森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 185

「ねぇ、あのさ翔太君。ちょっといいかなぁ。」
「どうかしたんですか?弓弦さん。」
「ん・・・・。ちょっと相談というかさぁ・・・・・。」
「今の電話のことですか?」
「俺いていいのか?」
「貴志・・・・まぁ、まだ帰らなくてもいいなら居てよ。」
「ん。話がすんだら翔太あそぼう。」
「そうですね。で、弓弦さんどうかしたんですか?」
「んとねぇ。」
「何考えてるんですか?何か言われたんですか?」
「貴志は退院後の翔太君・・・・・。」
「僕のことで何か・・・・何か言われたんですか?」
「今の電話はうちのお爺ちゃんからの電話だったんだけどさ。」
「弓弦さんに用事ででしょうか?」
「翔太君に用事。良ければねということなんだけどさ、うちのおじいちゃん。
 やっぱり翔太君の退院後の面倒を見たいらしいのよ。」
「僕の?・・・・ですか?退院後は西村さんと弓弦さんの家で療養するのではなくって
 弓弦さんのおじいさんちに決定なの?」
「たとえね、たとえまささんとあたしで翔太君の面倒を見て達哉君たち4人やマネージャーさんと
 みんなで翔太君の手伝いをするとしてもやっぱり仕事とかでいろいろと動くでしょ?」
「そうだなぁ・・・・。きっとみんなの予定が少しでもくるってきたら翔太独りになるなぁ。」
「あたしもそれは思ったんだけど、あたしについて動くようにしたらいいんだって思ってたんだけどさ
 確かにまささんとのライブが2回入ってるでしょ?それにはなさんもみんなみんな忙しいし。」
「それなのに僕のわがままを聞いてくれて本当にすみません。でも家に帰っても一緒だと思うし
 僕の存在が今現在の時間の流れの中で迷惑な存在なんだとわかっているんですが
 甘えれるのは僕の中で弓弦さんと西村さんしかいないと思ったんです。
 本当にすみません。こんな僕でも足手まといにはならないようにしっかりしますから。」
「翔太君の判断を間違っていると、迷惑だと話してるんじゃないのよ?
 違うの。おじいちゃんが話して分かってほしい意味と翔太君を取り囲むすべてのことを考えて
 きっと提案してくれたんだと思うんだ。」
「僕を・・・・・・。」
「そう、翔太君の療養先。うちのおじいちゃんちに決定していいかって言われてるのよ。」
「だって大変じゃないのか?弓弦。
 月城さんのお兄さんの来日で弓弦の実家にしばらく居るんだろ?バタバタなんじゃないのか?」
「でも、あそこは・・・・。」
「待てよ・・・・・???弓弦、弓弦の実家が正解かもしれないぞ。
 お前のお爺ちゃんが正解だな。よく考えても考えなくても正解だよ。
 翔太、お前その方がいい。弓弦さん、それ正解だよ。
 甘えているんじゃない、みんなが一番いい翔太の療養先じゃん。」
「誰がどんな時でもあの家には人がいる。
 翔太君に何かがあって手がほしいとき的確な手が傍にあるもんね。
 ねぇ、翔太君そうしよう。そうしない?誠さんもいるし姉さんもいる。お爺ちゃんもいるし
 秋元さんもいる。来日後はバタバタしてたってジャニスがいる。
 それにお爺ちゃんのためにあそこには看護師さんが家政婦としてどんな時間もいるから
 何かが起こってもどんな状況でも大丈夫。」
「あの・・・・僕は・・・・。」
「何か都合悪い?悪くはないでしょう?うちよりも手があるし。」
「いいんでしょうか・・・・そんなに甘えて。」
「たぶんね、あたしにそっくりな翔太君を見て手元で面倒を見たくなったんだと思うよ?
 あたしみたいにおせっかいやきなお爺ちゃんなんだもん。
 ほぉって置けないんだと思うんだ。
 おじいちゃんのわがままなんだろうけどでも、あたしもしばらく一緒にいる。
 おじちゃんちにまささんと一緒に泊まり込むから。翔太君が大丈夫と思うまで。
 きっと誠さんいるから悠太君が一緒に泊まり込むと思うけど。」
「僕、甘えていいんですか?本当に?父さんと母さんに電話していい?」
「大丈夫きちんと説明できる?よければ退院後大泉のうちのおじいちゃんちに。
 あたしもまささんに連絡入れる。良ければすぐにみんながスケジュール決めてしまわないうちに
 連絡を入れないといけないし。」
「翔太、今のうちだぞっ。早く電話しな弓弦さんと俺が傍にいるんだ。
 自分の考えをきちんと整理して話したらいい。そばにいてやっからよ。」
「はい、えっと・・・・僕の携帯。」



