森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 189

緊張した夜が明けた。病院での事故は限りなく被害も甚大で朝を迎えた今日もきっとあの病院では
事故処理と怪我をした患者たちの治療や移送先で使うカルテの整理や緊急処置しかしていないため
まだまだ搬送は続いていた。
そんな中本当に事件での怪我とはいえ大久保先生を頼りに翔太の治療を頼むことができ
早い処置ができて運がよかったのかもしれない。
弓弦が目を覚ました6時前。窓の外はすでに明るく、眩しい光に包まれていた。
ふと翔太の方を見た弓弦。
まだ起きださないのか意識が戻ってこない翔太の顔は普通に寝ているときの顔のように見えた。
弓弦は起きて窓の外を見た。何となくそこは元居た病室の階と同じような気がした。
よくよく部屋のドアを開け周りを見回すと、少し先にICUが見える。それと続きの部屋のなのだが
窓の外は自分が入院していた時の眺めとやっぱり同じだと思い外に出てみた。
その部屋の階は2つほど下の階になるがやっぱり駐車場に面した病室。
先生が言っていた`勝手知ったる何とか´というのを思い出し笑ってしまった弓弦。
病室を出て顔を洗いに部屋を出た。3階とエレベーターのドアの上に表示があった。
朝ごはんは久しぶりに食堂に顔を出してみようと思い一度部屋戻り自分のバッグだけを持ち
食堂へ向かっていった。
2階の食堂へ行き`お久しぶりと´`おはよう´の声が飛び交う。もう逆戻りで帰ってきたのかと
いろんな声で笑わせられ食堂では一塊賑わうテーブルができていた。
賑やかな時間になった朝食が済むとまた診察があるからとか
リハビリだとか言ってみんな散り散りになっていく。
弓弦も翔太のことが気になったのかまたあとでねと言いそそくさと翔太が眠っている病室に戻っていった。
時計を見るとまだ8時前。窓から外を見ると明るいいつもの朝の風景が見えている。
`ガタンッ´と弓弦の背後から音がした。






「ん・・・・・・あぁぁぁぁぁ・・・・・・っ」





びっくりした弓弦は慌てて翔太のそばに行き声をかける。





「どうしたの?どこか痛いの?」

あまりの痛さに言葉にならないのかベッドの上で暴れはじめた翔太。
弓弦ではどうにもできずに呼び出しボタンを押す。




「どうしました?橋本さん!どうしたんですか?」
「・・・・・あぁぁ・・・・・・・っ!んっ!」
「先生を!誰か先生を呼んで!」

弓弦は看護師たちに翔太から離されて壁際に立ち尽くしている。
怖くて翔太がどうにかなってしまうのではないかと思わんばかりにベッドで暴れる翔太。
そんな中携帯が鳴った。

「おはようございます、弓弦さん。」
「あぁ、橋本さん!早く早く来てください!翔太君が・・・・翔太君がっ!」
「翔太がどうかしたんですか?」
「あの・・・・早く!」
「今駐車場にいます。すぐに!すぐに行きます!」





弓弦はあまりの尋常ではない翔太の暴れ方に怖くなり泣き始めていた。
先生が来て翔太を診察室に連れて行く。暴れる翔太を押さえベッドごと診察室へ。
その時翔太の父が部屋の前まで来た。



「どうしたんですか?翔太は?」
「橋本さん・・・・怖かった・・・・いや、怖い。翔太君どうなるの?」
「どうしたんですか、翔太。」
「起きたと思ったら痛いのかどうなのか呻き始めて暴れて・・・・看護師さん呼んで先生呼んで
 今連れて行かれるところだったんです。」
「橋本さん!橋本さん!大久保先生が治療室に行きましたのでご一緒に。お願いします。」
「はい・・・・翔太は・・・・・。」






「お父さん、ちょうどよかった。今からCT室に行きます。ちょっと時間がかかると思いますが・・・。」
「あとで母が娘と来る予定だったのですが・・・・。」
「・・・・昨日の段階では命に別状はないのですがこの痛がり方がわからない。
 今鎮静剤を投与しました。しばらくすると落ち着くでしょうからそれからCTに入り
 それ次第ではということで。」
「よろしくお願いします。」


そう話をしている横で弓弦はがたがたと震えていた。見たことのない翔太。痛がっていたのだろう。
翔太のその様子にびっくりしてしまい泣いていた弓弦の方をそっと抱きしめソファにかけさせる橋本。
もうすぐ妻も妹も来るから、翔太は昨日言われたとおりに大丈夫だから落ち着こうと話しかけられていた。





しばらくして落ち着いてソファに座ることができるぐらいにまで落ち着いた弓弦、
そして横に座りドアを見つめる橋本。
そんな二人のところに案内されてきた母と妹。
受付で看護師から翔太のことを聞かされ不安な顔をしてその場に来たのだ。
そして弓弦をはさんで翔太の両親と百合子と静かに時間の流れの中待っている。








