森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 82

「ただいまぁ。」
「ただいま、そしてお帰り、久しぶりに自分の家だな。」
「毎日綺麗にしてくれてるんだ。ありがとう。」
「弓弦のこのうちは床がきれいだから、時間があるとき水拭きしたり
 手入れ大変だった。だけど、拭けば拭くだけだけきれいに輝く床なんだよな。
 引っ越ししてきてからは、誠さんもいろいろと教えてくれたし
 かなり庭の手入れも伯父さんから教えてもらって手入れ入れてたんだ。」
「そう。ここいいでしょう?うるさくもないし、景色はいいし。」
「こんな環境だといいよねぇ。静かに暮らせる。」
「でもあのマンション引っ越すのはもったいなく思えたでしょ。
 便利だし、事務所までちかいしさ。」
「でも、弓弦に取ったらここがいいと思うと俺にとってもここがいいかもって。
 なんだか自分が流されてそうで怖いな。でも、弓弦がいるこの家は
 大好きだ。家族に囲まれているって安心すごくいいなぁって。」
「西村さんのご両親は?」
「あぁ、うちも共にいないよ。唯一おばあちゃんが生きているけど
 おばさんたちが面倒見てるし老人ホームだし。」
「そうかぁ。でもきちんと挨拶しに行かないとね。」
「それは弓弦の怪我が治って歩くことに不自由しなくなってからだ。」
「そうだね。その時にはまた長崎seaさんにも連絡取って会いに行かなきゃ。」
「お前のネットの友達なの?」
「そうだよ、seaさんって呼んでるけどそれ以外は知らない。
 だけどあたしは信用信頼でつながってる大親友なんだよ。」
「そっか、そういう友人がいてもまぁな。いい友人を持てているということは
 弓弦のネット遊びもまんざら悪い遊びじゃないってことか(笑)」
「かなさんは西村さんと同じ年なんだよ。
 あたしseaさんと歳はなれてるけどすごくうまが合うんだ。
 一緒に居て楽しいし。すごく自然なんだよね。そういうつながり。」
「まぁ、今度は俺もその仲間に入れてくれ。(笑)」
「きちんと紹介するよきちんとね。」

「まささん、弓弦さん。準備できましたか?」
「渡辺。こっちだこっち。庭の方でやろう。」
「こちらへどうぞ。」
「ありがとうございます。初めまして、青洋文学社の秋田と申します。
 今回は私どもの取材を受けていただきありがとうございます。」
「お久しぶりです、秋田さん。」
「お久しぶりですん、西村さん。」
「初めまして、秋田さん。原田です。」
「初めまして、原田弓弦さんですね。今回は無事に帰ってこられてよかったですね。」
「えぇ。ありがとうございます。」
「AA社の森本さんの同級生と伺っていますが?」
「大学が一緒でした。秋田さんは森本さんをご存じなんですか?」
「えぇ。吞み友達ですよ(笑)だから原田さんのことはいろいろと。」
「そうなんですか。今回はお手柔らかにお願いしますね。」





 えっとそれではお二人のご結婚が決まりおめでとうございます。

 ありがとう。ここまで来るのに一苦労したんだ。
 こいつ全然俺の事何にも思ってなかったらしくって。

 いや、西村さんて世間一般に有名で人気のある歌い手でしょう?
 そんな人の彼女にだなんて怖かったもの。

 そうですよねぇ。西村正弘さんと言えば人気絶頂のタレントであり
 歌い手であり、毎回ツアーでも満員御礼のスーパーアイドルですものね。

 そんな人から好きだと言われてまともに信じられますか?

 西村さん。原田さんとの年齢差が15歳ありますが
 どうやって知り合われたんですか?

 どうやってって。6年も前だっけ?

 だね。6年ほど前か西村さんとあたし、高校が同じなんですよ。
 で、その高校のOB会がこっちであってその時に初めて知ったというか。

 恩師と会えると思ってきてた弓弦は、会場に来ている人に恩師のことを訪ねてて
 恩師が来ないと知るとそそくさと帰ろうとしてたんだ。
 その時に俺が声をかけた。それがきっかけだよな。

 そうそう。先生が来ないんなら意味がないなって思って
 バイトもあるしって帰ろうと思って部屋を出ようとしたら
 思いっきり長崎弁で、「そこん人帰ると?」っていうんだ。

 おれさ、バイク乗り回すだろ。背が高くてさ皮のツナギ着てて
 この顔だろ?まるっきり男に見えるだろ。
 始めは俺は男と思って話しかけたんだ。見て。
 今こいつは肩まで髪が伸びててきちんと女に見えるだろ?