貴志が弓弦と話をしながら窓辺にいる横で翔太はまず父に電話を入れて話をする。
もちろん父からはそこまで甘えていいのかと翔太にもう一度考えさせたが
弓弦さんも今お見舞いに来ている先輩も何より原田が提案してくれた話なんだと
きちんと説明をしている。そしてそれに甘えようと自分も思っていると。
今の自分はこうやって自分のことを考えてくれている人を頼らなければ
早くに復帰することはできないだろうと思うと。
10分ほどの電話する会話の中で父を説き伏せ話をきちんと決めたらしい。
すぐに翔太は事務所に電話を入れた。そこで西村さんや月城さんリーダーや熊さんたちが集まって
これからのスケジュールの打ち合わせをしているはずだとそういって事務所に電話を入れた。




「M'scompany 電話を受けましたのは交換手橘です。」
「あの、橋本です。」
「あの??どちらの橋本様でしょうか?」
「Martinの橋本です。」
「えっと・・・・え?橋本翔太・・・さん?」
「はい。あの・・・・・。」
「この電話は携帯でかけられていますか?」
「はい、自分の携帯で。」
「では、番号の確認をいたしますご本人であるかどうか生年月日をどうぞ。」
「1983年8月29日です。」
「ありがとうございます。番号の照会が終わりました。
 橋本様、直接用事のある部署にお電話したらよろしかったのに。」
「すみません、今の僕ではどうしたらいいのかが分からなくって。」
「そうでしたね。体調はいかがですか?皆さん心配してますよ?」
「体調はいいです、たぶん退院もすぐだと思います。
 一度ご迷惑かけたと顔を出さなきゃいけないのですが
 まだ動きが取れなくって。すみません。」
「いえ。で、今日はみんながそっちでスケジュールの確認するのに集まってるはずなんですが。」
「えっと少々お待ちになってもらってもよろしいですか?確認いたします。」
「お願いします、少し急いでいるのですが。」






「ねぇ翔太君どこにかけたの?」
「えっと事務所の代表番号。」
「あのさ・・・・・・直接達哉君か熊さんの携帯に書ければよかったんじゃない?(笑)」
「あ……(汗)」





「お待たせしました、まだ会議室で打ち合わせされているみたいですね。おつなぎします。」







「はい、第3会議室です。」
「あの・・・・翔太です。」
「あぁ、どうしたの?熊さんに用事?」
「んと・・・・そこに誰がいるんでしょうか・・・・・。」
「4人とマネージャーと熊さんもいるよ。ていうか私の事わかってないみたいですが???」
「えっと・・・・すみません。」
「達哉君のマネージャーの入江ですよ(笑)」
「すみません、どうしても早く知らせなければって思って電話したんです。」
「代わりますか?ちょっと待ってください。」


(リーダー!翔太君から電話です!急ぎみたいですが。)
(はぁい、どうしたんだろう)



「ほい、達哉だよ。どうかした?翔太ぁ。」
「あのさ、ちょっと前に弓弦さんのお爺さんから弓弦さんの方に電話があったんだけど。」
「俺らの方も打ち合わせがすみそうだったんだけど??」
「ん・・・・基本退院後は療養ということ変わらないんだけどさ、
 弓弦さんのお爺ちゃんがうちに来いって。」
「はい?」
「だから弓弦さんのおじいちゃん!」
「が?はぁ?ちょっと待って。」





「今さぁ翔太から電話なんだけどさ、弓弦さんのおじいちゃんが翔太の面倒?
 退院後の療養先を大泉の方にって電話があったらしいんだけどさぁ。」
「ん?弓弦に確認してみようか?」
「西村さんお願いします。」



