森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 190

母が翔太の方を見て先生と看護師の足を止めた。




「あの・・・俺・・・・・。」
「翔太。翔太気が付いたんだね?痛いところはないか?」
「頭が痛い、俺どうして?なんで?」
「お兄ちゃんが俺って言ってる・・・・ママ・・・・何かお兄ちゃんがおかしい。」
「とりあえず、気が付いたのなら診察室へ行くか。しかし頭が痛い?どういう風にとか・・・
 診察室へ移動しましょうか。ご両親も原田さんも妹さんもご一緒に。」


病室から同じ階にある処置室の隣の大きな診察室に移動していった。

「まず診察室へ、ご両親と原田さん妹さんはこちらでお待ちください。」

そうやってまずは診察室の前で待たされた。
大久保は看護師に手伝ってもらい、手術跡の手当てをした。
痛いだろうが我慢してと言いつつも先ほど気が付いたときにいたがり動いたために
包帯に出血した跡がうっすら見えていたために大久保は少し話をしながらその手当をしている。
いろんなことを聞きながら。カルテを見ながら。
AA病院から弓弦があずかってきたカルテを隅から隅まで読みながら翔太にはわかるところからと
話をしていたのだが、本人は痛みとどうして自分がここにいてこんな状況でというのが理解できないらしく
話をしているにもかかわらずそのしている話しさえも混乱していた。
その様子を見ながら話をしていたのだが、
この分だと家族とそして弓弦と話をさせても大丈夫とそう考えた。
話をさせてみなければわからない部分もあるだろうし、
記憶の欠如もどうなっているのかそのこともわからない。
わからないままでは前に進むこともできないがと診察室の前で声がかかるのを待っている家族と
原田に声をかけて診察室に入ってきてもらった。

診察室に入ると左側には担当医師のデスクがあり大久保が座っていた。
そしてその奥に看護師に付き添われベッドの上に座っている翔太がいた。
何も言葉を話さずに黙って両親を見ている。

「すみません、そこにおかけください。」
「あの・・・・先生、翔太は・・・・。」
「まず、朝から動いて出血があった分を今止血しまたしっかりと包帯を巻きましたが
 手術の跡です、麻酔が切れれば痛いのはどうしようもありませんので
 もう少し様子を見ながら局部麻酔するかもしれませんし痛み止めも投与していきます。」
「先生、そういうことではなくて・・・・・翔太は?
 目を覚ましてこちらを見ているのに言葉を出さない。」
「まだ本人も何が何だかわからない様子なのですが今私がいろいろと聞くよりも、
 ご家族ご一緒にと思いましておよびした次第です。
 まず、手術も怪我も大丈夫な範囲ですので本人が混乱して興奮しない限りは
 お話しできると・・・・・原田さんどうしましたか?」
「いえ、こっちを見ている翔太君が何となく・・・・・・・・。」



「……ん?もう話し終わった?」




「・・・翔太、お前・・・・。」
「お兄ちゃんが喋った?」
「なんか・・・・みんなどうした?弓弦さんまでびっくりした顔をして。」
「翔太、お前誰が誰だかわかるの・・・・・・か?」
「わかるって、当たり前じゃん。俺そんなに記憶力悪くないし?」
「本当に・・・・・・お母さんのことわかるの?」
「おふくろ、まだ俺が喋ってるのに疑ってるのか?
 そりゃ、全部が全部思い出したわけじゃないし話していれば思い出せると思うけど?」
「お兄ちゃんがおふくろって・・・・・・いつもの呼び方になってる。」
「百合も何言ってんだよ、兄ちゃんは兄ちゃんだろ?」



「翔太・・・・・・原田さんがわかるか?」
「え?原田さん?」
「あぁ、原田さん。」
「そりゃわかるさ。だって今までも付添いしてくれてたじゃん。」
「・・・・・・本当に?本当にあたしがわかるの?」
「当たり前じゃん(笑)・・・・・・・・・・・・・・・っつ、ちょっと頭痛いかな。」
「そう急がなくても大丈夫でしょう?ご家族であとはゆっくりとお話しされてもいいと思いますが
 病室に戻りましょうか?皆様(笑)」
「えぇ、先生、ありがとうございます。本当に・・・・ありがとうございます。」
「あまり安心しすぎてはしゃがないようにお願いしますね?」
「先生、ありがとうございます。」
「いえ、わたくしではありませんよ。事故が起きてわたくしに連絡を取った原田さんの行動力です。」
「もちろんそれはそうですが、何度も何度も先生には翔太の命をつないでもらった。
 本当にありがとうございます。何度ありがとうを言っても足りません。」
「わたくしには、最終的に命をつなぐ努力しかできません。
 でも、命がつながるのは半分はその人の運命ですから。
 橋本君には原田さんというつながりが運命だったんでしょう。いい運命をつないでおられる。
 さぁ、あとは橋本君が混乱しないように病室でお話しください。
 具合が悪くなったりしたらすぐに読んでくださいね。」
「ありがとうございます。さぁ、行こう。ほら、原田さん、あなたも。そこに突っ立ってないで。」
「さ、弓弦さん。一緒に行きましょう。
 何泣いているの、翔太は気が付いたのに何を泣く必要があるのよ。」
「えっと原田さん、あたしの腕を。お願い、お兄ちゃんは看護師さんたちが連れて行くから
 パパとママはそれについていくし、あたし原田さんの腕が一番居心地いいから。
 ね、一緒に行きましょうよ。」
「そうね、そうだね。泣いてちゃだめだよね。だって嬉しいことだもの。」