 えぇ、弓弦さんってきれいな人に見えます。

 それがさ、どこから見ても男にしか見えなかったんだよな。
 髪が短いし目つき悪いし無愛想だし(笑)

 まるでいいところなかったんじゃないか(汗)

 いやいや、本当に男だっておもったんだけどさ
 部屋が暑かったのか上を脱ごうとしてジッパー下げたら胸がボンッ!だろ
 びっくりしたって。正面から見るとデビューしたての橋本翔太に似てたし。
 
 そうでうよねぇ。あたしも今日初めてお会いしたのに、
 この間橋本さんとの仕事があって顔を合わせたばかりだったので
 えぇ?って思っちゃいましたもの。だけど笑顔はすごく女性の笑顔で。

 弓弦はさ、自分が翔太に似ているということ初めはあまりよく思ってなかったんだよな。

 えぇ、だって他人に似ているというとその人のイメージが付いちゃうじゃないですか。
 だけど、バーテンダーで頑張り始めて顧客を作ろうと頑張っているのに
 そういうのでは覚えてほしくなくって。
 そういうので顔を売るのには自分の力でって思ってたから
 すごく嫌だった。けど、いとこがM'scompanyにいるんですけど
 その縁で本人と会うことができ、人柄に触れることがあったんです。
 それからは似ていると言われても嫌な気分にはならなくなった。
 それよりもなんだかあっちが3つも上なのに、兄弟みたいな
 弟みたいな感覚になっちゃって。
 西村さんといないときは一緒につるんでること多くなったかも。

 そんなに仲がいいと西村さんも焼けますね(笑)

 多分、表面だけが似ているんじゃなくって人としての根本的なところが
 似てるのかもってそう思えるときがあるんですよ。
 プライベートでも翔太君とは俺もちょくちょく時間があると遊びに行ったり
 吞みに行ったり家に遊びに来てもらったり行ったり、
 弓弦を介して仲良くなったんですが、一緒に居ると
 こいつらよく似てるなぁって所、多々ありますよ。まるで双子的なやつらですね。

 そんなに似てるの?あたしと翔太君と。

 そっくり、何から何まで考え方まで。

 西村さんはきっと原田さんを自分の手から放したくないように
 翔太君も他の人には渡したくないような感情に駆られてくるんでしょねぇ。

 あいつの嫁は俺が決めるって感じですかね(笑)

 ところで、西村さん原田さん。

 なんですか?

 今回の事件は怪我をした3人特に誘拐された原田さん特にですが
 会見では警察の方はいったん3人の件は終わると申されましたけど
 これで終わるのでしょうか。

 いや、終わってもらわないと。
 暴力団組員とはいえ組と関係ないところで強盗をし逃走するために
 けが人をだし弓弦を誘拐した。
 だけどそれだけを考えたら、犯人たちが逃げる際に事故で死亡したけど
 弓弦が生きて帰って来た時点で事件は終わりさ。
 終わろうよ。いつまでもそれを考えていては前に進めない。
 組員だろうが誰であろうが、罪を犯した人間は神様が罰を与えた。
 だから俺と翔太と弓弦に対してはもう終わったこととしたいんだ。

 そうでないとせっかく弓弦の怪我が治りはじめ骨折箇所も具合がいいし
 歩けるような準備も始まっている。
 
 そしてね。そして、あたしの仕事がもう決まり始めているのよ。
 秋田さん、あたしの仕事M'scompanyの方のアルバムへの参加。
 そしていろんな仕事が来ているのよ。
 だから、いつまでもそれを気にしていては前に進めない。
 前に進むためにはそれはそこで終わらせないといけないのよ。
 
 原田さんはもともと`mask´のバーテンダーですよね。

 えぇ。母がもともとバーをやってましたから。

 原田さんのお母様のお話をお聞きしたいのですが。

 あたしの母の事?