   `tururururururururu tururururururururururu´

「弓弦?」
「ただ今この電話はお取次ぎできません(笑)」
「ゆーずーるー!まったく(笑)」
「翔太君のところにまだいるんだろ?」
「えぇ、貴志と一緒にちょっと前に帰ってきたんだ。」
「で?」
「で?っておじいちゃんの事?」
「そうそう、まささんは反対しないよね?貴志もその方がいいって言ってるしあたしもそう思う。」
「そっか、でも俺もそう思うな。原田さんのそれ俺も乗った!」
「まささんまで。もしかしてお爺ちゃんちにしばらくは一緒にいるとか言わない?(笑)」
「それもいいな。とにかくそれでみんなと調整する。
 で、原田さんに直接ありがとうございますってお言葉に甘えてって連絡入れたらいいのか?」
「そうだね。大丈夫?」
「大丈夫、んじゃ。」





「まささん乗り気だ(笑)」
「おい翔太、お前父さんに電話!忘れたらだめだぞ!早く電話入れないと。
 弓弦さんのおじいさんちで決定だって(笑)」
「そうですね、ちょっとお父さんに電話入れてみます。」

翔太は自分の父に慌てて電話を入れる。
原田氏が自分をそこまで気掛けてくれているとは思いもしていなかったし、
弓弦に電話で面倒を見ると弓弦に電話をかけてきた。
翔太にとっても周りにとっても弓弦や西村や誠にとってもきっといいに決まっていると
話を聞いてから思いはじめ、父を説得するためにいろいろ考えながら電話をしはじめた。
貴志は一生懸命な翔太の横顔と、
別に電話をしている弓弦の顔をと見比べながら笑って窓際にたたずんでいた。
少しすると自分の携帯の方も気になったのかポケットの中方出してメールを確認している。
一つ電話が終わると手配をお願いしているのか弓弦がまた別に電話を始めた。
それでもまだ翔太は父と電話で一生懸命にやり取りをしている。
まだまだ説得は続いていうようだったが弓弦の方が欠けている方はなんとかうまく行きそうな感じだった。
電話が終わった弓弦にふと貴志が声をかけた。

「なぁ、弓弦さん。」
「どうしたの?貴志。」
「せっかくさぁ、翔太のサイズわかったんだからさぁショップにちょっと行って頼んでくる。
 きっと早い方がいいと思うしさ。こんなに退院後の話が進んでくるとお祝いも早くって思えてさ。」
「行くの?そうだね。ここ数日で退院の話って言ってたみたいだからその方がいいかもしれない。
 貴志、お願い。そのお祝い割り勘にしよう。あたしも半分出すから。」
「んじゃ、決めてくるよ。翔太も俺とおそろいのピンクでいいよな?」
「まじめにピンクをですか?」
「当たり前じゃん(笑)」
「きっと似合うって、大丈夫。店内でそろえてみようよ。貴志、頼んだ(笑)」
「OK(笑)んじゃ、今日はこれで俺失礼するから。また今度な。」
「また(笑)また来てくださいね、待ってますから。」
「おぅ。」

せっかくの休みで気ままにショッピングを楽しむはずだった貴志なんだろうが、
弓弦と一緒にうろうろできたことがうれしくって
自分が買い物に出た本当のことを思い出せずにそのまま帰宅の途についた。
翔太の退院祝いをショップに注文して、
そのあとは自分でも本当は何を買いに出てきたかを忘れてしまっていた。
一方弓弦は貴志が買ってくれた退院祝いの白のシャツと自分で買った黒のシャツを翔太に見せて
あれこれ説明しながら話し込んでいると`夕飯ですよ´と声をかけられ、翔太は届けられた食事を
弓弦はその場をそのままにして夕飯を食べに出かけて行った。

