愚図

wonderful night.


ユーガッタシェイキンフォーミー。


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知らぬうちに増える傷は一体どうして出来上がるのか、削れていく心も同じようなものだろうか。


君の言葉の選びや話し方、私を見つめる眼。
あのひとに良く似ていると、思い込んでいるだけなのかもしれないその全てが好きで、だから捨てたくないと思って苦しい。
あのひとの捨てるに捨てられないものになりたくて、人間は馬鹿だから所有した時間が長ければ長いほど捨てられなくなる生き物だから、と期待なのか切望なのか、なんにせよあのひとの捨てるに捨てられないものになりたい、と願っている。
他人の言葉など響かない、という君が、何を言っても無駄なんでしょう、という言葉にうっかり傷付いていることに笑う。
似ているのだ、と言われて本当はちっとも似ていない私は君に捨てられるほうがよっぽど、と思うのだ。
その方がよっぽど正しい。
君がいてもいなくても変わらないみたいだ、と少なからず思えることに安堵するのは、君がいなくちゃ生きていけないなどと口走らなくて済むからだ。
むせかえるほどの藤の花の匂いと、点滅する信号機。
ぬるい夜。
立入禁止の屋上から見る花火。
あのひとがいなくちゃ、息も出来ない。

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少しだけ匂いを嗅がせて欲しい、と言って高麗山の桜の木の道を登る。
触りたい気持ちでするとろとろのキスは気持ちが良くて、だけどセックスは出来ないから、せめて君の可愛い声を聞きたくて味見だけ、と射精を促す。
気持ち良がっている君が見たくて、君から漏れる吐息に嬉しい気持ちになりながらするオーラルセックスは悪くない、と思う。
いつまでこうしていられるだろうか。
いつまでこうしてさせてくれる?
このままずっと変わらないで、傍に置かせて欲しい。
何にも変わらない、何にも怖くない。
だから何にも失わない。
失いたがる私が、どうか君を失わないで済むように。



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