 原田弓弦さんのルーツ。原田弓弦さんの原点。

 あたしのことは知っておられるのでしょう?

 えぇ、吹奏楽連盟会長原田一郎氏のお孫さん。
 且つ、バイオリニスト原田孝一郎さんの一人娘。
 それはそれでいいんです。
 でもバーテンダーをがんばられているということは
 原田弓弦さんの原点はお母さまにあるとあたし思ったんです。

 あたしの母は、銀座のバーに勤めてたんですって。
 父と母は、そのバーで知り合い結婚したそうです。
 母は、のんきな人で何があってものほほんとした人でした。
 物心ついた時から父と母の笑顔に包まれあたしは幸せだったよ。
 それが父が亡くなった時も母はあたしがふさぎ込まないように
 いつも父の分まで笑顔で包んでくれたんだ。 

 お母さまは頑張る人だったんですね。

 えぇ、だから自分の家の仕事とはいえバーだから
 本当は未成年だから手伝ってはいけないんだろうけど
 でも、母が一人頑張っている後姿を見てたらやっぱりさ
 手伝ってあげたいって思って中学に入った時から手伝い始めた。
 いろいろと問題にされたこともあったけどね。
 先生からも何度も言われた。やめるように。
 手伝うのならば別の別の何かがあるはずだって。
 だけど、あたしは母のような人間になりたかった。
 母のようにみんなに愛されてみんなに頼りにされいる母のように
 なりたかったんだ。あたしにとっても母は母以上の存在だった。
 だから、誰に何を言われようとも母のそばで母の手伝いをし
 いろんなことを覚えた。料理の事。バーに携わることすべての事。
 高校卒業するまでいろいろと教えてもらったなぁ。

 本当におかあさん思いだったんですね。

 でも母は頑張り過ぎて自分のことはおざなりになってた。
 体調が悪いと病院にかかった時には遅く、癌だと分かった時には
 すでに遅かった。体中に癌が転移していて手遅れだった。
 だけど母は、あたしに心配させないようにしてたんだけど
 お爺ちゃんには先に連絡を入れてたんだって。
 あたしが一人にならないように。

 お母さまはあなたのことが心残りだったんでしょうね。

 母が亡くなる前のひと月余りを教授に頼み込んで授業を休んだんだ。
 母についてあげたくて。たった一人の親だもの。
 母の元彼に連絡を入れて、元彼と一緒に長崎に帰り母を見送ったんだ。
 悲しかったなぁ。一人になってしまったという悲しい気持ちが
 少しの間、荒れてしまったけど。
 でもそれではだめなんだって父も母も空の上から
 悲しい顔をしてみてるんだと思ったら喧嘩もしたくなくなった。
 よくさ、本当に喧嘩してたんだ。店の仲間同士でも、通りすがりのやつとも。
 だけどオーナーがあたしをしかりつけたんだ。
 初めてだった。両親からもそんなに怒られたこと殴られたことなくって
 初めて他人から、怒られた。平手打ちを食らった。
 そんなことをいつまでもやっていると豚箱行きだって。
 お前は、この世に生まれた大切な命なんだって。
 両親が命を懸けて愛情を注いたお前なんだから体と命は大切しなと
 怒られたんだ。目が覚めたよ、その時目が覚めた。
 それからは父と母に恥ずかしくないようにしなければいけないんだって。

 気持ちが入れ代わった瞬間ですね。

 えぇ。空の上に行った今はあたしのことをきちんと見られているだろうから
 何事にも真面目にやろうって思ったんだ。
 だから誰にも負けないようにバーテンダーの仕事も頑張ったんだ。
 
 俺が弓弦を知ってから、あの`mask´に行ったときさ
 あの中では一番に輝いてたように思えたなぁ。

 そうなんですか?

 西村さんは大げさだなぁ。そんなことあるはずないって。
 西村さんが初めて来たときはさ、まだ独り立ちしてなくって
 誠さんの補助だったんだから。

 だけどお前さ、すごいいい笑顔で誠さんの横にたってて
 きちんと自分の役割を果たしてたじゃないか。
 だから他の人よりも上達早かったんだろうし、
 自分のブースを与えられるのも早かったんだろ?