弓弦が部屋を出ていくときに配膳の人とすれ違いだった。
「ご飯食べてきます」と「気を付けて行ってらっしゃい」と声を掛け合い、
会釈してエレベーターで出口に向かった弓弦。
病院の出入り口を出て歩いて向かう。
つい先日まではリハビリだなんだと言いながらも自分自身も怪我人だったくせに
退院してひと月たった今では、何事もなかったのように颯爽と肩で風を切りながら建物を出ると
駐車場の入り口を横切り外へ出て行った。左手に曲り信号が青になるのを待っている。
小さい三つ編みの幼稚園と思われる制服を着た女の子がにこにこしながらお母さんの手を握っている。
`お母さん、まぁだ?´と手を引っ張りながら笑っている母の顔を覗き込みながら話しかけている。
微笑ましい一コマを横目に見ながら青になった信号を渡った。
少し行くとこじゃれたカフェが見える。オープンしたばかりなのか、外から中を覗いてみると
カウンターらしきところにふさふさとしたひげを蓄えた男の人が一人たたずんでいる。
まっすぐと発つ姿勢はその人の物腰の良さを表しているのか黙って目をつぶっていた。
しばらく外の街路樹のそばで電話をかけるふりをして立ち窓から見ていたが、
その男性が奥に行きステレオから古そうなレコードをだしほかのと入れ替えている後姿を見ると
弓弦は気になってしまいドアを開け入っていった。



   `karan koron´




「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
「ありがとう。ここいいですか?」
「どうぞ。ご注文がお決まりになられましたら・・・・・。」

男性がそう言い切る前に、弓弦はリクエストをした。



「レコードたくさんあるんですね。」
「えぇ、わたくしの昔から集めて持っていたこの世で一番愛おしいレコードたちです。
 何か聞きたいのがありますか?」
「あたしAudrey Hepburn が大好きで特にローマの休日。
 で、それが上映されていた1953年ぐらいの年の曲がいいかな。何かありますか?」
「1953年ですか・・・・・。Ornette Coleman, とかはどうでしょう。」
「マスターのお勧めなら・・・・お願いします。それとあたしブレンドとえっと・・・・軽く・・・・。」
「なんにしますか?ブレンド・・・・ですか?御嬢さんならモカあたりがお口に合うかと・・・・。」
「んじゃ、モカで。で・・・・。」
「メニューにあるものでお選びいただけたら・・・。」
「んじゃ、ホットサンドミックスで。」

そう注文が入ると後ろの方に声をかけてから、レコードを入れ替えに行きレコードを入れ替え
コーヒーの豆を計りながら昔ながらのミルで引き始めた。
男性の背中側には硝子戸の棚がありそこに結構な数のコーヒー豆が置いてある。
その中から選んだ豆を丁寧に挽きこれまでずっと使いこまれたような色をした
コーヒーポットからサイフォンの下部にいれる。合わせ挽いたものをサイフォンに入れた。
挽きたてのコーヒーの匂いに一瞬目がそこに行ってしまった、
すごく柔らかくコーヒーにしてはかなり甘い香り。
アルコールランプに火がひり、ふつふつと時間が動き出した。
最近では珍しい天秤式のサイフォン。普通は縦にガラス部分が並ぶのだけれどこれは天秤式。
オデットと呼ばれるそれとはまた違う。アルコールランプで加熱されるガラス部分が違うのだ。
陽が入って動き出したそれを弓弦はじっと見つめている。本当は手元に一つ本を持って入ってきたのに
それを開きもしないでじっと流れてくる音とサイフォンの音とに耳を傾けている。


「お待たせしました。先にホットサンドミックスを。」
「ありがとう。」


その人がサンドイッチを持ってきたその後ろで`カタン´と音がするとすぐに後ろを向き
注文のコーヒーを持ってきてくれた。
白い青磁のコーヒーカップに香り立つコーヒー。銀のスプーンがキラキラと光っている。

「ご注文の`モカ´です。お変わりは何度でもよろし良いですよ。お気に召しましたらいいのですが。」
「ありがとう、本当に良い香りです。いただきます。」


そろったコーヒーとサンドイッチで軽く済ませようと食べ始めたが
せっかくかけてくれた音をかき消すように
消防車が難題も救急車やレスキューと一緒に店の前を走り抜けていく。
騒がしいですねぇと話をしながらも走っていった方向が病院の方向だったので気にはしていた。
一瞬騒がしかったがのんびりと食べながら流れてくる音を弓弦の耳はとらえていて周りのことなど
気にしてはいなかった。
本を開いたまま耳は音に集中して男性がコーヒーを足してくれたことにも気づいていなかった。

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