診察室を出て病室に移動する。橋本がご機嫌に笑っている。
両親も百合子も弓弦もともにうれしい笑顔のまま。
橋本が病室に入ると弓弦に声をかけた。


「原田さん、山本さんには今朝は連絡を入れましたか?」
「いえ、メールもまだ。」
「でしたら私が電話をこれから入れますから4人で話をしててくれますか?」
「あたしがかけなくていいんですか?」
「翔太のことだから私がかけるよ(笑)」
「あたしは・・・あたしも連絡を入れなければいけないところが・・・・。」
「それはそれで(笑)かぶらないようにかけましょうか(笑)」
「そうですね、んじゃあたしは達哉君に。」

翔太と母と妹で話をしている間、父とは弓弦それぞれの連絡を入れなければいけないところに
電話を入れ始めた。
窓際にいき、背中合わせで、うれしそうな呼吸を落ちつけようとしながらも、
そのう気持ちがあふれるように言葉が出ていた。

  `turururururururururu tururururururururururu turururururururururu´

「おはようございます、橋本ですが。」
「あぁ、橋本さん。山本です、おはようございます。どうかしたんですか?」
「はい、どうかしたも何も(笑)」
「翔太は気が付いたんですね?原田君からのメール待ちだと思い携帯は手に持っていたんだけど
 うれしい電話で本当に今日一日いい一日になりそうだ。」
「社長、記者会見しますか?たぶん翔太大丈夫ですよ。」
「本当ですか?そんなにも・・・・・」
「聞いて驚かないでください。翔太記憶を失くす前の話し方をしているんですよ。
 今母と百合子と話をしているのですが普通に。普通に話をするんです。」
「わたしも会いたいが面会はできるかね?」
「えぇ、大丈夫です。今日は私も休みをいただいているので夕方までおりますから。」
「んじゃ、これからその嬉しい時間のおすそ分けしてもらいにそちらへ伺うよ。」
「待っていますよ。では、また後程。」
「あぁ、あとで。」


  `turururururururururu tururururururururururu turururururururururu´



「もしもし?達哉君?今大丈夫?どこにいるの?」
「今っすか?今、うちにいます。こんな気分でしどこも行けないし。」
「みんなは?」
「今日は夜に雄ちゃんが出番があるぐらいかな。なんで?」
「んじゃ、今日はどうするの?」
「どうするのって、昨日の今日なのになんで?弓弦さんなんでご機嫌・・・・・もしかして?




 もしかして翔太?????ねぇ、弓弦さん!」
「朝ね、起きたときに暴れて大変だったんだけど今は意識取り戻して話ができるよ。
 ・・・・・・あたし・・・・・・あたし嬉しすぎて。まささんも家にいるみたい?」
「まささん車洗ってますよ、代わりますか?」
「いやいいよ。声聞くと泣きそう。話せなくなるから達哉君、一緒に病院まで来てよ。」
「わかりました、んじゃこれからまささんとそっちに向かいます。みんなにも連絡入れていい?」
「お願い、あたしこれ以上無理。泣いちゃう。ごめん達哉君お願いするわ。山本社長には
 翔太君のお父さんがかけてくれたから・・・・。」
「もう、弓弦さん泣いちゃダメでしょう?うれしいんだろうけど泣いちゃダメです。
 これから向かいます。いいですか?駐車場に車停めたら電話入れますから。」
「わかった、お願いね。」



