呼びやすいんですが。」
「慣れるまでは原田さんでいいんじゃないか?」
「そうだね、でも呼べるのであれば弓弦さんで。
 本当は弓弦って呼んでもらった方があたしが楽なんだけど。」
「自分はマネージャーなのでやはり呼び捨てはまずいのではないでしょうか?」
「やっぱり弓弦さんが一番?」
「では呼べる勇気が出たら弓弦さんって呼ばさせていただきます。
 ただ、抜擢されたばかりでちょっと・・・・。
 仕事に慣れるまでは原田さんということで。」
「真面目な人だなぁ・・・・・。」
「渡辺。お前そんなにまじめくさってたか?」
「まささんよりは真面目ですよ?(笑)」
「そういう風にきたかっ(笑)」
「それよりも、診察は大丈夫でしたか?まささんも原田さんも」
「俺はOKさ。弓弦はこれから。」
「そうですか。自分も一緒に居ていいですか?」
「一緒に居るの?」
「だって原田さんのことは逐一知っておかないと
 仕事えらんで来れないじゃないですか。
 西村さんの次に原田さんのことをすべて把握しておかないと。」
「そうだ。弓弦。渡辺には一切隠し事はしないように。
 そうでないと不利な仕事もってこられるぞ(笑)」
「そうなの?渡辺さん(笑)」
「そうですね(笑)自分は何も原田さんのことを知りません。
 西村さんの所でマネージャーしている時は、雑談ばかりで
 何もお互いを知る様な会話なんてしたことなかったですよね。」
「会見で原田さんが話すことが弓弦のこれまでの人生なんだろうが
 それ以外のことは渡辺が直接聞くんだな。」
「自分にすべてを話してくれますかねぇ。」
「話さなきゃいけないことは話さないといけないだろう?
 西村さんそう渡辺さんをいじめちゃ駄目じゃん。」
「まぁ、ゆっくりしてからお話してくれればいいですから。」
「とりあえず今日の会見が終わったら、会社の方へ行くし
 明日は朝から外出許可をもらって自宅に帰る。
 これは西村さんと一緒に。それについてくる?」
「もちろん、付いて行くにきまってるじゃないですか。
 原田さんを知らなければ何も先に進まない。」
「マネージャーという執事だな(笑)」
「いわゆる完璧に執事にならないと知りえないでしょう。
 原田さん、何なりと小さい事まで行ってくださいね。」
「おいおい、お前執事としたら少し・・・。」
「少しなんですか?まささんは旦那さんになるのでしょうが
 自分はマネージャーなんですから、原田さんのことをよりよく知らないと
 困ること多いんですから。」
「あはは。そうだね、渡辺さんにはいろいろとあたしのすべてを話さないとね。」


「おはよう。渡辺も来てたのか。」
「おはようございます、社長。」
「おはようございます。」
「とうとう今日が来たなぁ。西村、原田。」
「来ました。俺にとってはうれしい日です。」
「原田君、気持ちは落ち着いたかね?」
「えぇ。皆さんがそばにいてくれるんです。あたしは大丈夫です。」

そう話をしていると続々と人が集まってきた。
原田氏とその専属の弁護士。誠と小林。山本社長と橋本とひかり。
西村のマネージャーが遅れて。
病室で話をしていると今回の会見に付き合う担当の大久保先生と
病院長。
記者会見で並ぶ面々がそろったところで10時をまわる。
会見場は向かいのビルなのだが、そのビルの正面入り口にも
かなりな人数が押し掛けているようだった。
歩いて移動しても良いのだがとあの様子を見せタクシーで地下の駐車場に入り、
それから会見場に上がろうと話を詰めた。
弓弦の身支度を整え、車いすで移動。それを助けるように西村と誠が横に寄り添う。
朝の診察では気持ちも体調も落ち着いている様子なのでと
医師立会いだけでいいだろうということだった。
それぞれがそれぞれ緊張しているのか一言も話しもできないままビルに入り
会見場がある階にエレベーターで上がる。
会見場の横の控室に入ると、隣りの会見場のざわめきが聞こえてくる。
今か今かと待ち構える記者たち。
TVカメラや局のアナウンサーや記者たちがその部屋で打ち合わせをしている様子が
手に取るように聞こえてくる。
少し震えている弓弦の手を握る西村。誠もそばにいて弓弦の緊張がわかるのか
耳元で大丈夫だとささやいている。
その後ろ姿を原田氏が見ていたのだけれど、その見つめる視線がやさしかった。
原田氏のその優しく見つめる姿は、
孫を送り出すためのさみしいがうれしいという複雑な感情も含まれているのだろう。

「すみません。記者会見が11時からなのですが
 ただいま10時半前ですけど、待ちも押していますので
 記者会見を始めたいと思っていますが、皆さん大丈夫ですか?」
「大丈夫だろう。なぁ、皆さん。」
 
「では記者会見の説明ですが初めに事件の事での会見となります。
 警視庁捜査一課の三上刑事ともう一人の方が出ていきます。
 で、事件発生からこれまでの事の話がありましてそのあとに川上社長山本社長。
 西村正弘さん橋本翔太さんそして原田弓弦さん。壇上に上がっていただきます。
 事件当事者となる西村さん橋本さん原田さんに質問が飛びますが
 三上さんたちとも話をされてたように、答えられて結構です。
 特に原田さん、西村さんにはかなりな質問が飛んできますが
 答えられる部分だけお答え願えればそれでいいです。」
「わかりました。」
「そして、事件の事については三上さんが閉められます。
 まだ捜査がきちんと終わっていないので、
 怪我をして原田さんが無事帰ってきたということろまでの話での記者会見です。
 そして、それが終わった後西村さんと原田さんの婚約記者会見となります。
 事件の記者会見が終わったら山本社長と橋本翔太さんは袖にはけてください。
 それと同時に吹奏楽連盟会長原田さん、壇上に上がってください。
 はじめに西村正弘さんと原田さんの婚約に関しての発表とアナウンスが入ります。
 それから、西村さんの自己紹介と原田さんとのなれそめを簡単でいいですから
 記者の質問も飛び交うでしょうが簡単にお願いします。 
 それから、原田さんが弓弦さんのさんの生い立ちの話をお願いします。
 その間、弓弦さんの方にも質問が飛ぶでしょうが笑ってごまかされてて大丈夫です(笑)
 きちんとおじい様である原田氏が話をいたします。
 それが終わってから弓弦さん西村さんを交えてのあいさつをお願いします。」
「なんだか緊張してきた。あたし大丈夫かな・・・・・。」
「みんながいる大丈夫さ。」
「大丈夫です、少し早いですが長引くことも考えていきましょう。皆さん大丈夫ですよね?」
「あぁ、わしも大丈夫じゃ。」
「俺も。さぁ行きましょう。何もやましい事での記者会見じゃないもん。」
「そうだな。翔太の言う通りさ。後の婚約発表までお祝い古語じゃないか。
 こんな晴れ晴れしい記者会見はない。堂々と行こう。」
「では。記者会見に入ります。」

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