 そんなに。原田さんは頑張る人なんですね。

 頑張るというかきちんと自分を知って自分とその周りにいる仲間のことを
 きちんと気を配りはじめたらできることばかり。
 今はあとから入ってきた人間をきちんと育てることもその一つだと
 思い始めました。
 だから早く怪我を直し自分のカウンターに立ちたい。
 
 右肩鎖骨の骨折と左肩甲骨の骨折。
 それだけなのですが、かなりもう動けるようになったんですよ。

 早くシェイカー振りたいでしょう?

 えぇ、早くきちんとした動きでシェイカー振りたい。
 そして早くカウンターに立って待っている人たちに無事に戻ってきましたって
 そういった姿を見せたい。
 父にも母にも恩師にも慕ってくれている仲間にも。
 そしてたった一人のお爺ちゃん。たった一人の兄。
 これからあたしと共に時を刻んでくれる西村さんにも。
 あたしを本当の子供の様に育てたおじさんと伯母さん。
 本当の双子みたいに育ったひかり。
 みんなにあたしはここにこうやっているよと見てほしいんだ。
 だからそのためにも頑張るんだ。

 ところで原田さん。そんな一生懸命に突き進むバーテンダーの仕事の合間に
 西村さんのアルバムを手伝っていますよね?

 あぁ、5年前ぐらいからだったっけ?

 俺のアルバムの4枚目からだな。多分。

 それはどうして手伝うようになったんですか?

 それは西村さんが手伝ってって言ったんだよね。

 弓弦はさ、なんでもできるんだぞ。
 高校の時から打楽器とかをやっててさ、これやってって言うと
 完ぺきにこなすんだ。やっぱり音楽一家の孫なんだよな。
 譜面みせて俺が歌って、それに合わせてって。
 するとさぁ、何回かで完璧なんだ。まるで俺のために弓弦がいるかの如く。

 原田さんの実力ってそんなにすごいんですか?

 実力っていうもんじゃない。比べるものがないんだって。
 仲間とともに自分があるんだっていう感じでさ
 一つ一つ言葉が弓弦の奏でる音と一体化してすごいんだ。
 俺の音が生き生きとそこで流れるって感じだった。
 それからだよな、弓弦。曲を出すたびに弓弦に手伝ってもらったさ。
 弓弦も快く引き受けてくれて俺はうれしかった。
 仲間と共に弓弦が一緒になって俺の音に命を吹き込んでくれていると
 そう思えた。だからそれ以後は、曲を作るたびに弓弦に手伝ってもたっている。
 俺の曲は弓弦のためにつくり弓弦のちからで息を吹き込まれ
 仲間のちからで世に生まれ出ているんだ。

 西村さんの歌は仲間と原田さんの愛情で作り上げられているんですね。

 あぁ、そうだ。
 だからこの事件で弓弦がこの世のからいなくなってしまっていたら
 もう俺は歌えなくなった。
 歌を作ることさえも愛することさえもできなくなったかもしれない。
 生きて帰ってきてくれた、だから俺はまた一生をかけて歌を生み出し
 仲間のちからで弓弦の愛情で送り出せる。
 それが一番うれしいんだ。
 だから、結婚することで共に人の道を歩めるのならば
 俺には何も怖いものはないとそう思えるようになれた。

 あら、原田さん?

 見ないでよ。恥ずかしいじゃない。

 泣いたのか、バカだなぁ。

 泣けること言うからじゃない。

 愛され愛してるというつながりがあたしにも見えたかも。
 いいなぁ、原田さんがうらやましい。
 そういういい人あたしも見つけなきゃいけないな。

 とりあえず、取材はこれで終了です。
 次の西村正弘さんのアルバム期待してますね。
 あとは写真。写真っと。きちんとお願いね荒木カメラマン。
 
 OK!
 
 

二人の写真とかもこの暖かい陽射しの中で一番いい笑顔を言われ
むつかしい表情をする二人。リビングで取材を受けながらも
その取材中ずっと写真を撮られている二人。
最後にカメラマンの人から、どれを使っていいかと
たくさん撮った写真になかから数枚を選び、それを今回使わせてもらうと
そう言って取材が終わった。

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