  `turururururururururu tururururururururururu turururururururururu´


「はい。」
「誠さん?」
「あぁ、」どうしたんだこんな早くから。」
「今日はお店出勤だっけ?」
「あぁ、そうだが。なんか用事か?」
「ん、ちょっとね。ちょっとじゃないか(喜)」
「昨日の今日でご機嫌か、翔太が無事だったんだな。」
「そうだね、さっき気が付いたんだけどさ。」
「よかったな、あいつにも電話入れたのか?」
「達哉君に電話入れたら車洗ってるって。だから誠さんにって思って。」
「そっか。」
「でさ、お願いがあるんだ。」
「なんだ?」
「あんさ、まだ時間あるだろうからさ貴志と葵生と一緒に来てほしいんだけど。」
「どこだっけ(笑)」
「あたしが入院していたところよ(笑)忘れたの?」
「あっちか。でもほんとご機嫌だが翔太は?」
「翔太君気が付いているよ。今、ご家族でおしゃべりしている。
 たださ、どんなふうに記憶が戻っているのか
 ちょっと不安なんだけど、でも喋り方が不通に戻っているのよね。
 妹さんの呼び方もご両親の呼び方も。普通なのよね。」
「おかしいのか?どうなのか、それ聞いてもどうしようも答えられないんだが。」
「ん・・・・とりあえず翔太君が来たが着いたのはうれしいんだけど、現実どうなのかってことは
 翔太君を知っているたくさんの人と顔を合わせるのが一番かなって思ってさ。」
「翔太のところの社長来るんだろ?仕事関係も。」
「社長と達哉君たちとそのマネージャーたちはね。
 でも、事故で気を失い昨日の日中まで顔を合わせているし
 話もしているから、覚えているよと言ってもそんな直近の覚えているよはちょっとね。」
「で、俺にも電話をしたんだな。わかったちょっと早いが店に行ってみる。
 そん時にいた人間を連れてくりゃいいんだな?」
「とにかく貴志とできれが葵生をお願い。
 お店の開店もあるだろうから時間できたらでいいよ。今日でも明日でも。」
「わかった、でもうれしいなぁちゃんとしっかり気が付いたんだ。
 怪我は大したことないだろうし楽しみだな。」
「そうだね、お爺ちゃんにも連絡入れないと。翔太君の療養先のことで話をしてたから。」
「んじゃ、俺は先に店に行って話をしてみる。
 爺さんは朝から出かけたから事務局にかけた方がいいみたいだぞ。」
「忙しそうだね。もしかして姉さんも一緒なのかな。」
「たぶんな。」
「んじゃかけてみるよ。」
「店に行って出れれば出る時電話するから。」
「お願いねぇ。」






  `turururururu turururururur turururururururu´






「はい、どうした?もう落ち着いたか?」
「お疲れ様。今大丈夫?」
「あぁ、それよりでも大丈夫だったんだろ?
 落ち着いて電話かけてるってことは本当に大丈夫だったんだな?」
「えぇ、もちろん。気を失って搬送されているときはすごく不安だったけど大久保先生にバトンタッチして
 安心した。で?」
「で?って(笑)まささん、こっち来ないの?」
「そっちにかぁ。もしかして俺動けばマスコミ大丈夫か?」
「大丈夫でしょう?だって療養先だもん(笑)療養先がきちんと気にしないでどうするのよ(笑)」
「でもよかったな。夜中にメールが来たときには焦ったが、
 まさか入院している病院での事故だったとはな。」
「夕飯食べて帰った時はもうさ・・・・あたし意識飛んじゃったよ。どうしていいかわからないでさ。」
「まぁ、お前は何かによく巻き込まれるようになってるんだな。」
「だけどあっちの病院でも命に別状はないけど意識だけがと言われたときは不安だったけど
 あちこちに移送先を探してたと聞いたときすぐに思い出せてよかったよ。」
「それは何よりだ(笑)でも、お前パニクって余計なことしないでよかったよな。」
「まささん?」
「あはははは。でもニュースで病院のヘリ墜落を緊急で流したとき慌てたぞ。
 お前にも電話つながらねぇし。
 メールが来たけど気持ちは落ち着かなかったなぁ。」
「心配性だなぁ、まささんは(笑)でも、もう大丈夫だから。」
「わかったよ(笑)んじゃな。とりあえずまたあとで。」




  `turururururu turururururur turururururururu´


「はい、事務局吉田です。」
「すみません、原田と申しますが・・・・。」
「あぁ、弓弦さんですね?月城さんですか?それとも・・・。」
「あ、お爺ちゃんをお願いしたいんですが、忙しそうですか?」
「そうですねぇ、もう少ししたら休憩に入ると思うんですが・・・・。」
「だったら終わってゆっくりしたなってぐらいに電話かけなおします。」
「そうですか?わかりました、お電話があったことだけお伝えしておきますね。」
「よろしくお願いします。」


そう話し終わりふと振り返るとうらやましいぐらいに仲の良い4人家族。
そんな様子を見てしまった弓弦は少しさみしい思いを覚えた。

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