「橋本さーん。橋本さーん。大久保のところまでお願いします。」



呼ばれたのは先生と翔太が検査室に消えていき20分ほどしてからのことだった。



「橋本さん、こちらへ。ご家族ご一緒ですね?原田さんもこちらへ。」
「・・・・・はい・・・・・。」
「原田さん、そんな泣きはらって(笑)昨日大丈夫って言ったでしょう?」
「だって先生、あんなにあんなに翔太君・・・・。すごくこわかったんです。
 どうにかなってしまいそうで怖かったんですよ?」
「まぁ、あんな暴れ方をしたら怖いでしょうがたぶん麻酔が切れて痛かったのでしょう。
 それと彼は吹き飛ばされたときにけがをしたのでしょう。肋骨の左側一番下の骨がおれていました。
 暴れたときに打ち付けたのか昨日の検査の時はひびが入っているぐらいだったのですが
 さっきCTで全身検査したらぽっきりとおれてずれていました。痛いはずです。」
「翔太には・・・・あの、翔太には・・・・。」
「大丈夫です。今は鎮西剤で眠りましたが1時間ぐらいで気が付くでしょう。
 また痛いと騒がないといいんですが
 彼は元気な分暴れるのにも力加減しないで思いっきり暴れるみたいで(笑)」
「よかった・・・・・本当にびっくりさせて。」
「病室に移動します、ご一緒にどうぞ。
 あ、それとご両親はこれからのことをお話ししないといけないのですが。」
「わかりました、百合子は・・・・」
「百合はこのお姉さんと一緒にお兄ちゃんのところに行くわ。いいでしょう?」
「そうか、弓弦さん頼めますか?」
「えぇ、大丈夫。大丈夫です。百合ちゃん、一緒に行こう。」
「えぇ。」

大久保のところにご両親を残したまま弓弦が百合子を連れて看護師が翔太を病室に連れて行くとき
一緒に病室へ向かった。
百合子は弓弦の腕にしっかりと自分の腕をからめ一緒に病室へ向かった。



「ねぇ弓弦・・・・さん?」
「なに?百合子さん。」
「百合でいいよ、そんなにかしこまらないで。」
「なに?百合ちゃん。」
「弓弦さん落ち着いた?」
「うん・・・・ちょっとね。」
「そうね、ちょこっとだけみたいだね?(笑)」
「そう感じるんだ。」
「だってまだ声が震えているもの。でもお兄ちゃんとそっくり。声がそっくり。」
「そぉ?」
「うん。でさ。」
「ん?」
「お兄ちゃんの事、ありがとうね。」
「百合ちゃん・・・・。」
「また泣いてる?弓弦さん。」
「だって・・・・・だって本当にびっくりしちゃって。」
「でも先生は大丈夫ってお話しされたわ。もう落ち着かないとね。」
「そうね、そうだね。でないと翔太君が起きたときあたし泣いてたら不安にさせちゃうものね。」
「そうそう。」



そういって弓弦と二人話をしている。
目の前のベッドにはまだ翔太は気が付かないまま横になっていた。
百合子と弓弦と気が付いていない翔太だけの部屋、静かに時間が流れて行く。
ただ社長や達哉にも朝からのことを伝えなければと、メールだけは送っていた。
その返信が来ていたのだけれどもまだ読んでいなかったが、百合子が話をしている間にチェックし
病状が落ち着いたら面会ができるだろうとメールを返した。


10時になるころ、看護師が様子を見に来たときは眠っている翔太の横顔も変わらず、
そのそばでいろんな話をしている弓弦と百合子も変わらず
たくさんのこれまでの話をしている様子に変わりはなかった。
しかし、麻酔が切れて意識が戻るころだと看護師が伝えていたために、話に夢中の二人に
よろしくお願いしますねと声をかけドアを閉めた。
先生と詳しく話をしていたのか父と母がそろって部屋に来たのは11時前。 そしてまた4人で話をしはじめたのだった。翔太のベッドに背を向けた形で話していた4人だが
ふと`がさっ´音が聞こえ翔太の方を見ると寝返りを打ったのか布団から左腕が出ている。
もしやと思い4人近づいて翔太に声をかけると顔の表情が変わった。





「・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・。」
「翔太?おい、翔太?気が付いたか?」
「翔太君?」
「お兄ちゃん・・・・・」


「ん・・・・・・・んん・・・・・。」
「翔太・・・・・・。」




目は開けないのだが、痛いのか両手で頭を触る。包帯をむしるように。
気持ちが悪いのか声にならない声を上げ始めたのだが朝の騒ぎほどではなかった。
声を上げ始めた時点で父は呼び出しのボタンを押したので、看護師もすぐに駆け付けたし
その看護師が先生を呼び出した。
呼吸がはやくなり痛いのか声を大きく上げ始めたのを見て
担当医はすぐさま処置室の方へ移動すると伝えたが
ふと母がその足を止めた。



「ちょっと待って・・・・ちょっと待ってください。」
「どうしました?ていうか、橋本君?」








「あ・・・・ここ・・・・・・・。」
「翔太・・・・お前・・・・・・?」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの声がする。目が覚めたの?」
「翔太君・・・・・・。」

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